犬の飼い主への攻撃性・1

先日、犬の問題行動と訓練士さんの関係についてお問い合わせがあったので、気になったことをとどめておこうかと思います。

訓練士さんを頼って行かれるのは、問題行動でも、攻撃性、それも家族に対する攻撃性が見られたときに多いようです。

 

問題行動と一口に言いますが、例えば猫では「好ましくないところへ排尿行動(スプレー行為)をすること(不適切な排泄)」であったり、犬では「家族が留守宅に戻ると家がめちゃめちゃになっていること(分離不安症)」や「音や雷などを異常にこわがること(恐怖症)」などがあります。我々動物病院にご相談にこられるのはそういったケースがほとんどです。また「布製異物」を食べておなかを詰まらせてから初めて、この犬に「ウールサッキング」とか「ブランケットサッキング」(強迫神経症のひとつです)があったとわかるケースもありますし、皮膚病だと思って来院され、「心因性舐性皮膚炎」(これも強迫神経症のひとつです)がわかることもあります。

 

さて、話を元に戻しましょう。

 

家族に対する攻撃性の問題です。服従訓練をやり直せば大丈夫、と思われている飼い主さんは多いようです。家族は犬に触れることさえも怖くなっていますから、すべてを訓練士さんに「おまかせ」してしまいます。しかし、問題は解決しません。なぜなら、訓練士さんと犬との関係がこじれているのではなく、飼い主さんとの関係がこじれてしまっているからです。訓練所で指導を受けている間は「問題なく過ごした犬」も家族の元に帰るとまた元通りです。そして、不幸にも、お互いの疎通が取れなくなり、飼育できなくなることがあるのです。とても悲しいことです。当院では2年に1例くらい、このような犬を安楽死するよう、家族から要望が出ます。

 

一昔前までは「犬の性格が悪い」(氏の問題)とか「しつけ方が悪かった」(育ちの問題)とかで済まされてきたことです。けれどいろいろな研究により、これが犬に発生している「こころの病気」であることが分かってきています。こころ=心臓、というニュアンスでとらえられがちですが、あえて「精神」という言葉を用いたくはないので「こころ」としておきます。

 

攻撃性は「家族」に対するものと「同居犬」に対するものとがあります。ここでおはなししたいのは、この「家族に向けられた攻撃性」です。

「家族」に向けられた攻撃性は深刻です。何度も外科病院へ通われ、皮膚裂傷のたび、縫合処置を受けておられる飼い主さんもおられます。それでも犬が大好きで、どうしようもないのです。生活の中のきっと98%くらいの時間で、これらの犬はとても「いいこ」です。ですから、飼い主さんはこの犬を必要としています。けれど、ほんのちょっとしたことが起こったとき、犬は急変するのです。それは触れられたくないときにからだのどこかを触れられた、とか、自分の持ち物(と彼が思っているもの、食器やおもちゃ、敷物など)を勝手に触られた、とか、気持ちよく寝ていたところを起こされた、とか、そんなとても些細なことです。そして驚く速さで(顔に向けられることが多いかもしれません)攻撃をしてくるので、飼い主さんは「何が起こったのかわからない」状況になります。気がつくと痛みが走り、血が流れ出ているような感じです。そしてその後の犬は、顔面に悲しみをたたえ、申し訳なさそうな「ごめんね」の表情をとるのです。

 

このような愛しい犬をどう扱ったらよいのか分からない、というのが本音だと思います。

 

動物の問題行動に対する治療は、訓練士さんによる「再訓練」ではうまくいきません。ご家族が主体になって行う「行動療法」が大切です。そして、それを無理なく成功させるために、獣医学的介入は必要です。

 

「去勢手術」などの外科的介入や「抗精神薬」に分類される薬による内科的介入です。もちろん、そういった行動を起こすにいたる他の病気の除外は真っ先に行われます。

 

もし、あなたが、あなたの愛犬から「攻撃性行動」をとられていて、「飼い犬に手を噛まれる」なんていう状況に苦しんでいたら、これは動物病院を受診すべきであることをお伝えしておきます。そして、獣医師としっかり話し合い、問題解決の糸口がうまく見つからないようでしたら、「行動療法の専門医への紹介」をお願いしてみてください。最愛の飼い犬との関係を、悲しい思い出にしてはいけません。

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