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てんかん発作と新しい治療

 神経系の病気、てんかんの治療に関するお話しです。ちなみに10月はてんかんについて知ってもらう月間でした。ひと月遅れですが多くの方にこんな病気があることを知ってもらえるといいかな。(ハートニュースと同じ話題です。こちらの方が内容濃いです。)

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<特発性てんかん>

突然、全身性のけいれんが発生することがあります。けいれんは大脳で強い電気信号が出されて発生する発作で、てんかんでは発作が繰り返し発生します。比較的若い年齢、1歳から5歳ころに発生することが多いのは「特発性てんかん」で、事故や外傷などの心当たりも無く発生します。脳の中の変化は全身麻酔下での画像検査や脊髄の検査で調べますが、調べてみても脳内に何か特別な変化がみられないのが特徴です。一般の臨床ではこの検査を行えないことが多いです。初めての発症年齢や発生状況などから、おそらく「特発性てんかん」でしょうと仮診断します。主に遺伝的な要因によって発生するといわれていて、ビーグルやトイプードル、ミニチュアダックスフンド、ボストンテリア、ポメラニアンなどが好発する品種です。猫にも発生はあります。

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<症候性てんかん>

「特発性てんかん」のほかに、交通事故等で急性の脳損傷があったときや、人と同じような脳血管障害が発生したとき、脳に腫瘍ができたときにも、同じような意識障害や全身性のけいれんが発生することがあります。急性期を治療で乗り越え命を救うことができても、脳にダメージがあるため、神経学的な合併症を残すことになります。これは「症候性てんかん」です。事故などの心当たりがない高齢の犬や猫ではこちらを疑うことが多いです。

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<けいれんの種類>

全身の筋肉が突っ張る「強直発作」や、全身の筋肉がガタガタし倒れて走っているように見える「間代発作」、突っ張りからガタガタに移行していく「強直間代発作」があります。(立ち木のようにぼーっとしてしまう小発作もありますが、今回のお話しには入れていません。)これらのけいれんは数秒から数分間でおさまるはずですが、実際に目の前で発作が起こっている姿をみると、それよりも長く感じられると思います。

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<治療は>

特発性てんかんの場合は、発作の頻度や重症度から、治療するのにふさわしい状況かどうかを判断して、投薬を始めて貰います。

はじめての発作のときにはすぐに来院してくださいますが、飼い主さんの心配とは裏腹に来院時にはケロッとして何事も無かったかのような様子を見せてくれる犬(や猫)もいます。

二度三度と繰り返すうちに、発作にも慣れっこになってしまわれる飼い主さんもおられます。「この前の発作がいつ頃あったのか思い出せないくらいずーっと前」ということもあるでしょう。だいたいの目安ですが、3か月で2回以上の発生があると抗てんかん薬の服薬基準に達しています。抗てんかん薬は、脳の過剰な興奮を鎮めて発作が発生するのを防ぎます。発作が起こる頻度が上がってきたらお薬を始めてください。

いきなり「重積発作」という長時間続くけいれん状態が起こったような場合は、また別の怖さがあります。飼い主さんはびっくりして病院に飛んできてくれます。来院時にもけいれん発作が続いたままだったり、一度はおさまったのにまた繰り返しの発作がみられたりすることがあります。これは緊急的な状態です。すぐに発作を止める治療(即効性に効く薬を使います)を開始します。救急処置で発作が鎮まる傾向になってきたら、状態を見ながら抗てんかん薬(ふだん処方する持続時間の長い薬)を始めます。

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<難治性てんかん>

このように抗てんかん薬による治療を継続していても、そしてそれがとても適切な量で投薬忘れもないにも関わらず、発作を十分にコントロールできずに常に発作を繰り返してしまうことがあります。約30%の犬にこれがあるとされています。この子たちは「難治性てんかん」とか「薬剤抵抗性てんかん」といわれています。それでも抗てんかん薬(+アルファの薬)で、発作の重度や長く続くことは抑えられているはずです。

 

<新たな治療法・食事療法>

これまで「てんかん」の治療は内科的に薬を飲ませて貰うことだけしかありませんでしたが、このたび食事療法も新たな手段として取り入れられるようになりました。てんかんに大変効果のある療法食が発売されたのです。欧米では数年前から使われています。

商品はピュリナ社から発売されている「PURINA PRO PLAN VETERINARY DIETS」(ピュリナ・プロプラン・ベテリナリーダイエット)シリーズの「NEUROCARE」(ニューロケア)です。

ケトン食療法は人でも取り入れられている治療法です。エネルギーを産生する三つの栄養素である炭水化物、蛋白質、脂質は、エネルギー産生栄養素のバランスが取れていることが望ましいとして、人では摂取するのに好ましい栄養素比率のおおよその目安があります。ケトン食療法ではあえてその割合を大きく崩し、炭水化物を減らして身体にブドウ糖を枯渇させます。ブドウ糖はすぐに利用できる栄養素ですが、ブドウ糖が無いときに身体は別の解糖サイクルが周り、ケトン体を産生します。脳ではブドウ糖が無いときにケトン体を代りの栄養素として利用しますが、そのときに抗てんかん作用も示すことがわかっています。今回の療法食は、脂質のエネルギー利用割合が炭水化物+蛋白質に比べて非常に高くなるように設計され、またケトン体が発生しやすいような中鎖脂肪酸(MCT)オイルやオメガ3脂肪酸(DHA,EPA)を添加して作られたものです。

てんかんのお薬を減らすことはできませんが、発作の抑制に効果があり、これからの犬のてんかん治療に期待が持てそうです。(すでに欧米では大ヒットになっているそうです。)

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<トピックス・新治療>

人では既にスタンダードな治療になっている脳外科治療ですが、動物の世界でも始まっています。「小動物臨床におけるてんかん外科の導入」というテーマで研究助成を受け、研究が行なわれているそうです。

簡単に手が届くような治療ではありませんが、これからの獣医学の発展に無くてはならないことです。

また海外では、医療用マリファナで知られるカンナビジオールを難治性てんかんに臨床応用した試験が始まっているそうです。使用を合法とされる国においてはこんな研究も進んでいるのですね。

 

 <おわりに>

9月のFASAVA学会は長くお休みをいただきご不自由をおかけしました。今回は神経学関係のお部屋で、世界の第一級そして日本の第一級の治療のお話しを聴いてきました。当院では、これまで特発性てんかんに対する治療は抗てんかん薬による内科療法が100%でしたが、これからはこれに療法食も加えます。(世界の専門医たちの仕事からしたらほんの小さな変化ですが、一応進歩しています。)抗けいれん薬で治療をしているわんこに、この療法食が受け入れられますように。

 

なお、糖質制限ダイエットでもこの治療食と同じようにケトン体が発生します。ケトージスは「子供の自家中毒」とか「妊婦さんのつわり」のような状態です。(嘔吐ゲロゲロ状態。)また糖尿病を放置していて発生する「糖尿病性ケトアシドーシス」は「死んじゃうよ!」と叫びたくなるほどの病態です。みなさま、くれぐれも糖質制限ダイエットはやり過ぎないように、ご自身のお体を大切にお願いします。

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ジャンル : ペット

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