慢性腎臓病。その2

 慢性腎臓病について、2かいめのお話になります。

今回はぐっと基本的なこと。腎臓の機能についてお話します。今日のお話は少し長いです。

 

はじめに。

ここは読むのを飛ばしてもらってもかまいません。腎機能に関しては、この後から書き始めます。

腎臓の働きというと「毒素の排泄」、腎臓の働きが悪いというと「毒が貯まっている」というふうに言われています。なんだか腎臓病の動物が毒の塊のような言われ方です。この、よく使われてはいる「毒」という言葉、私は好きではありません。「体内でたんぱく質が代謝された後に残る物質」。これでいいのではないかと思うのです。長すぎますかね?「たんぱく質が代謝された後に残る物質」では。(笑)

私たちはお肉を食べます。豚とか牛とか鶏とか。それぞれのたんぱく質はそれぞれの動物特有のものですが、腸管を通過する間に分解されて、肝臓のなかで代謝されるので、豚にも牛にも鶏にもならず、私たち固有のたんぱく質に作り替えられます。オルニチン回路、というのを聞いたことがあるでしょうか。ここをぐーるぐーる回って、アンモニア(これは有毒です)は尿素(毒素は低いのです)に変わり、これが腎臓から排泄されます。(そう。肝臓で、すでに低毒化されているんですよ。だから「毒」っていうのはやめてー、って思うのです。)

BUNという腎機能の指標となる検査項目があります。これは血中の尿素窒素です。尿素が配合されているクリームはご存知でしょうか。保湿効果が高く、冬季に出回るハンドクリームには必ずと言っていいほど入っています。尿素が毒性物質だったら、わざわざ手に塗ることはしませんよね。

そんなわけで「腎臓が悪いからと言って毒の塊なんだ、なんて思わないでください。ちなみに、窒素代謝にはこのほかにもあります。クレアチンを作り出す化学反応系で、これには肝臓、腎臓、筋肉組織がかかわっています。もっとありますが、化学的なので省略します。



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腎臓の機能は?

腎臓の機能を箇条書きにします。

①窒素代謝物を排泄すること。尿素などをおしっこから排泄しています。血液中のいろいろな物質は糸球体を通じ、ろ過されます。(身体に必要なものは尿細管からまた再吸収されます。)

②身体にちょうどいい水分バランスをとること。水の量が多すぎればおしっこを薄くしておしっこの量を増やすし、身体の水分量が少ないときはおしっこを濃くして、水が出ていくのを防ぎます。水の出し入れの調節です。暑い屋外からよく冷えた屋内に入ると、急におしっこが近くなります。これも腎臓の働きです。汗からの水分喪失が少なくなると、腎臓からのルートに流れることになります。

③電解質のイオンバランスをとること。ナトリウム、リン、カリウム、カルシウム、塩化物イオン、リン酸イオン、重炭酸イオンなどの濃度を一定に保つ働きをしています。これらの電解質によって神経の伝達や筋肉の収縮が行われます。また細胞レベルの水和も電解質濃度が関わっています。体の中の酸とアルカリのバランスをとっています。

④血圧の調整をすること。腎臓はレニンという酵素をつくっています。このレニンは血中のたんぱく質と反応して強力な血管収縮作用をもつアンギオテンシンⅡになり、血圧を上昇させます。このしくみは「レニン・アンギオテンシン系」と呼ばれていて、高血圧のお薬にも応用されているシステムです。

⑤赤血球をつくること。腎臓はエリスロポエチンという造血ホルモンを分泌しています。骨髄に働きかけ、赤血球が増えるように作用させます。

⑥骨を丈夫にする活性化ビタミンDをつくること。骨にカルシウムを沈着させると骨が強くなります。そのために必要なビタミンDを活性化ビタミンD3に変える働きを持っています。



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どんな障害がでる?

上記6つの機能の低下はこのような症状に反映されます。

①窒素代謝物が体内にたまると「だるく」なります。「悪気」や「嘔吐」のもとにもなります。ひとでは「頭痛」も言われています。(犬や猫の「気持ちが悪そう」な仕草はわかっても「頭痛」を分かってあげられないのは悲しいことですね。)「かゆみ」がでることもあります。

②水分の排泄がうまくいかないと「むくみ」がでます。動物ではむしろ水分喪失による「脱水」のほうが多いように思います。

③電解質バランスが崩れると、身体が酸性に傾きます。「吐き気」「嘔吐」「食欲不振」になります。

④レニンの分泌がさかんになると血圧が上昇します。

⑤エリスロポエチン分泌量が低下すると貧血になります。舌の色やあっかんべーをしたときの目の結膜の色、歯茎の色が薄いピンク色になります。健康的な赤い色ではなく桜色です。

⑥骨がもろくなります。活性化ビタミンD3は腸からのカルシウムの吸収を促進しますが、これがないと血中のカルシウム値が下がるため、骨からカルシウムを溶かして出そうという動きが起こるからです。

 
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検査にはどのように反映される?

上記6つの項目を検査で追うことができます。

①血液検査で、BUN(血中尿素窒素)とCRE(クレアチニン)が上昇します。

②身体一般検査や体重の推移から脱水しているのかむくんでいるのか判断することができます。

③血液検査で一部の電解質の数値を出すことができます。体の中の酸と塩基のバランスがうまく取れているかどうかを測るのは特殊な検査によります。

④血圧測定検査で高い値が出ます。

⑤血球検査で赤血球やヘモグロビン、血球容積あたりが低値になります。貧血の検査は容易に分かるものです。

⑥X線検査で骨がしっかりしているかどうかわかります。(毎回検査するものではありません。またこれを指標とするものでもありません)

☆クリアランス検査は動物ではあまり行われません。

 

というところで、今回はここまでにします。腎臓って思っていた以上にたくさんの仕事をしているのがお分かりいただけましたでしょうか。

次回は治療についてお話します。

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