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犬のロコモティブシンドローム・関節の構造


いつまでも元気で歩けるように、

犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。冷え込みが強くなると痛みを伴う運動器の病気で犬猫の来院が増えてきます。今日は犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。

初回はロコモティブシンドロームの解説と関節の構造について。

 

<ロコモティブシンドローム?>

「ロコモティブシンドローム」という言葉をご存知でしょうか。これは日本整形外科学会によって2007年に提唱された人の方の概念です。別名「運動器症候群」で、略して「ロコモ」と呼ばれることもあります。運動器というのは、身体を動かすために関わる組織全体のことで、骨、筋肉、関節、靱帯(じんたい)、腱(けん)、神経などから構成されています。ロコモティブシンドロームは運動器の障害や衰えによって歩行困難から要介護になるリスクが高まる状態を言います。

人でロコモティブシンドロームの原因疾患というと、運動器の病気と加齢による運動器の機能不全の2系統があげられています。人のロコモの原因となる主な運動器疾患は変形性関節症、椎間板ヘルニア、骨折や骨粗鬆症、関節リウマチ、脊椎症です。専門家たちは私たちが長生きすれば、生涯に何らかのかたちの変性性関節症を患うことがあると言います。

 

<犬もロコモティブシンドローム>

犬に多いのは変形性関節症、変形性脊椎症、椎間板ヘルニアで、人と似ています。犬の変形性関節症の罹患率は高く、成犬の5頭に1頭は症状を経験しているという見解が示されています。また加齢により筋力が低下し、持久力やバランス能力が低下するのも人と同じです。犬も人と同じようにロコモティブシンドロームがあると整形の専門医たちは言っています。そしてこわいのは、犬は人よりもずっと早く老化するため、多くの場合、変形性関節症が人よりも早く進行することです。飼い主さんが愛犬に症状があることに気がつかないでいるうちに変形性関節症は管理が困難になるまで進行してしまうかもしれません。治療と管理には早期診断が不可欠です。歩けなくなってから介護するのではなく、いつまでも歩いてもらうこと、すなわち健康寿命を延ばすことが人と同様に大切なことです。まずはロコモティブシンドロームにならないようにしましょう。その一つが変形性関節症について知っていただくことです。

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人用にはいろいろなロコモ関連商品が出ていますね。
  

<関節の構造>

ここでちょっと、関節と関節軟骨の仕組みについてお話ししておきます。これがわかっている方が理解が進むと思います。

身体を支えるのは骨です。そして骨は家に例えると柱に相当します。家はテントのように曲げて収納することはできませんが、身体の方の骨は関節があるので伸ばしたり曲げたり動かすことができます。折りたたみ式の家のようです。関節は骨と骨をつなぐジョイントですが、なめらかに関節が動くための仕組みがあります。骨の末端は関節軟骨になっています。関節軟骨はなめらかで硬い骨同士が直接ぶつかり合わないようになっています。関節軟骨は骨のクッションです。それから骨と骨は筋肉の最終点の靱帯(じんたい)でぐらぐらしないように固定されています。関節は関節包(かんせつほう)という強力で丈夫な膜で袋状に包まれています。そして関節包の内側は滑膜(かつまく)で、ここからぬめっとした液体(ムチン様成分=ヒアルロン酸です)が分泌されます。これが関節液です。関節液は粘性が強い液体です。関節液は滑膜から出て、また滑膜に吸収されて常に新しいものに変わっています。

関節液はエンジンオイルに例えられることが多いです。それは潤滑の役目を担っているからです。それだけではありませんけれどね。

 

<関節軟骨の構造>

関節内の関節軟骨は、へちまをゼリーで固めたような構造、とでも言いましょうか、コラーゲン線維の網目構造のまわりに軟骨基質が詰まっている状態です。コラーゲン線維がへちまのスジで、軟骨基質がゼリーです。ゼリーというと柔らかに感じるかもしれませんが、軟骨基質は中に水分をたくさん含む高分子化合物です(プロテオグリカン複合体)。ここに軟骨細胞が点在しています。

関節軟骨(ゼリーで固まったへちま)が関節液(ぷるん、ねっとりの液体)を保持しています。衝撃を受けると関節軟骨は関節液をしみ出させるので衝撃を吸収できるようになっています。ゼリーから水分が出たり入ったりするのを想像してみてください。軟骨組織には血管や神経は通っていません。ですからほんの少しの衝撃で出血したり神経が傷ついて痛みが走るというようなことは起こりません。軟骨組織は血液ではなく、関節液から栄養をもらっています。

ゼリーに例えましたが、この軟骨基質を構成するのがあのヒアルロン酸です。グルコサミン、コンドロイチンもプロテオグリカン複合体の構成成分になります。 
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今月は犬と猫の関節症について掲示しています。
 

<関節の老化>

関節軟骨は荷重を受けると軟骨の表面が互いに密着しすれてきます。軟骨組織がすり減っても関節軟骨にある軟骨細胞が軟骨基質を作ってほんの少しですが組織修復します。

けれど老化すると、修復のスピードがすり減りのスピードに追いつきません。関節を使いすぎて痛んだときには、少し安静にして関節を休ませてあげる必要があります。その一方で、修復には軟骨細胞が元気に働く必要があります。軟骨細胞に栄養を届けるのは関節液です。そして関節液の栄養を軟骨細胞に染み渡らせるのには少しの運動が欠かせません。ある程度関節を動かしてあげないと滑膜からあたらしい関節液が分泌されないのです。骨折してギプスで固定されたあと関節を動かさなかったらうまく関節が曲げられなくなったという話を聞いたことがあるでしょう。休ませてばかりいてはいけないのです。関節を健康的に維持するためには無理のない程度で静かに動かす必要があります。

<犬の変形性関節症>

変形性関節症は、関節軟骨の変性や破壊が起こった結果、骨や軟骨に正常とは異なるトゲトゲしい構造ができて、関節を包む滑膜に炎症が生じる病気です。単純に「関節炎」と説明することも多いのですが、「関節炎」の原因は変形性関節症以外にもあります。変形性関節症は加齢によって発症してくる関節疾患の代表的なものです。

滑膜に炎症が起こると痛み物質が出てきます。徐々に炎症は重症化していきます。そして飼い主さんが異変に気づいて来院してくれるわけですが、実はX線検査に異常が認められるときには最終段階になっています。関節炎がひどくなると痛みのために動くことを嫌い、筋肉を動かさなくなるので筋肉が細く萎えてきます。また長時間同じ姿勢を取っていると関節は硬くなり固まってきてしまいます。こうして「動けない」「立てない」犬になってしまいます。

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これって年のせいじゃなかったんですね、
って気づいてください。
そして治療のために
是非来院してください。 

<かくれ関節症>

胸やお腹のレントゲン撮影をしていると背骨の骨が一緒に撮影されます。このときに偶然脊椎の異常を見つけることがあります。「ここ、痛い場所ですよ」とお知らせするのですが「特に何もおかしなことはありません」と言われることがあります。知られていない炎症が進んだ結果が「かくれ関節症」になります。

日本大学動物病院での調査報告ですが、10歳を超えた犬のX線写真を調べ直したら12歳以上の犬の45%以上に変形性関節症または変形性脊椎症が見られたそうです。大型犬では74%に、小型犬でも34%の割合で異常が発見されました。さらに変形性関節症の見られた犬のうち、何らかの関節症関連の症状に飼い主さんが気づいていた割合は約半数だけ、変形性脊椎症に関してはたったの7.6%の飼い主さんしか気づいていなかったそうです。

初期の段階でX線撮影しても「ここ!」という目立った異変が見つけられることはまれです。ですからX線での異常があるにもかかわらず知られていなかったというのは、「かくれ関節症」が多いことを物語っていると思います。

   

続きは次回に。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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