慢性下痢症・その6・食事反応性下痢

 慢性下痢症のお話。6回目です。

「食事反応性下痢」Food Responsive diarrhea(FRD)についてお話しましょう。

 

身体検査やラボラトリー検査、画像検査を通じて、どうもこれといった決定的な診断がつかないような場合、「まず、食事を変更してみましょうか」ということになります。そう。以前お話しました「試験的治療」です。

まぁ、このあたりのことは、オーナーさんたちも心得ていて「なんとなく、食事が合わないのかな」などと感じていたりするものですが、私たちもまずは食事の変更をお薦めしています。

しかし、ただ別のメーカーの別の商品に変えるのではなく、かといって「消化性にすぐれた」等の特性を持つ「胃腸炎用処方食」でもなく、「低アレルギー性特別療法食」です。

ことに消化器症状だけでなく皮膚症状も現われている動物(皮膚症状だけの場合でも)では、この試験的治療を受けると良いと思います。

 

実践的、具体的なお話です。

 

一般的に用いられるのは「低アレルギー性特別療法食」です。ひとくちに「低アレルギー性」といいましても、アレルギー抑制レベルにより、3段階に分けられます。

最もローレベルな処方食は「新奇タンパク食」といわれるもので、アレルギーを起こしやすいタンパク原を未経験のもの(新奇)にしてあります。Hill’sd/dシリーズやロイヤルカナンのセレクトプロテインシリーズがこれに相当します。

ミドルクラスのものは「加水分解タンパク食」といわれるもので、分子量の高いタンパク質をすこし砕いて小さくしてあるものです。フードの段階でタンパク質が既に少しだけ消化されている、と考えていただくとよいかもしれません。Hill’sz/dシリーズやロイヤルカナンの低分子プロテインがこれに相当します。

ハイレベルな処方食は「アミノ酸食」です。ここではタンパク質をその構成単位であるアミノ酸にまで分解してあります。ロイヤルカナンのアミノペプチドフォーミュラがこれに相当します。

 

特別療法食を試す場合には、これを食事だ、と思わないで「大事な治療の一環である」と考えてください。ですから「おやつ」もいつも通り与えたいし、「晩酌のお供」もさせたいし、というやわな心積もりは一切我慢してください。この食事だけにしなければ効果があるのか無いのか、判断するのが難しくなります。

実際に、その子に適した食事だけを与えていくと、たいていは2週間くらいで下痢がおさまります。なかにはあまり変化が無い、という残念な結果になることもあります。このような場合はまた別の低アレルギー食に変更して様子を見ることになります。

 こうして食事を変更して治ったのなら、「食事反応性下痢」です。慢性下痢症を持つ犬猫のなんと50%以上は食事の変更に反応するといわれています。


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「食事反応性下痢」には「食物過敏症」と「食物不耐症」のパターンがあるわけですが、臨床症状は同じですし、どちらが原因となっているのかも分かりません。ひっくるめて「食物有害反応」という呼び方をすることもあります。

食物の分解産物やこの食物を消化することで起こった腸内細菌叢の細菌の変化などがGALTの活動を引き起こしているのかも知れません。

 

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ここで、「食物有害反応」の下痢以外の症状についてお話しておきます。

 

胃腸症状を示す場合、「慢性下痢」のほかには「おなかのごろごろする音が増えている」ということもあげられています。「嘔吐」はそんなに多くないと思います。

 

むしろ多いのは皮膚症状です。「痒いこと」は多くの子に見られる最も多い症状です。「赤いぽつぽつ」がある段階は早く見つかった方で、かきむしったために出来た「引っかき傷」が出来ているので分かった、という場合も多いです。慢性的に「赤い」「フケが出る」「皮膚の色が黒ずんでいる」「毛が抜けて地肌が見えている」「外耳炎がある」(繰り返されている)「膿皮症がある」(繰り返されている)などは良く見られる傾向です。まさか、これが下痢と関係するとは思われていない方もありますでしょうし、また、こうした症状が前からずっと続いている場合はこれが普通、と考えられているため、意識に上っていないこともあります。

 

猫の皮膚症状は特徴的です。「首から頭にかけてのカイカイ」「掻き壊して赤くずるむけている皮膚」「かさぶた」は大変よく遭遇する所見です。ほかには体部の局所性または全身性の「かさかさしたフケ」、耳介や鼻の頭から額にかけての「赤みのあるつぶつぶ状の丘疹」、左右対称性の「脱毛、うす毛」、太ももや腹にできた「皮膚の赤むくれ」、なかなか治らない「外耳炎」などです。猫は犬に比べ、「掻く」「舐める」が激しいので、「慢性下痢」よりはこうした皮膚科症状による来院の方が多いように感じます。

 

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少し長くなりましたね。まとめです。

「慢性下痢」で、検査をしても特に引っかかるところが無ければ「食事変更」という治療を試してみることになります。これで反応し、治れば「食事反応性下痢」というカテゴリーに入ります。ただし、この治療中は、特別療法食以外の食べ物を与えないでください。治療の意味がなくなります。また1種類の処方食に直ぐに反応するとは限りません。1つに付き最低2週間は与え様子を見ます。少なくとも6週間は続けなければ分かりません。根気が要ることですが、おそらくそれ以上長い期間下痢が続いてきていると思いますので、ここはしっかり治療プランに参加、ご協力をお願いします。

 

さて。今日はこのへんでおしまいです。

 

 

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