嘔吐のおはなし・その8

 嘔吐のおはなし、8回目です。

 

胃からの排出遅延、と呼んでいる事象についてお話します。

 

胃は入り口と出口がある、筋肉でできた袋状の構造物です。内容物が沢山入ると筋肉が伸びて袋が大きく拡張します。ぐにゅぐにゅ運動し、内容物は少しずつ出口に運ばれ、そこから出て十二指腸へいきます。入り口にも出口にもしっかりした閉じ口になる筋肉の輪があります。入り口は「噴門」(ふんもん)で、出口は「幽門」(ゆうもん)と呼ばれています。

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「胃の排出遅延」には、
①機能的に胃袋の運動が障害されているか、または
②出口に機械的な閉塞があるか、
という二つの問題があります。もちろん両方の組み合わせによることもあります。

①の機能性胃運動障害は食道や胃の炎症、電解質に問題があるとき、糖尿病や腎臓病などの代謝性の病気があるとき、膵炎や腹膜炎、肝臓の病気、便秘などで起こります。また、手術の後にも起こることがあります。

②の胃からの流出路閉塞は、胃内異物や幽門筋肥厚や腫瘍、膵炎に併発した膵膿瘍などで起こります。

食べてからしばらく経過してから、どろどろにこなれた食物を含む液状のもの、または液体そのものを嘔吐します。うえっ、うえっ、といった嘔吐の前兆がないことがほとんどです。食事をしたあと、お腹がふくれていたり、気持ち悪そうにしたりすることもあります。

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身体検査では脱水が見られたり、お腹周りを触るといやそうにするとか、膨れているとか、つかみどころのない感じです。臨床検査をしても、電解質の異常があるかないかで、特別異常値を得られることがありません。X線検査では液体で膨張した胃を確認できます。造影検査をすると、時間が経ってもなかなか内容物が排出されないことがわかります。また狭くなっている幽門部や胃内の異物や腫瘍が映し出されることがあります。超音波検査で手がかりを見つけられることもあります。内視鏡で内側から観察すると閉塞を確認することができます。

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①の胃の運動障害がある場合、ほかの原因に寄らなければ、食事療法と内科的な薬物療法で治療をすすめます。低脂肪、低タンパク、高炭水化物の食事に水分を加え、ミキサーでどろどろにしたものを少しずつ何回かに分けて与えるのです。使う薬は消化管運動促進薬です。

 

しかし、②の排出障害が流出路に起因するものであれば、詳細な検査と治療をかねて手術する必要があります。異物であれば単に胃を開いて取り出すだけですが、腫瘍や膵膿瘍、膵偽のう胞がある場合はとても高度な手術になります。また幽門部の筋肉の肥厚が認められた場合(幽門洞肥厚症候群、幽門狭窄、慢性肥厚性幽門胃障害)も胃の流出路の再建術という難しい手術が必要です。

ちょっと厄介な病気です。手掛かりをつかむために検査も必要ですし、治療のために外科的な手段を取らなくてはいけないことも、儘あります。

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