慢性下痢症・その7・抗生物質反応性下痢

 慢性下痢症のお話。7回目です。

「抗生物質反応性下痢」のことをお話しましょう。

近年になって言われ始めた病気ですが、「抗生物質反応性下痢」というのがあります。Antibiotic responsive diarrhea(ARD)ともいわれます。ちょっと前までは小腸細菌異常増殖(Small intesutinal bacterial overgrowth:SIBO)という言葉で表されていたものです。しかし、細菌数の問題ではなく、GALTシステム異常や、粘膜反応異常、腸内細菌叢の質的変化、腸内毒素などに関連して発症している可能性が高くなってきたために、呼び名が変わりました。

この病気は比較的若いジャーマンシェパードでみられるものですが、この犬種は消化管粘膜から分泌されるIgAの生成に障害がある可能性が知られるようになりました。さらに若年齢で「抗生物質反応性下痢」に罹患したジャーマンシェパードがのちに「炎症性腸疾患」を発症することも多いことがわかってきました。
 


DSC00601.jpg  

「抗生物質反応性下痢」の原因は某Aという抗生物質が作用する細菌があるからといって、その細菌が原因菌であるという単純な問題ではありません。


しかし真に細菌が悪さをしている「細菌性腸炎」もあります。注目されているのは次の4種類です。

Clostridium perfringens(クロストリジューム・パーフリンゲンス)という芽胞菌が悪さをしていることがあります。この菌は下痢をしていない犬にもありますが、大量の菌が見つかった場合、この菌によって大腸炎を起こしている可能性があります。エンテロトキシンという毒素は病原性を持ちます。エンテロトキシンを出しているのかどうかの検査は日本では出来ません。

 

Clostridium difficile(クロストリジューム・ディフィシール)はヒトにおいて食中毒菌として問題にされています。同じ仲間の菌です。

 

Campylobacter(キャンピロバクター)とHelicobacter(ヘリコバクター)はらせん菌です。ピロリ菌で有名です。こちらも下痢の原因菌になります。

 

Salmonella(サルモネラ)も下痢を起こす菌です。こちらは有名ですね。


DSC00402.jpg 

 

顕微鏡でこうした菌が大量に見つかった場合は「抗生物質反応性下痢」かもしれないぞ、ということで抗生物質の服用を試してみます。あまり手がかりにならないような検査結果がでることもあります。とにかく2週間ほど服用を続けます。このくらい連続して飲んでいただきませんとしっかり悪い菌をたたくことが出来ませんし、この病気を疑った場合、薬の反応を見るにもこのくらいの期間は必要です。

けれど、2週間、あるいはそれ以上継続してきちんと投与したのに、薬の服用をやめると再び下痢になってしまうようなことがあります。これこそが典型的な「抗生物質反応性下痢」です。この様な場合は、しばらく投薬を続けることになります。薬の量を減らして、ぎりぎり維持できるな、というような用量に持っていくこともあります。

 

ちなみに使用する抗生物質はいくつかの候補があり、食事のときと同じように、Aでは効かなかったのでBにしてみる、Cに変えてみる、というように試験的治療は続きます。長期のおつきあいになります。投薬期間中は便の様子もしっかり観察していただき、変化の具合など記録し教えていただけると大変助かります。

 

それにしても、「食事変更で治ったな」だから「食事反応性下痢症」ですよ。今度は「抗生物質で様子をみてみようかな」と処方して治ったから「抗生物質反応性下痢」という診断名をつけましたよ。というようなかんじではありますね。

 

試験的な治療、食事の次は抗生物質なのです。もちろん状態によってはこの2つの治療を同時に行うこともあります。

 

今日のお話はここまでです。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード