猫の甲状腺機能亢進症についての論文から

 猫の甲状腺機能亢進症について。

 

この病気については以前もお話ししました。

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-559.html

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンがたくさん出すぎてしまう病気です。たいていは良性の過形成で、甲状腺がんなどの悪い腫瘍のことは少ない、とされています。

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最近、猫の甲状腺機能亢進症は増えてきているように思います。診断しやすくなってきたのも「増えた」ように感じる要因かもしれません。

原因究明の検査によると、市販の缶詰フードに含まれるヨードやセレン、大豆イソフラボンや、プルトップ缶の表面に塗られている物質、ある種の猫砂などが甲状腺腫を誘発する物質(ゴイトロゲンと呼ばれています)として考えられています。

魚やレバー、鶏モツを原料として作られている缶詰フードを食べている猫では高率に発症していることもわかってきました。食事中のヨードの含有量は発症に大きく影響を与えているようです。

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さて、症状や診断方法は今回、特別に申し上げず、はしょって治療についてお話しします。

 良性の過形成といえども、大きくなっているわけですから、他の腫瘍と同じように甲状腺を摘出する手術が考えられます。しかしそのほかに内科的に薬を与える方法もあります。外科による治療は根治療法になるわけですが、内科的な治療法の方が人気があります。発症するのはたいていが高齢の猫さんですので、麻酔をかけることや、周術期の状態を上手にコントロールするのが難しいことなどが不人気の原因でもあると思います。内科的には、甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬を与えることです。効果を維持するには毎日投与する必要があります。もし、甲状腺腫ではなく、甲状腺がんであった場合は、人気がなかろうと手術をしなければいけないと考えてください。

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ところで投薬ですが、猫さんが病気のために攻撃的な性格になっていると、ちょっと大変になりますね。チアマゾールは人用に出ている抗甲状腺薬ですが、猫さんにもこれを処方しています。猫さんに対して安全性が高く、効果も得られる薬剤です。食欲や臨床症状など猫さんの様子を見ながら、また腎臓、そのほかへの影響なども考慮しつつ(検査が行われます)、少しの用量から始め、甲状腺ホルモン値が一定の範囲内に入るように調整し処方していきます。定期的に血液検査をするのは甲状腺ホルモンの値が安全ラインの中に入っているかどうかを確認するためです。

 

海外では耳の内側に塗るお薬が出ています。メチマゾールです。効果は飲むのと変わりないようです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15515580

12回の経口投与と同様に11回の経皮投与ですみ、しかも効果も同等というのです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22092628

日本でも流通するといいのですが、残念ながら今のところこれが発売されるような動きは出ていません。

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この病気の発症原因がヨードの高用量摂取と関連がある、ということで、特別療法食としてヨードの量を低用量におさえた食事が開発されています。Hill’sから発売されているy/dです。食事と病気の関係というと、食事というのは薬を与えたときのようにすぐに顕著な効果が出ることは少なく、「薬を飲まずにどれだけの効果があるのか」なかなか評価が得られないものです。日本では20123月から発売されていますが、米国ではもっと前から出ていて、すでに2年が経過しています。最近の論文で、なかなか好成績が得られていることが分かりました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24232246

これなら、薬の副作用におびえながら投薬をめぐって猫さんと格闘する必要もないわけで、治療の補助としてではなく、一つの治療として独立して選択してみるのも良いのではないのかな、などと思うのでした。

 

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