犬に噛まれた!

 「犬に噛まれたのですが、だいじょうぶでしょうか」、というご質問を受けることがあります。何に対して大丈夫なのか、分からないのですけれども、「大丈夫なのか」、というご質問です。何か、すごく怖い病気にかかりそうな気がするのかもしれません。犬に噛まれることによって何が起こるのかわからないけど恐怖なのですね。咬まれていなくても、鼻先の冷たく濡れた部分が皮膚に当たっただけでも「咬まれた」ということになってしまった事例もあります。

 何だかわからないから「怖い」のかもしれません。犬や猫に噛まれたとき、どんな病気になる可能性があるのか、お話しします。知らないよりは知っていた方が怖くないと思います。

ちょっと長くなります。お急ぎの方は、先に一番最後の<まとめ>を読んでから、<はじめに>と<1、傷の化膿症>のところを読んでください。

IMGP0858.jpg 

<はじめに>

まずは、犬に噛まれたらどうしたらよいでしょうか。ここからです。

とにかく、咬まれたらすぐに傷を水道水でしっかり洗い洗浄することが一時処置として必要なことです。もし傷が大きく開いていたり、出血が激しい場合は、清潔なガーゼなどで傷口を覆い、止血できるように包帯などできつめに巻いてください。それから、どちらにしても一刻も早く病院へお出かけください。

犬や猫が咬まれた場合はそのまま動物病院へお越しください。水で洗うと毛が濡れるため処置がしづらくなることがあります。傷がぱっくり開いていて、なんとか包帯巻きできそうな部分でしたら巻いてくださって結構です。ただ、興奮していて処置をさせてくれないことが多く、動けばさらに傷からの出血がひどくなることもあります。

IMGP0860.jpg 

 <心配される病気>

皮膚は身体と外部を隔てる膜です。ここが破れると外部の細菌が体内に侵入してきます。これが「怖いこと」につながります。

 1、傷の化膿症

最初に傷を洗浄することは犬や猫の口腔内細菌(または猫の爪先についた細菌)が傷口から侵入するのを極力抑えることができます。皮膚の傷は小さくても皮膚の下の組織のダメージは案外大きいのです。そんな部分はあとになって紫の痣(あざ)になります。皮下出血が広範囲にあった様子をあらわしています。咬む力が強い犬に噛まれた時は特に皮下のダメージは強くなります。組織が広く傷つき崩れている部分で細菌が繁殖すると化膿の範囲も広くなります。

これを防ぐには、自己流の消毒だけでおさめず、病院できっちり消毒をしてもらい抗菌薬等の処方をしてもらうことです。また、決められた投与方法を守り投与し、「もう大丈夫」と言ってもらえるまでは続けて薬を飲んでおきましょう。

 

動物の場合、皮膚の傷が大きくないと出血もないし、毛が密な犬では傷そのものを見つけることができないかもしれません。出血の具合をもとに「たいしたことないから大丈夫だな」と判断するのは早計です。皮膚の傷が見つからなくても、動物病院を受診したほうが安心です。私たちは痛がる部分を頼りに、身体の表面をくまなくさわり、毛をかき分けて傷の場所を探し当てるようにしています。

咬まれたことで化膿するのは口腔内細菌によるものだけでなく、皮膚に常在している菌(ブドウ球菌や連鎖球菌)が傷口から侵入することもあります。傷まわりの毛を広く刈り、傷とその周囲の消毒をするのはそのためです。もちろん抗菌薬も使用します。投与回数や投与期間についても守ってください。

 

2、破傷風

人の場合、治療の一環として「破傷風」のワクチン接種をしてくれる病院があります。破傷風は犬や猫の口腔内にいる細菌ではありません。土壌中にいる細菌です。それも芽胞菌といって、空気の無いところでは卵のような殻につつまれている菌です。ですが、犬に噛まれたり猫に引っ掻かれたりして、皮膚に傷がある状態で土いじりをすると、その傷から菌が身体に入ります。この菌は嫌気性芽胞菌といって空気の有る状況だと殻に閉じこもり、周囲が自分の住みやすい環境に変わると芽胞から菌を出して増殖を始めるというユニークな活動をしています。ちなみに破傷風菌が嫌気性菌であることを発見したのは、北里柴三郎先生です。破傷風の症状は筋肉が硬直し痙攣するなどとても怖い病気ですが、病気自体はワクチンを接種してあると「怖いこと」から逃れることができます。

動物の場合、破傷風ワクチンを接種する慣例は有りません。


3、パスツレラ症

パスツレラ症は人の病気です。パスツレラ・ムルトシダは、犬猫の口腔内にいる細菌の中で一般的な菌です。犬の75%、猫では100%がこの菌を保有していると言われています。犬や猫に咬まれても、健康な人であれば抗生物質の助けで菌との戦いに勝利できるのですが、ご自身の抵抗力が弱まっている人で、このパスツレラとの戦いに敗れてしまうことがあります。

このパスツレラ症は、咬まれた傷だけでなく、口移しで食物を与えたり、動物とキスしたり、お顔をぺろぺろ舐められるなどの接触の仕方をする場合でも問題が起こっています。傷の化膿だけでなく、なかなか治らない呼吸器感染や、骨髄炎、髄膜炎、敗血症などが知られています。

有効な抗菌薬が有るので、いい加減な消毒や投薬は行わず、医師の指示に従ってください。また、免疫力が低下していると思われる方はもちろんですが、それ以外の方も、動物との濃厚接触をしないようにしてください。

 

4、カプノサイトファーガ症

カプノサイトファーガ症も人の病気です。カプノサイトファーガ・カニモルサスも犬猫の口腔内に常在する菌です。症状は発熱やだるい感じ、腹痛や頭痛などです。発症は稀ですが重症になると怖い病気です。

パスツレラ同様、初期にしっかり治療しておくこと、過剰な接触をしないようにすることが大切です。

 

5、ネコひっかき病

ネコひっかき病は人がかかる病気です。バルトネラ・ヘンセラは、飼い猫の7.2%くらいが保有しているとされている菌です。ノミの感染と関係があります。ノミの糞中に排泄された菌を猫が歯や爪に付着させているため、猫に噛まれたり引っかかれたりするとこの菌に感染します。リンパ節炎をおこしますから、傷の腫れと、そこから最も近い身体よりのリンパ節の腫れが特徴です。熱を出したり、身体がだるかったり、関節が痛かったりします。

猫自体のノミ感染予防をしておくことは予防として有効です。治療は抗菌薬です。

 

6、狂犬病

狂犬病は現在日本での発症はありません。防疫をしっかりしていることや、国内の飼い犬を登録し、予防接種を義務付けたことで撲滅したのです。しかし、大変怖い伝染病ですし、近隣諸国では発生もあります。海外の国から動物を輸入することもありますし、私たちも気軽に海外に出かける時代にもなりました。油断をしてはいけない病気です。

咬まれたのは海外なのか、国内なのか、もし海外であるならばそこが清浄国なのかどうか、またあなたを咬んだ犬が野良犬なのか、飼い犬なのか、もし飼い犬であるならば狂犬病の予防接種を受けているのかどうかは確認し、病院でその旨ドクターに伝えるようにしてください。

IMGP0871.jpg 

<まとめ>

一般に一番起こりやすい病気は1の化膿症です。運が悪いと3,4,5になる可能性もあります。国内であれば6の心配はまずないといってもいいでしょう。2も条件付きで防ぐことはできます。

1から5までは細菌感染、6だけがウィルス感染です。細菌に関しては抗菌薬投与が治療になります。初期の傷の手当てさえしっかりしてあって、お薬もきちんと指示通りに使っていれば、悪い状態には進まないと思います。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました。
今夕、小型犬に噛まれて不安でしたが直ぐに消毒薬で消毒して様子を観て明日、病院に行くつもりです。
犬歯の痕の直ぐ下に1円玉ほどの血のアザみたいなのが噛まれて30秒ぐらいでできたので心配になりましたが、腫れてこないし現在は痛みも無くどうしたら良いのか、悩んでましたので大変、助かりました。😌
プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード