慢性下痢症・その3・寄生虫性下痢

「慢性下痢」についてのお話。3回目です。

下痢になったらまず検便。これは鉄則です。直腸内にある糞便を採取して新鮮なもので検査。これが一番です。もちろん、おうちで排便したものを持ってきてくださると、それもまた、有益な検査材料になりますので、喜んで頂戴いたします。

 

さて、この糞便検査を通して私たちは何をしようとしているのか。それは第一には「寄生虫」の根拠を探すことです。「虫の卵」や「虫本体」、「虫のかけら」、「虫の成長途中の別の体」を探しています。もちろんそれだけではなくて、細菌、食物残渣、消化具合等も観察しています。

 

今日は「寄生虫性下痢」のことをお話しましょう。

よく知られている寄生虫は「回虫」や「鈎虫」「鞭虫」などの線虫類と、「うりざね条虫」「マンソン裂頭条虫」などの条虫類、それから「つぼ型吸虫」です。「うりざね」とは瓜(うり)の実、のことを言っています。形がにているのです。

 

回虫はお母さんから貰って生まれてきます。これは回虫が胎盤感染や経乳感染するためです。幼少時に駆虫薬の投与をしますので、ペットショップを介して購入犬猫では見ることもなくなってきました。飼い主さんはにとっては、もはや「回虫」は寄生虫博士・藤田先生の本の中にしか生息しない虫のように思われるかもしれません。

 

「鈎虫」も減ってきました。フィラリアの予防薬は線虫類にも効きますので、これらの虫もついでに駆虫されるわけです。

 

「鞭虫」はまだ、ごくまれに発見されます。これはこの虫が盲腸にいて駆虫が難しいことと関連があるのかもしれません。この虫に魅入られた犬は繰り返し感染しています。

 

「うりざね条虫」は以前にもご紹介しました。ノミが媒介する寄生虫です。ノミ駆除も同時に行わなければ意味がありません。

「マンソン裂頭条虫」と「つぼ型吸虫」はヘビやトカゲなどを中間宿主とする寄生虫です。お外遊びのさかんな猫さんにみられる寄生虫です。もしくは春の生まれで、夏までを外で自由猫として過ごし、寒くなってきた秋ごろに「おうちに入れてもらおうかな」とふらふらと居候を決めるちゃっかり猫さんで発見されます。


DSC02880.jpg 

 

近年問題になっているのは「ジアルジア」と「クリプトスポリジウム」で、これらとは少し仲間を異にする非常に小さな原虫です。以前は「コクシジウム」が問題になっていたこともありました。「アイメリア」「イソスポーラ」などの名称で呼ばれたかも知れません。

この原虫は、特に若い犬猫に認められます。ずっと下痢が続いていることもあれば、良くなったかと思うと再び下痢になる、という繰り返しを起こす場合もあります。糞便検査でいつでも発見できるものでもなく、数回検査を行わないと検出されないことがあります。環境が変わった、とか何かのストレスが加わった、という事象があって、虫の排泄が活発化するのかもしれません。

この虫で気をつけなければいけないのは、同居の犬猫にも同時に感染させてしまうことがある、ということです。一生懸命治療しているのに治らないことの原因は、感染させてしまった同居動物からの再感染があります。また、下痢で汚してしまったお尻周りの毛に虫がついていて、そのために新たに感染してしまうことがあります。

複数頭の動物を飼っている場合は、ついでに同居動物みんなの検査を実施し、並行して治療を行うとか、治療の最後には身体をしっかりシャンプーするなどの細かな配慮が必要です。

なお、この虫は「ヒトへの感染」もあると言われています。いつもお願いしていることではありますが、動物を扱う場合は衛生的にお願いします。

 

DSC02457.jpg 


ズーノーシスのことがさかんに言われるようになってそれなりに経過しましたが、まだまだ定期駆虫は現実的になっていません。フィラリア投薬期間中、4月から12月の間は、ノミダニ予防の滴下剤も含めて投与していただくとして、冬の期間にも1~2回、寄生虫の駆除薬を投与すると安心かもしれません。

また私たちの身体を守る意味からも、動物を触ったら手を洗うことを習慣にして、食べ物を口移しはもちろんのこと、マイ箸で与えることの無いようにしてください。

 

本日のお話はここまで。続きは来週です。

 

  
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No title

保護団体から譲り受けた生後3か月ほどの茶トラ2匹が
下痢とおう吐を繰り返すので、特にひどい子の方を
病院で見てもらったら
クリプトスポリジウムが見つかりました。
今後、どうしたらいいでしょうか?
治りますか?
気を付ける事を教えて下さい。

No title

名前を書き忘れました。
鈴木です。

Re: No title

鈴木さま

この寄生虫は「原虫」の仲間で、一般の線虫類が腸管の中(食物の通り道)に寄生しているのに対し、腸管粘膜の細胞にシストと呼ばれる袋を作りその中で増殖します(袋が破れるとき細胞もいたむので出血しますし、腸炎がひどいのです)この袋を形成している段階だと検査をしても虫を検出することが出来ないので、「虫を駆除できた」としてしまうことがありますが、再び袋が破れるときにまた症状が出ることになります。完全な駆虫のためには比較的長く投薬をする必要があります。
それと、糞便の中にオーシストが排泄されますから、再感染しないよう、猫さんが踏みつけてしまう前に便を片付けてください。
同居していた2匹ですから、たぶん2頭とも感染をしていると考えられます。お互いを身づくろいし、肛門付近をグルーミングしてしまうとそれも相互再感染の原因になります。下痢のときには肛門周りが汚れると思います。頻繁にお尻まわりを観察し、清拭し、きれいにするようお願いします。もしただれて赤くなっているようでしたら外用薬など処方してもらってください。
猫エイズなどのウィルス感染がなく、免疫力がある猫さんたちでしたら、きっちり薬を飲ませていくと治ります。この子たちに合ったフードで元気よく食事が食べられ、成長していかれるといいですね。
おだいじに。

No title

わかりやすい丁寧な回答、ありがとうございました。
安心しました。<m(__)m>
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ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
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