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心臓病と栄養

 810日の健康ハートの日、1日遅くなりましたが、今日は心臓病と栄養のことをお話しします。

 

<はじめに・心臓病のこと>

心臓病を解剖学的な部位別によって分類すると、①弁膜疾患、②心筋疾患、③心膜疾患の3つのカテゴリーに分けることができます。心臓病というと、小型犬の加齢に関連した僧帽弁閉鎖不全症がまず浮かぶと思いますが、幼少期に発見される心奇形もあるし、心筋症や、ごくまれですが心膜疾患などもあります。

弁膜疾患の代表はキャバリアキングチャールズスパニエルにみられるような僧帽弁閉鎖不全症です。心臓は血液を全身(と肺)に送り出す仕事をしていますが、弁の閉鎖不全があると、血液の逆流により心雑音が聴取できるので初期の疑いが始まります。血液の逆流は一方通行になっている部屋を通過するときに前からバックしてくる人で混み合い、また混乱している状態です。筋肉でできている部屋ですから人数が増えると膨らみ(拡張)、常にその状態が続くと壁が強化されて厚くなり(肥大)ます。血液を要求する組織への血液供給というニーズを満たすために心臓は頑張りますが、いずれは自身の働き(代償機能)だけでは立ちゆかなくなり、症状が悪化しうっ血性心不全へと向かっていきます。

心筋疾患の代表はボクサーに代表される拡張型心筋症、猫のメインクーンに代表される肥大型心筋症です。心筋の異常により血液のポンプ機能障害が発生します。シルエットでみると心臓は普通よりも大きくなっていますが心室の収縮が弱いので、拍出される血液量(血流)は減少しています。この病気では心臓のペースメーカー(リズミカルに拍動を起こす働き)にも影響しますし、それに加えて異常なリズムも起こりますので、大切な組織では血流不足に拍車がかかります。弁膜疾患が心雑音で発見されるとしたら、心筋疾患は心拍動のリズム不整で発見される病気です。(抱っこしていたら心臓の拍動が時々欠けるのを感じるんだ、というときは心電図検査をおすすめします。)

残念ながら、弁膜疾患(CVD)も拡張型心筋症(DCM)も肥大型心筋症(HCM)も、現時点では治癒的ではなく、良好な状態で維持できるように管理していくことが治療になります。(基本的に内科管理です。)お薬を毎日欠かさず投与することや、環境整備や栄養学的なフォローです。

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弁膜疾患にかかりやすいメンバーズ。



<食べることはすごく大事>

食欲は病状の経過がいいのか悪いのかを判断するのに大切な要素です。診察では最初に体重測定をするのですが、肥満で減量を試みている動物を除いて、同じかまたは増えているときは動物が安定して良い状態にあるのだろうと大ざっぱに把握しています。(心臓病では腹水による体重増もあるので増えていれば安心ということではありません。)

どんな病気でも、十分な食事が取れなくなると身体を削って栄養をまかなう(「代謝亢進状態」「異化亢進状態」ともいいます)ことになります。大きな外傷を受けたときに急性の代謝亢進状態が起こりますが、心臓病の場合は慢性的で、がん患者さんが食べていても痩せていくのに似ているかもしれません。

心臓病が悪くなったときには食欲が低下し、栄養の吸収も悪くなり、身体が多くのエネルギーを使い込んでしまうことで筋肉や体脂肪が使われてしまいます。これは「心臓病性悪液質」と言われる状況です。このような状況を避けるため、心臓病に適した栄養を摂取させることは寿命を延ばすことに貢献できます。犬が(猫も)喜んで食事をすることは非常に大切です。

ときには手作り食をつくっていただき、食欲不振状態を乗り越えていただくようなことも起こるでしょう。長期に渡り手作り食になってしまうときは、犬や猫の栄養要求を満たす食事でなければいけないので、参考となりそうなレシピをお作りしますので、それに従って調理してください。

心臓病のときに注目して欲しい栄養素などについて個別に説明します。

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心筋疾患にかかりやすいメンバーズ。
 

<やっぱり塩分制限>

心臓病を患う患者さん(人)の塩分摂取量を減らすことは心臓病の医栄養学的な管理の中心になっています。どうしてナトリウムが好ましくないのかという理論は犬も猫も同じです。食餌中の塩分増加は、血中のナトリウム濃度を上昇させ、それに連れて血管内の水分も保持され(血液量が増え)、血圧の上昇を引き起こします。血圧が高くなると、心室から血液を送り出すために、心臓は末梢の血管抵抗に打ち勝つよう、さらに頑張らないと血流を流せません。高ナトリウム食を与え続けるのは病的状態の心臓にむち打つ形になります。逆にナトリウム制限食は心肥大を遅くさせることや軽減させることになります。

