家族に向けられた攻撃性行動・5

飼い主に向けられた攻撃行動・その5回目

そのほかの獣医学的治療法について

 

1、薬物学的治療

ランクの上にある犬ではセロトニン濃度が高く、不安や恐怖を感じない安定した様子が見られたのに対し、同じ上位の犬でも優位性行動を取る犬ではセロトニン濃度が低かった、という研究報告があります。彼らに共通するのは、こころを穏やかにする物質であるセロトニンを上昇させる必要があるということになります。

 

ここで「脳内物質」について少々お話しておきましょう。

脳の中で「感情」を左右する物質があります。アセチルコリン(ドーパミン)と呼ばれる物質は喜びや快楽をもたらすもので、自分で調節する機能はありませんが、学習した記憶によって高まるものです。こういうことをしたら、こんないい結果が待っていた、というようなモチベーションをあげるようなことに関わります。ノルアドレナリン(エピネフリン)と呼ばれる物質は、恐怖や不安、緊張状態をもたらすものです。からだの内外の環境から突発的で不快な刺激を監視する役目を担っています。オートリセプターがあるため、たくさん出ても、やがて消えて少なくなります。いつまでも過緊張が続かないような仕組みになっているわけです。そして三つ目、セロトニン(5HT)と呼ばれるこの物質は、「ほっとする」「おちつく」「よく眠れる」などの作用をもたらします。

 

セロトニンの作用って素敵ですよね。イライラがなくなって穏やかに過ごせそうです。そこで、この作用が強まるお薬を利用することになります。

 

Clomipramine(クロミプラミン)はセロトミンが脳の神経細胞に吸収されるのを防いで、脳内の血中濃度を上昇させるお薬です。このお薬を使うことで、前回までお話してきた行動療法をよりスムーズに成功に導くことができます。(このほかにも似たお薬は数種類あります。)

 

そんなにいいお薬があるのなら、もっと最初に紹介してくれたら良かったのに、と思われるかも知れません。しかし、あくまでもこのお薬は補助的立場にあり、主役は行動療法です。お薬だけ与えても問題は解決しません。犬の、飼い主に対する攻撃性の治療は、そんなに甘くはないのです。ご理解ください。

 

2、外科的治療法

もうひとつ、実行する価値のある治療法として、雄の去勢手術があります。

去勢手術をすると「支配欲」「テリトリー意識」「攻撃性」などが低下してきます。そしてそうすることで二次的にしつけしやすくなります。これは行動療法も実施しやすくなります。

飼い主さんが直接手を下す必要もないものですから、これは受けてみる価値は充分あると思います。

 

ただし、すでに攻撃性を備えている雌犬に対しての避妊手術の実施はおすすめではありません。余計に攻撃性を増す結果になることもあるからです。

 

さて、こうした治療を継続し、どこまで効果が得られるのでしょうか。非常に気になるところだと思います。予後については次回お話することにします。







スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード