嘔吐のおはなし

 嘔吐のことについてお話しましょう。

 

「嘔吐」というのは「胃の中にあったものが食道を逆流して口から出される」症状です。犬でも猫でも、よくみられます。「胃が悪そうだ」とおっしゃって来院される方が多いです。他にも原因が考えられるので検査をするのですが、その結果、全く異なる組織の異常が見つかると、驚かれたり、中には信じてくださらない方もいらっしゃいます。確かに胃は消化器なのですが、「嘔吐」があるからといって、すべてが胃が悪いせいではありません。

 

今日は、嘔吐の発生する仕組みと、嘔吐をおこす原因疾患についておはなしします。

 

そもそも「悪心」(きもちわるーぃ気分)や「嘔吐」はなぜ起こるのでしょうか。そのしくみはまだ完全に解明されてはいませんが、延髄にある「嘔吐中枢」(赤い丸で、印を付けた部分)が刺激されて起こることがわかっています。原因が何であれ、ここが刺激を受けると「気持ち悪く」なったり「嘔吐」するわけです。

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痛みや嗅覚、視覚の刺激、恐怖や不安、といったことは大脳皮質を介して嘔吐中枢を刺激します。グロテスクな映像を見たり、心配事が重なったりした時、胃がむかむかする経験をお持ちになったことはあると思います。動物にもこれがあります。「心因性の嘔吐」ということになります。

 また、受容体が脳内にあるわけですから、「脳内腫瘍」や「髄膜炎」などがあっても「嘔吐」はおこります。

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それから、内耳が平衡感覚の乱れを感じると、その刺激は小脳(オレンジ色のブロッコリーみたいな部分)を介して嘔吐中枢に伝わります。遊園地でぐるぐる回る乗り物に乗ると、降りてからも身体が回っているような感じがし、吐きそうになると思います。これです。動物の病的な状態として「前庭疾患」があります。前庭疾患では眼球がぐるぐる動いている(眼球しんとう)のがわかります。

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いろいろな化学物質が血液中に流れます。体内で代謝され出てきた分解産物や、吸収された薬剤などは「化学受容体引金帯・CTZ」(黄色い丸で印を付けた部分)と呼ばれる部位を刺激し、そこから嘔吐中枢へ刺激は伝わります。体側の原因としては腎不全に伴う「高窒素血症」、糖尿病の合併症である「ケトアシドーシス」、肝疾患でみられる「高アンモニア血症」などがあります。これらの病態では、それぞれ、尿素窒素やケトン体、アンモニアなど、体の代謝産物が排泄よりも過剰に産生されているため、高濃度になっているのです。また「抗がん剤」に代表されるようなある種の薬も嘔吐をひきおこす刺激になりますし、「鉛」「亜鉛」「エチレングリコール」などの特殊な物質も嘔吐を誘います。

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それから、消化管(胃や腸)の粘膜にあるEC細胞は潰瘍や局所の刺激などを感知すると、迷走神経を介してやはり化学受容体引金帯から嘔吐中枢へと伝わります。これは、みなさんがもっとも嘔吐を連想しやすい要因になると思います。単純な「過食」でも膨らんだ胃壁は刺激を受けますし、炎症、潰瘍、腫瘍、異物、通過障害、腸内寄生虫、胃の運動性の低下がおこっても「嘔吐」は発症します。消化管に限らず、他の腹腔内の臓器の疾患によっても「嘔吐」はおこります。「膵炎」や「腹膜炎」「腹腔内腫瘍」「肝臓疾患」「胆管・胆嚢疾患」「子宮蓄膿症」「横隔膜ヘルニア」など、腹壁を刺激する要因のある病気によって「嘔吐」が引き起こされます。

 

 

今日のおはなしはここまでです。

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ジャンル : ペット

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