 

<多くても少なくても・カリウムとマグネシウム>

心臓病の治療に使われるお薬の多くはカリウムとマグネシウムの血中濃度を低下させます。カリウムレベルがしっかりしていないと不整脈は発生しやすく、また心筋の収縮力も低下します。カリウムもマグネシウムも低すぎるのは酸素や栄養素を必要とする器官への血液供給を減少させてしまいますので好ましくありません。

一方、カリウムを過剰に高くしてしまう状況が起こることがあります。高カリウム血症も心臓のリズムと血流を乱してしまいますので要注意です。場合によってはカリウムを抑えた食事が必要になる場合があります。

定期的な血液検査で、これら電解質のチェックをすることが心臓病の犬猫にとって重要です。

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心臓病のための処方食の一例です。



<効果的なビタミン>

「うっ血性心不全」は、心臓からの血液の拍出が滞り、心臓内に血液がうっ滞してきた病態です。うっ血性心不全があると病気の進行に伴い、抗酸化物質は減少してくるのに、酸素代謝のときに発生してくる活性酸素分子(フリーラジカル)が増え、それにより心筋細胞はますます傷つく結果になります。身体のさび止めとして知られる「ビタミンCやビタミンE」は活性酸素に対し抑制的に働きます。摂取していただきたい栄養素です。

葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12も心臓病との関連があると言われているビタミンです。身体の中のメチル代謝に関与するビタミンで、それぞれが独立して違う働きをしています。メチル代謝が滞ると動脈硬化がおこりやすいのではないかという研究があります。関係ないという研究もありますが、総合ビタミン剤の形で摂取すると同時に供給が可能です。

-カルニチンは、リジンやメチオニンから体内で合成されるビタミンのような化学物質です。脂質代謝に関係するので、肥満の場合の燃焼系サプリメントとして知られていますが、心臓の筋肉細胞でのエネルギー産生にも関わっています。

 

<有効なアミノ酸>

猫の心筋症とタウリンの関係は有名ですが、犬の拡張型心筋症についてもタウリン欠乏症との関係性を疑って研究されている先生がおられます。猫ほど明らかな(タウリンを与えることが心筋症に良い働きをすること)結果は出ていませんが、このアミノ酸の供給があった方が安心です。

アルギニンは酸素と反応して一酸化窒素を生成する必須アミノ酸です。一酸化炭素は血管の平滑筋をゆるめ血圧を低下させる働きがあります。アルギニンの補給が血管機能の改善につながるのではないかという研究があります。

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活性酸素分子はからだに有害です。



<炎症を抑える・オメガ-3脂肪酸>

EPAやDHAといったオメガ-3脂肪酸は炎症を軽くするのに役立っています。魚油に多く含まれています。高齢の犬猫で関節症を発生したとき、また皮膚炎で皮膚や被毛に問題がある犬におすすめしているサプリメントですが、心臓病にも(腎臓病にも)有益です。

 

<コエンザイムQ10>

コエンザイムQ10は心臓細胞でのエネルギー生産を支援する働きをしています。そのほか、抗酸化物質としても働きます。心臓病のサプリメントとしては定番中の定番に相当するかと思います。残念なことに獣医学的なエビデンス(研究報告ではっきりと有益性があるという研究結果)は得られていません。

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病気の治療に薬と食事、定期検診が大切です。



<心臓病用療法食>

心臓病用療法食は以上のことを考慮して作られています。製品によってはサプリメントとして別に摂取して貰うと良い物質なども既に配合してあるものもあります。ドッグフードにサプリメントを加えるくらいなら、しっかり入っている療法食を使う方が経済的かもしれません。またサプリメントを与える手間もありません。

注意していただきたいのは、安定してから徐々にいつもの食事から切り替えるようにしていただくことです。診断直後、まだ十分に食欲の回復がみられないときに療法食を試していただくと犬も猫も興味を示さないので、そのまま「このフードはキライ」と判断されてしまいがちです。せっかく研究に研究を重ねて良い製品が作られているのに、調子の悪いとき1回のチャレンジで「だめだ」と判断してしまうのはもったいないです。体調の回復がみられてからトライしてください。

 

今日のお話は以上です。今回もまた話が長くなってしまいました。

なお、今月は診察が混んでいない限り、必要年齢に達している犬猫の血圧測定を無料で実施しています。(8月は心臓を大切にする月と勝手に決めたので!)まだ高血圧とは無縁だろうと思われる犬猫でも、腕にカフを巻かれ、カフ圧が高まって圧迫を受ける感覚に慣れておいて貰いたいです。

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