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体重低下がある慢性の下痢に・2

先週の続きです。

 
<内視鏡の検査>

エコーで怪しい所見もなくここまで来たのに、それでも治らない、っていうときに、再度エコー検査です。今度は怪しい所見があるかもしれない。エコー検査は何度も繰り返し確認させていただきます。腸管の5層の構造がおかしいとか、くねくねがある(専門的にはくねくねとは言いませんが)のが怪しい所見です。(ほかにもあります。)いよいよ内視鏡の検査を受けていただかないといけません。ここまでに既にひと月くらい経過しているはずです。つまり治療を試みてはみたものの下痢は続いているのです。外部委託した詳しい血液検査や糞便検査の結果も帰ってきている頃です。総合的に判断できるようになっています。

この段階でも「麻酔をかけての検査は受けたくないよ~」って言われることがあります。犬の年齢や、他の病気のこととかあることが多いです。原因に近づけなくて残念ですが、次のステップに進みます。

 medical_virus_koutai.png

<免疫抑制剤の治療>

で、次の段階です。

原因のところでお話ししましたが、①免疫の異常が起こっているかもしれない、というところに目を付けて行なう治療がここです。これまで、②腸内細菌の異常があるかもしれない、に対しては抗菌薬や腸内細菌のサプリメントで治療にトライしていますし、③食餌中の蛋白質にアレルギーを起こしているかもしれない、に対しては低アレルゲンの処方食で試してみたので、残っているのが、ここ、免疫系に対する治療なのです。

慢性腸症の中には犬の免疫状態が亢進していることがあります。腸管は身体の中にあるといっても、内腔は外の世界で、腸の粘膜では自分の体とは異なるタンパク質を身体の中に取り入れよう(吸収)としているので、そこでアレルギー反応が出ていることが十分考えられます。皮膚が外部のアレルゲンに反応して赤いぽつぽつができていたり、黒ずんで厚くなっていたりするのと同じように、腸管内部でも赤くただれているかもしれません。それで、ステロイドのお薬を使って腸粘膜の表面で起こっているだろう炎症を抑えてやるわけです。

こうして、ステロイドの薬で治ってくれれば「免疫抑制剤反応性下痢」という病名が付きます。が、「良かった」というべきか、今後いつステロイドを減薬したり中止したりするのか、そもそもそれができるのか、とその先のことも考えると、獣医師としては簡単に喜べない病態です。

 body_saibou.png

<内視鏡検査と病理検査>

もし決心が付くのであれば、ステロイドのお薬を投薬し始める前に、内視鏡の検査を受けていただきたいと思います。特に柴犬では、これまでの試験的な治療を行なうよりももっと早い段階で「内視鏡検査と病理学的な検査」を受けていただきたいです。そのほかの犬種の場合も(猫でも)、ざわざわっとすることがあり、慢性の下痢に限らず、体重減少が続いているような場合はおすすめしています。内視鏡の検査は全身麻酔です。現在当院ではこの検査は外部の病院にお願いしています。お口の方から食道、胃、十二指腸と空腸の届くところまでの範囲を視て、それぞれの部分からサンプルを採取します。肛門の方から直腸、結腸を同じように検査しサンプル採取し、病理検査に回してもらいます。

どうして、柴犬やざわざわっと感じる犬や猫に「ぜひ、受けてもらいたい!」というのかお話しします。病理の検査では「〇〇細胞性腸炎」(〇〇の中には細胞の名前が入ります)であるとか、「腸リンパ管」がどういう状態であるのかなど、今の腸管(ついでに見えてきた食道や胃の様子なども)伝えてくれます。けれど、もっと欲しい情報はざっくりいってしまうと、「炎症」なのか、もしかして「腫瘍」じゃないのかというところなのです。もし腫瘍性だとすると、嫌がっていて検査を受けるのが遅くなった場合はそれだけ進行してしまうからです。ここからの治療を行なっても生存日数が~ということになるので、予後を考えるとできるだけ早く診断を付けて、早い段階で腫瘍のための治療を開始してあげたい、ということなのです。

 

<腫瘍性だとわかった場合>

腸管に関連した腫瘍があります。腫瘍というとお肉の塊ができることを想像するかもしれません。実際、大腸がんでは、腸の管腔(ウンチの通り道)に塊状の腫瘍ができて、排泄路を塞ぐほどになってしまいます。でも腫瘍細胞が塊を作らず、粘膜の下で広範囲に散在することもあります。これは塊になった腫瘍とは違って切除することはできません。化学療法が適応になります。プランはいくつかあります。どのプランを選択するのかは個別に異なります。

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<処方食はキライ・お薬もイヤ>

もし腫瘍でなかった場合は、ここまでの治療をわんこが受け入れてくれればいいことになります。そう。受け入れてくれればいいだけのことですが、なかなか頑固なお嬢ちゃんやお坊ちゃんがいるのが現実です。治療に手こずってしまうわんこたちです。

最初の血液検査の段階で、アルブミン(ALB)の値が低かったわんこたちは、腸管の粘膜が思いのほか障害を受けているのかもしれないし、腸リンパ管に何かトラブルがあるのかもしれません。この子たちは、食事療法を確実に守っていただき、できることならこれだけでまず治療したいです。むやみにステロイドのお薬を与えて腸管に負担をかけたくないです。

食欲が低下しているわんこや療法食に見向きもしないわんこもいるので、この子たちにはホームメイドの低脂肪食をお願いします。適当に手作り食をつくればいいのではなくて、アレルギーを起こしにくい素材を使って計算した通りの分量と調理法で低脂肪の食事を作っていただくのです。このほか、微量な栄養素が欠けないようにビタミン類とミネラル類はサプリメントで補う必要もあります。なかなか大変です。けれど治療に反応すると低かったアルブミンの値は面白いほどに上がっていきますので、頑張った甲斐も得られます。よろしくお願いします。


急性の下痢は臭いし、あちこち汚しちゃうし、または慌ててお外に連れ出さなくてはいけないし、などの理由で比較的早期に連れてきてもらえます。けれど、慢性化してくると、なんとなく、あーあ、今日もかぁ、と半分あきらめモードになったりして、来院の足も遠のき治療に意欲が湧かなくなってしまうようです。でも、こんな状態のときこそ真剣に取り組んでもらわなくてはいけないし、麻酔をかけて行なう検査も受けてもらわないといけません。どこかに隠れている慢性下痢さん、意を決して連れてきてもらってくださいね。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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