犬の子宮蓄膿症・2

 犬の子宮蓄膿症の2回目。

犬の子宮蓄膿症はどのように発生するのでしょうか。ホルモン周期と合わせて説明します。

 

発情前期、発情期はおもにエストロジェンのホルモン支配を受けています。この時期は通常、感染に対して防御するように出来ています。エストロジェンには免疫増強作用があり、発情期には、膣粘液に白血球が多く含まれるようになり、細菌が子宮内に入るのを防いでいます。またこれは精子がこれらの細胞により傷つけられたり壊されたりせず、安全に生殖器から入ることを助けることにもなります。

発情期が終わると約2カ月続く発情休止期に入る、と先回ご説明しました。この時期はプロジェステロンの上昇している時期です。プロジェステロンの分泌されている期間は子宮内の白血球の機能は抑制されます。プロジェステロンの影響で妊娠や胎児の発育の準備のために子宮内膜は厚くなります。妊娠が発生しない場合、子宮内膜組織内に「のう胞」を形成するほどに暑さが増していることもあります。これは「のう胞性子宮内膜増殖症」などといわれる変化です。子宮腺からは液体が分泌されますが、これは細菌が増えるのにとても都合のいい環境です。プロジェステロンが高いまま維持されているので、子宮内にたまった液体や侵入してきた細菌を排出するための子宮壁の筋肉が収縮するのが阻害されます。なお子宮内に液体貯留がみられるのは「子宮水症」とか「子宮粘液症」とよばれます。液体の内容によって名前がちがいます。

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子宮への入り口には「子宮頚管」という壁が厚く、内径が狭いところがあります。これがいわゆる関門になっていて、発情期以外はしっかりと閉じられています。ここは発情期には精子が子宮内に入ることができるように緩和されます。子宮頚管が開いているか、緩んでいるようなときには膣内にある細菌が簡単に子宮内に入ることができます。子宮が正常であれば子宮内の環境は細菌の生存に有害なのですが、プロジェステロンによって子宮壁が厚くなりのう胞をためている子宮内は細菌の増殖のために好条件です。それに加えて、子宮液を排出する筋肉の働きが弱っているため、細菌は子宮外に排出されないことになります。

 

子宮蓄膿症の原因となる細菌ですが、膿液から検出される菌のほとんどは大腸菌(Escherichia coli)であることが知られています。健康的な子宮の中には細菌は存在しませんが膣内には大腸菌をはじめ多くの常在菌が存在することが分かっています。子宮蓄膿症は肛門や外陰部周辺、膣内の細菌が子宮頚管を通って子宮内に侵入して感染すると考えられています。

 

子宮蓄膿症はこのようにプロジェステロンが高濃度になっている「発情休止期」に発生しやすいので、通常は発情が終わった後、28週間あとに発生します。

 

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どのような犬が子宮蓄膿症を発症しやすいのでしょうか。

一般的には高齢犬に多発します。発症年齢の平均値は79歳ですが、若い犬では4カ月齢、高齢では16歳を超えることもあり、どのような年齢でも発症があることがわかります。

また、一度も出産をしたことのない犬は出産経験のある犬に比べて発生のリスクが高い、という報告があります。それでは何回出産経験があれば子宮蓄膿症を発症しないのだろうか、というと、これは資料がありません。

高齢の未経産の犬が発症しやすい背景には、犬がプロジェステロンの支配下にあった時期が長いからなのかもしれません。

しかし発症しにくくなるから、といって妊娠や出産をさせればこの病気にならないのだろう、という安易な考えに至るのは良くありません。交配、妊娠、出産、授乳にもそれぞれ犬に対するリスクがあるからです。

 

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まとめです。

犬の子宮蓄膿症の発生はホルモン的な要因が主になっていて、細菌感染は二次的な要因です。高齢や出産の経験がないことも発生に影響をおよぼす重要な要因になっています。なお交配の有無や偽妊娠を繰り返すこととの関係は不明です。

 

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