猫の尿マーキングと不適切な排泄

 今回は「尿マーキング」と「不適切な排泄」のちがいについてご理解いただくことにしましょう。そしてそのあとに治療法についてお話します。

 

「尿マーキング」は縄張りの誇示を目的にしています。また、ストレスがあるときのストレス置き換え行動でもあります。去勢していないオス猫に見られますが、発情時のメス猫でも尿マーキングを行います。少量のオシッコを1日に数十回も排泄します。「目立つところ」に排泄するのがポイントです。多頭飼育されているお宅でよく見られます。たくさん飼育されている中で暮らすのは猫にもストレスがかかるのです。10頭以上飼育していれば必ず誰かが尿マーキングをする、といわれています。テリトリー誇示のために行う行為ですので、自分のニオイが薄れてくれば必ず同じところにマーキングするので、毎度毎度、繰り返されることになります。

 

一方、「不適切な排泄」はこれとは異なります。原因は「トイレがいやだ」「トイレに行きづらい」といった物理的な問題と、医学的理由からも発生します。もちろんストレスが関係した精神的な問題でも不適切な排泄をすることになります。尿マーキングと違うのは1回の量が大量である点です。猫は自分の手足が濡れるのを嫌うため、どちらかというと吸収の良い場所(布団とか洗濯物のタオルの上など)に排泄するのも尿マーキングと異なる点です。

 

一体どちらなんだろう、と悩むことも多いわけですが、下部尿路(膀胱や尿道)の疾患と、この「こころの病気」である問題行動との区別もしなくてはいけないので、勝手に決めてしまうのではなく、よく猫さんの行動を観察していただいて、猫さんの行動と自分の考えとは分けて、詳しく聞かせていただけると問題解決の早道になります。

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さて、尿マーキングの治療です。

原因は不安にあるわけですから、この不安要素となることを除いてやればいいわけです。何がそうさせるのか、これは日ごろの猫さんの周りのことをしっかり観察していただき、そういう目で猫を見てあげないといけません。

マーキングした部分はとにかくきれいに掃除しなければなりません。少しでも臭いが残っていれば「上書きしたい」気持ちをそそります。酵素入りの洗剤でしっかり洗い、ハイターうすめ液でさらに仕上げをします。簡単にシュッシュと消臭剤をかけただけでは対応していることになりません。

マーキングする場所への立ちいり禁止。これも大事なことです。なんとかしてここへのアクセスを阻止しましょう。

マーキング場所であえて食事をとらせるのもひとつの手です。清潔好きの猫は食事する場所と排泄する場所を同じにするのは好みません。

 

動物病院で協力できることは、避妊手術や去勢手術の実施です。オス猫の90%、メス猫の95%はこの手術によって尿マーキングは治るといわれています。マーキング暦が長いと治癒率は下がります。早ければ早いほうが効果はあります。

内科的な治療もあります。猫のこころが安心する薬があるのです。抗不安薬その他のお薬は特殊ですので、しっかり診察をさせていただいて処方します。また、猫さんのこころがほっとするサプリメントもあります。こちらはご希望によりいくらでも処方が可能です。

ちょっと面白いものではフェロモン療法があります。これにはスプレーのものや、コンセントで部屋に取り付けておく蚊取り液剤のような徐放性のものがあります。この臭いは私たちや犬には感じることができない、種特異性のものですが、「ここは自分の臭い付けをしたところだぞ」と猫に思わせる効果があります。病院の猫専用診察室にも常時つけてあります。不安と緊張の強い猫では、キャリーにスプレーしたガーゼを入れてあげることもあります。成る程、という効果はありますよ。

 

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不適切な排泄の治療です。

もし医学的な問題によるものであれば、そちらの治療が必要です。身体のほうに問題があるのに、こころの治療をしても治りませんので、どちらの原因で起こっていることなのかは診察をしてから決めることです。

そして、もし、身体の病気が否定されたのであれば、こちらの治療が必要になるわけですが、まずはトイレ環境の改善なのです。これは下部尿路疾患の猫にもしつこく、お願いしたいことです。トイレの見直し、というのは、前回お話したようなトイレ環境を作っていただくということです。そして、マーキングのときと同じように、粗相してしまう場所へ行けないようにしなくてはいけませんし、そうでなければその場所で給餌するようにします。洗濯物を取り込んだらすぐにたたんでしまうことや、コタツ布団を用がないときには上げておくことは粗相の防御になります。

不適切な排泄にも薬物療法が有効です。尿マーキングのときと同じような抗不安薬を使います。

 

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ここで、特発性膀胱炎のことを再度お話しておきます。

猫特発性膀胱炎Feline Idiopathic Cystitis (FIC) は、「すべての医学的な原因(感染症、結石・尿道栓、その他)が排除されたにも関わらず、血尿、頻尿や排尿障害などの症候がみられる疾患」として定義されています。比較的若い猫さんから成猫さんによく見られます。発症する猫の平均年齢は3.5歳です。超音波検査をすると膀胱壁が厚くなっているのが特徴です。前にもおはなししましたように、この病気はストレスと密接に関係しています。たいていは1週間もすると治ってしまいますが、再発することも多いのです。

 

特発性膀胱炎の治療です。

ストレス下にあるために発生するのですから、再発性であろうとまったくの初発であろうと、やはりトイレを含めた環境全体の改善をしなくてはいけません。基本のトイレについては前回お話しました。環境についてはケースバイケースですので、トイレ以外の環境改善については特記しません。薬物療法としては残尿感のための薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬、抗不安薬などを使います。フェロモン療法ですが、猫の脳に対し、ストレスを軽減させることはあってもこの病態を治すことは出来ないので、補助的に有効、ということにしておきます。

 

 

猫のストレスと排尿の問題については前のものも参考になさってください。
4回連続でもっとくわしくおはなししました。

http://heartah.blog34.fc2.com/?editor 

今日のお話はここまでです。

次回は猫のストレス行動の3つ目のパターン、常同行動についてです。

 

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