慢性下痢症・その8・ステロイド反応性下痢

 慢性下痢症のお話。8回目です。

なかなかのロングランです。
今回は「ステロイド反応性下痢」Steroid Responsive diarrhea(SRD)についてお話します。今日はちょっと内容が多いです。

 

 「ステロイド反応性下痢」ですって?えっ!食事で駄目で、抗生物質で駄目で、今度はステロイド投与で治ったから「ステロイド反応性下痢」とかいう内容ですか?まるで「サラダ記念日」みたいですけど。ホントですか?

 

そうですね。実は、その冗談みたいなこと、そのものです。

 

試験的治療をどこまで実施し、内視鏡検査に入るか、というところでもありますが、「寄生虫の駆虫薬も投与してみた」「食事も変更してみた」「抗生物質の投与も行った」それでもやっぱり「下痢」が続く。もしくは良くなったり悪くなったりを繰り返している。そのような場合、本来的には内視鏡検査に進むのが良いと思います。


DSC00211.jpg 

 

ある指標があります。「炎症性腸疾患」の臨床スコアです。次の症状の有無、レベルから0~3の点数をつけ総合点数で評価していくものです。これはご家庭でも判断できるかと思います。

 

1)活動性 :変わりなしを0とし、低下のレベルから1~3

2)食欲  :変わりなしを0とし、低下のレベルから1~3

3)嘔吐  :無し0、週1回程度1、週2~3回2、週に3回以上3

4)便の質 :正常0、やや軟質1、血液・粘液が混じ非常に軟質2、水っぽい3

5)排便頻度:正常0、1日に2~3回1、1日に4~5回2、1日に5回以上3

6)体重減少:なし0、5%未満1、5~10%2、10%以上3

 

この累積から評価しますが、

0~3:臨床的に問題ではない。

4~5:軽度の炎症性腸疾患

6~8:中等度の炎症性腸疾患

8以上:重度の炎症性腸疾患   

ということになります。

 
DSC09500.jpg

 

もし軽度であり、麻酔をかけての検査を希望されないのであれば、先にステロイドによる治療に入っても仕方が無いかな、という気もします。

 

治療は、ステロイド剤、主としてプレドニゾロンを使用しますが、これで反応すれば「ステロイド反応性下痢症」Steroid Responsive diarrhea(SRD)です。



 

さて、内視鏡検査で腸粘膜を採取し病理検査に回すと、たいていの場合、

【「リンパ球」や「形質細胞」が多数見られます】、

という結果が返ってきます。「好酸球」「好中球」「マクロファージ」といった細胞のこともあります。これらの炎症細胞の出現が確認されれば「炎症性腸疾患」IBD (Idiopathic onflammatory bowel disease)になります。この「ステロイド反応性下痢症」を「炎症性腸疾患」とする消化器専門医もいます。

 

ただこれを確認するために病理検査をするのか、とは思わないでください。

以前IBDはその炎症の程度が重要だと思われていたのですが、今は違います。どのような炎症があるのか、すなわち炎症のタイプが重要だといわれています。また、どこに変化があるのか、つまり、粘膜表層だけのものなのかそれともその下の組織にまで波及しているのか、ということも重要なのです。ですから、手っ取り早くステロイド治療をすればいい、ということにはなりません。予後を見る上でも可能な限り内視鏡と病理組織学検査は受けるべきものだと思います。
 

なお、消化器疾患をおこすすべての症例に「下痢」がみられるわけではありません。「下痢」を伴わない消化器疾患もあります。「炎症性腸疾患」では「下痢」がみられないのにこの診断名がつくことがあるかもしれません。


DSC00115.jpg 

 

さて、治療の具体的なお話になりますが、プレドニゾロンは高用量からスタートし、少なくとも1ヶ月ずつでフォローアップ検査のために再診に来ていただきます。反応がよければ少しずつ用量を減らしていきます。反応が芳しくなかったり、副反応が出現する場合、減量で症状が再発する場合は免疫抑制剤を併用します。

また、この病気の場合はGALTシステムが活発になっている状態ですので、食事療法や抗生物質の治療もあわせて行います。

注:GALTシステムについては「慢性下痢症・その5」をご覧ください。



DSC09490.jpg 

 

プロバイオティクスやプレバイオティクスなどのサプリメントを食事に添加することについてすこしお話しておきたいと思います。

いわゆる「善玉菌」、乳酸菌やビフィズス菌ですが、これを経口投与することは腸のバリア機能(GALTシステム)に影響を及ぼし、粘膜免疫反応を調整することが出来る、という実験的な証拠があります。さらに「プレバイオティクス」、フラクトオリゴ糖やイヌリンやチコリなどの発酵物質は善玉菌の栄養となる物質なわけですが、これを添加すると生菌活動が促進する可能性があるということでこれらをあわせて「シンバイオティクス」と言っています。

残念ながら下痢を自然発症した犬(実験により作り出された下痢では無いもの)の治療にこれらが使われ、臨床的に有効であったというデータはありません。それでも私は免疫系に穏やかに働きかけるこれらのサプリメントを加えることは身体にとって悪いことではないように思います。有害な反応が出ないのならば補助療法として役立つのではないかと思っています。

 

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード