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変形性関節症・具体的な治療

「どうして関節症の治療が必要なのか」という点について繰り返します。「痛いから」これを取り除いて愛犬の生活の質を向上させるのは第一義的なことなのですが、この治療は介護する側のご家族の生活の質を悪化させないためでもあります。犬にはいつまでも自立していてもらい、介護いらずの健康寿命を延ばすことが目標です。

そして変形性関節症は飼い主さんの認識が最も重要です。「動物が関節症のために痛がっている」ことをまずわかってもらうことから始まります。

変形性関節症の治療は総合的に組み合わせたマルチモーダルな治療法が最も効果的な治療です。体重管理、生活環境の改善、運動療法は重要な治療の要となるものです。サプリメントや疼痛管理の薬は病院からの処方を与えれば良いだけですが、これだけではいけません。どれか一つ二つを治療法として選択するのではなく、すべてを実践していただくと治療がうまく進みます。

変形性関節症の総合治療、具体的な方法についてお話ししていきます。

  

<1・痛みの管理>

さて、関節に異常を示す行動を犬が示し始めたときにはすでに痛みがあります。治療の中心はまさしく、その痛みを和らげることです。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が現在の関節症による痛みのコントロールの主流になっています。投薬により痛みは徐々に引いていきます。たいていは14日の投与で明らかな鎮痛効果を実感できると思います。(14日で終了という意味ではありません。)NSAIDsには消化器系に対する副作用(嘔吐や食欲不振、下痢など)もあるため、痛みを鎮めることができる最小用量にしたり、時々休薬する日を設けたり、肝臓や腎臓のチェックのための血液検査を織り込んだりして、安全で効果のある方法を取りながら継続投与していきます。お薬がなくても十分痛みが緩和され、その他の治療でコントロールが可能になることもあります。消化管粘膜を保護する薬を同時に投与する必要がある場合もあります。「痛み止めと胃薬」の組み合わせについては私たちの方が良く経験する投薬セットですが、それと同じです。

(変形性脊椎症などの神経にも関わる疾患では発生したフリーラジカル(活性酸素)が二次的に損傷を起こさせるため、鎮痛薬のほかにビタミンB製剤を処方しています。)

症状は見られないけれども、たまたまX線検査で撮影した部分に異常な関節も一緒に映し出されていたため、関節症が発覚したというとき、どこかで痛みのサインを見逃している可能性も有り、この時も治療の開始をおすすめします。

 IMG_3049 (1)
こちらの閲覧用ファイルは
高齢犬の生活を援助する内容で過去のものですが
今回も出しておきました。
 

<2・体重管理>

栄養は犬の変形性関節症を予防し、管理するための重要な一手段です。

体重過多は関節や関節軟骨に過剰な力がかかり、変形性関節症を引き起こす原因にもなり、また悪化させる一要因にもなります。脂肪組織そのものも炎症を誘発します。体重管理は非常に重要です。過体重であれば体重を減らしましょう。このとき、やみくもに減量すれば良いわけではなく、筋肉量を減らさずに脂肪だけを落とすのがポイントです。若いときのように「動いて痩せる」ことができませんから「食事で痩せる」ことになります。処方食で空腹感なく必要な栄養素をきっちりと摂取しながらカロリー制限していきます。関節のための特別な処方食もあります。自己流を試すのではなくぜひ処方食に頼った減量法を実施してください。さらに燃焼系のサプリメントを同時に使うこともできます。

過体重ではない場合も、関節症の痛みのために不活動になると体重増加につながる可能性があります。ボディコンディションスコア(BCS)やマッスルコンディションスコア(MCS)を病院で確認し、維持できるようにすることが大切です。

太りすぎから肥満の犬と変形性関節症の関係については研究があり、同じ食事を与えられた犬の長期研究では、25%少ない量を与えられた犬は最適体重を維持していて、変形性関節症の発症リスクが低く、臨床徴候の発症も遅く、重症度も低いという結果が出ています。また別の研究では、肥満から体重減少した犬では、体重が6%以上軽減されると運動性の改善が見られることが示されています。「ふつう」から「やや細め」に該当するBCS4/95/9)が関節症のための適切な体重になります。

IMG_3048 (1)
今回作ったファイルはこちらです。
ブログと同じ内容で、もっとも詳しく
書いています。
 

<3・必須脂肪酸>

変形性関節症では関節部に炎症が起こっているため、抗炎症作用のあるサプリメントが薦められます。栄養成分としての具体的なものはオメガ3脂肪酸です。リノレイン酸に代表されるn-6脂肪酸由来のエイコサノイドは血管作用性と炎症誘発性といった作用があります。代謝されてプロスタグランジンなどの炎症を発症させる物質を産生するのです。一方リノール酸に代表されるオメガ3脂肪酸の代謝では組織の炎症は解消されます。

オメガ3脂肪酸と関節疾患の関係は、実験的に作られた関節障害も含めて多数ありますが、報告された研究はどれも効果があり有益という結果です。

腎泌尿器と栄養学の博士であるDr.バージェスはこのサプリメントが「しばしば過少投与されている」と言っています。体重1kgあたりEPADHAの合計は最大175mgが推奨用量で、最初から高用量で与えると下痢をすることがあるため、60~90mgからスタートし徐々に増量するのが好ましいとのことです。

市販されているものは多数あり、一目で良質なものであるかどうかを判断するのは困難です。信頼できるサプリメントをご紹介しています。

IMG_3024 (1)
要点をまとめた掲示板です。 

<4・軟骨構成成分>

関節症の時に使うサプリメントとしては、軟骨保護作用の得られるものもおすすめです。軟骨の損傷はあっても、まだ線維軟骨が発達する前段階であるものであればことに有用です。軟骨関節とヒアルロン酸の合成にプラスの効果があります。また、変形性関節症にかかりやすい犬に予防的に使用した場合も有益な効果が得られています。よく知られているのはグルコサミンとコンドロイチン硫酸です。どちらも栄養補助食品の位置づけです。多硫酸化グルコサミノグリカンは米国食品医薬品局(FDA)の承認もある薬剤です。グリコサミノグリカンは関節軟骨の主要成分で、グルコサミンはその前駆体(代謝されてグリコサミノグリカンになる)です。グルコサミンの補充は軟骨の再構築に役立つ可能性があります。残念ながらこれらの成分と関節症に関する研究では、臨床的な有益性の証拠は弱いという結論が出ています。人の整形外科学会の関節炎の診療ガイドラインでもこれら2つの軟骨保護目的使用は推奨されていません。ただし、症状の緩和目的としての使用には一定の理解が得られているそうです。

近年、緑イ貝はグリコサミノグリカンの豊富な供給源として注目の食品です。関節軟骨の補修効果というよりは抗炎症効果によるものと考えられています。臨床的な改善に対する決定的な関係が報告されているわけではありません。

カルトロフェンベットは注射タイプのポリ硫酸化グリコサミノグリカン製剤です。関節の滑液のレベルをあげて、軟骨がすり減らないようにして、関節軟骨を健康に保つのに役立ちます。高齢犬と、変形性関節症の初期段階で来院した場合に最も有効です。軟骨は失われると再生されないため、永久に失われたままになってしまいます。失われる前に補う治療法です。この注射は関節の手術を受けた犬にも有効です。1週間間隔で4回、その後半年に1回の割合で注射していきます。

 

    
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