ワクチンのおはなし・その3

 ワクチンのおはなし。3回目。

 

先週もお伝えしましたように、ワクチンというのは「弱まった病原体の情報」を体内に入れて、免疫系に作用させるわけですから、それによって身体に反応が起こります。たいていは無症状ですが、なかには好ましくない症状を示すこともあります。

 

①最も多いのは、軽い発熱と食欲不振です。これは一過性で、1日もするとおさまっています。

 

②アレルギー反応が起こることもあります。眼のふちや口周りが赤く腫れぼったくなります。動物はしきりに痒がり、顔をこすります。ワクチン接種後数時間で発症します。抗アレルギー薬の投与でじきに元に戻ります。投薬しなくても数時間で自然に消失することもあります。

 

③局所的に接種部位の皮膚が赤く腫れることもありますが、まれですし、しばらくすると何もしなくても消失します。動物が掻き壊さないように注意する必要があります。

 

④接種後数分からせいぜい30分以内の反応で、ぐったりして身体に力が入らなくなることがあります。同時に嘔吐することもあります。急激な脱力をもたらすのはアナフィラキシーです。非常にまれですが、命にかかわる、とても危険な状況です。すぐに対応しなければいけません。

 

⑤ワクチン接種部位に「肉腫」ができることがあります。猫で発生のある「ワクチン誘発性肉腫」はアジュバントを加えているワクチンを注射した時に最も多く発生するといわれています。白血病ワクチンがこれに相当します。ワクチン成分が同じ部位で蓄積すると、慢性的な炎症反応が起こることに起因するのではないかといわれています。

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こうした好ましくないワクチン後の反応を抑制するにはどうしたら良いでしょうか。

 

①や③のように、問題がさして大きくないような場合は、特別に対処する必要はありません。また有害反応とワクチンによってもたらされる有益なことを比べてみたら、有益なことの方がはるかに大きいので、接種してかまわないと思います。発熱時には病院に来ていただき、処置をすれば問題は簡単に解決できます。

 

②のようなアレルギー反応は、抗アレルギー薬の投与で発生を防ぐことができます。たいていの患者様には平日の午前中に来院していただき、半日預かりで観察をし、アレルギー反応が出れば直ぐに対応する、という方法をとっています。このやり方で、夕方帰宅後に反応が出ることは、まずありません。

 

④アナフィラキシーを防ぐ方法はありません。ワクチンの効果とこの反応を比較した場合、有害事象のほうが重くなりますので、一度アナフィラキシーを起こした動物へのワクチン追加接種はおすすめしません。ただ、3年に1度くらいは抗体価を検査し、免疫強度をチェックしたほうがいいのではないかと思います。

 

⑤肉腫の予防のために、ワクチン接種部位を頚部ではなく、後肢の皮下にします。ここは万が一腫瘍ができた場合、切除手術を行いやすい部位だからです。また、毎年の接種部位を右に、左に、また少しずつ離れた部位に、とすることでワクチン成分の蓄積をなくすことができます。また、ワクチン接種後3ヶ月くらいは接種部位にしこりができてはいないか観察してください。急に大きくなったとか、3ヶ月してもしこりがなくならない、という場合にはすみやかに来院くださるようお願いします。腫瘤は完全に切除できてしまえば、問題はありません。

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このようにワクチン接種後の好ましくない状況をお伝えすると、ワクチン接種そのものが怖くなるかもしれませんが、こうしたことが起こるのは、日常的にはほとんどありません。むしろ、感染症の動物の診察の方が多いのです。命を落とす危険のある感染症だからこそ、ワクチンが開発されているのです。定期的なワクチン接種で免疫を高めておくことは大切なことだといえます。

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きょうのお話はここまでです。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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抗体価検査したいのですが、そちらの病院で出来ますか?

Re: Re: タイトルなし

> > 抗体価検査したいのですが、そちらの病院で出来ますか?

犬・猫ともに感染症の検査ができます。
犬ではジステンパーやパルボウィルス、アデノウィルス、パラインフルエンザウィルス、ヘルペスウィルスの抗体検査、ジステンパー、パルボウィルス、コロナウィルスの抗原検査が可能です。
猫ではコロナウィルス、白血病ウィルス、免疫不全ウィルス、カリシウィルス、パルボウィルス、トキソプラズマの抗体検査が可能です。
病院で検体(血液、検査内容によっては糞便や鼻汁、眼脂、唾液)を採取し、動物専門のラボセンターに送ります。検査結果が出るのは1週間くらい後です。
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〒445-0062
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