猫の肝リピドーシス・その2

猫の肝リピドーシスの続きです。

 <治療方法>

集中的な治療とケアのために入院が必要です。

体液や電解質の不均衡を是正するため輸液療法を行います。ビタミンB群なども補給します。嘔吐や下痢などの症状に対する治療を行います。

 

治療の柱は食事です。必要十分量を食べさせることが非常に重要です。

自分から食べることはまずありません。口の中に入れ、それを飲みこませることになります。注射ポンプでの投与です。しかし猫が嫌だと感じている場合はこれを飲みこもうとせず出してしまいます。

もう少し効率よく投与するのに、鼻の穴を通して食道の中に管の先端部分を置く処置を施し、この管から流動状の食事を投与する方法があります。経鼻食道カテーテル法といいます。常に管は設置したままですが、鼻に違和感を感じることは少ないようです。注入口は頭部から首のあたりに来るようにし、ネックに包帯を巻きます。欠点は鼻の穴を通過できるくらいの太さの管になるので、入れられる食事の濃度に限りがあることです。

さらに効率よく食事を流し込むには、胃に直接管を設置し、この管を介して食事を与える方法になります。人でも用いられる胃ろうチューブです。この方法だと太さの十分な管を使うことができ、短時間に高栄養の食事を流し込むことができます。内服薬もこのチューブから入れることができます。最も効率良く栄養補給をすることができる方法ですが、全身麻酔下で内視鏡を介して、または腹部を切開して行うことになるので、猫の状態によっては全身麻酔と手術そのものを乗り越えるのが難しい場合も出てきます。

設置した管は猫が自分の力で十分な量を口から食べられるようになれば取り外します。鼻からの管はそのまま取りますが、胃につけたチューブは再び軽い鎮静剤又は短時間の全身麻酔をして外すことになります。

 

病態が安定してからは帰宅し、自宅で食事療法を行うこともできます。大変手間がかかることですので、飼い主さんに根気と時間的なゆとりがあること、さらに治療に協力的な猫であることが自宅療法では欠かせない条件になると思います。そうでない場合は自宅で治療を行うのは難しく、入院の方が成功率は上がるだろうと思われます。

 

肝性脳症を併発した場合の治療はさらに深刻なものになります。食事療法で必要なたんぱく質を補給しようとするとかえって症状が悪化します。

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<治療期間>

早期に診断し、早期に治療に入ることが成功のカギになります。

しかしうまく治療が運んだとしても日の単位ではなく、週単位の日数を必要とします。完全に自力で、100%の栄養を摂取できるようになるまでに、2~3か月要することもあります。

 

<治ったあとのフォローアップ>

再度この病気にかかることは稀ですが、猫の体重管理やそのほかの健康の指標をみるため、定期的に病院へいらしてもらうと安心です。

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<予防のためにできること>

栄養バランスのよい食事を適正量あたえ、適度な運動もさせることは肥満の予防になります。

猫は味覚として甘味をキャッチすることができません。このことは個人的には気の毒だなぁ、とは思うのですが、日常生活の中で炭水化物を中心にした人の食べ物を食べたところで楽しみも得られないし、いうなれば猫は甘味の誘惑は感じないということです。ですからビスケットなどのおやつは全く不要です。

猫は遊びが大好きな動物です。屋内でもハンティングごっこをすると大変満足です。かくれんぼで全身を動かすのも良いことですし、獲物に見立てたぬいぐるみやおもちゃなどを紐につけ高いところからぶら下げてジャンプ遊びをさせるのも良いでしょう。レーザーポインターや鏡に反射させた光を追わせるのも良いのです。室内でも運動不足にならないようにしてやってください。

また餌の与え方にも工夫をすると良いです。ずっと出しっぱなしの食器が空っぽになったら誰かがざざーっとキャットフードを補充するという方法では1日の栄養量がどれだけになるのか分からず、無意識のうちに食事量が増えてしまいます。理想体重から割り出した1日分のドライフードを計っておくのは良いことです。また食糧を見つけ出す遊びを兼ね、部屋のあちこち、ちょっと隠れた場所に少量ずつ置く方法は猫の好奇心も満たすことができ、退屈な思いをさせないようにもできます。ただし隠した場所を飼い主さんが忘れないようにしてください。

万が一、肥満になってしまった場合、自己流でダイエットを強行するのはいけません。科学的な方法で減量を実施しましょう。

また、「猫の食欲がない」という場合、明日は食べるだろう、少しは食べたからだいじょうぶだろう、今日は私が忙しくて猫にかまっていられない、などという勝手な思い込みやご都合主義なことは猫にとって致命的になることがあります。なんとか猫のために時間を割いてください。

 

長くなりました。

猫の肝リピドーシスは、そんなに頻度の高い病気ではありませんが、忘れたころに遭遇する、そしてやっぱり怖い病気で、かつ持久戦になります。

なかなか治らなくて、心を痛めている飼い主さんもいらっしゃるだろうと思います。ほんとに心が折れそうになりますよね。それでも信じて食事を与え続けると、ある日ひょっこり食事を食べ始めてくれます。がんばってください。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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No title

心が折れそうです。
肌が日の光で透かすとレモン色になってきています。
耳の中も、口の中も、レモン色に見えます。
食欲は無いので嫌がりますが、食事を与えることしかできません。
ロイカナの退院サポートを1日30~50gを目標に。

肝性脳症、知りませんでした。
動物病院では肝リピとだけ言われました。
低タンパク質の食事に切り替えるべきか悩みます。
泣いていられないのに、涙が止まらなくて、辛いです。
プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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