シニクロミセス・糞便にみられる酵母状真菌のこと

 慢性下痢、もしくは再発性下痢の犬で糞便検査を行うと、酵母様真菌を発見することがあります。

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サッカロミセス亜科、シニクロミセス属に属する子嚢菌類で、シニクロミセス・ガッツラタス(
Cyniclomyces guttulatus)というのがこの酵母状真菌の学名です。

 

普通の光学顕微鏡で観察することができる大きさです。酵母様の真菌に特徴的な形態をしています。
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同じ倍率でみた鞭虫(べんちゅう)の虫卵はこちらの大きさです。だいぶ大きさが違うのがわかります。また、虫卵の周囲にちらちらと見られるのが糞便中の細菌です。これと比べても違いが分かると思います。


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さて、この酵母様真菌ですが、うさぎでは胃や腸の中の常在菌で、病原性はないと考えられていますが、犬や猫で病原性を疑う報告があります。

  

ある報告によると、下痢をしている犬の便からこの菌が見つけられていますが、その割合は少ないものの、全く問題の無い便を排泄している犬の便からも見つけられています。それで、この菌は犬の消化管の正常な微生物叢の構成要素になっていて、日和見病原体として作用するのではないか、との見方がなされています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22821151

 

また、急性の気腫性胆のう炎で手術された犬で、切除された胆のうの内容物(胆汁)から偶然この菌が分離されたという報告もありました。十二指腸から胆のうへ、総胆管を介して感染が上がったのかもしれません。胆のう炎の原因になる可能性もありそうです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17123257

 

猫の感染の報告もあります。嘔吐や下痢といった消化器症状を起こすようです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19331065

 

 

治療ですが、いわゆる抗真菌薬の内服により、糞便中から無くなります。ただ、また増殖し、下痢を再発した時に検査すると、検出されます。

抗真菌薬ではない処方でも下痢を治めることができます。この治療を行った場合も抗真菌薬で治療した時と同じです。数ヶ月くらいしてまた下痢になったとき検査すると、発見されます。

躍起になってこの酵母状真菌をなくそうと治療するよりは、なにかのバランスの崩れで下痢になるのを念頭に、身体そのものをコントロールをしていく方がよい治療になるのかもしれません。

 

今週はお腹をこわして来院するわんこが多かったのと、たまたまその中でもこのシニクロミセスを検出する検体が複数重なったので、こんなお話を単発でしてみました。

 

 

おまけ

春から夏へ、季節変わりをするときです。体調がすぐれなくなります。晴れた日と雨の日、昼間と夜の気温差が大きいし、暑さそのものに身体が慣れていない時ですので、交感神経系と副交感神経系のアンバランスが起こってきます。第一次の夏バテともいえると思います。

お腹の働きが弱くなります。食欲がおちても当然と考えてください。心配になって無理にいつもと違う栄養価の高い食事(缶詰フードや肉類など)を与えても、その場は目先も変わり喜んで食べるのですが、嘔吐や下痢のきっかけになってしまいます。こんなときはむしろ、いつもの食事を少なめにし、何度かに分けて与えてもらう方が胃腸にやさしい与え方です。

また被毛の生え換わり、冬毛が抜けるときでもあります。念入りにブラッシングしていただき、皮膚の表面の通気性をよくしてやってください。猫さんは自分でグルーミングをしますので、とげとげ、ざらざらの舌に毛がからみ、毛球症を作りやすく、これも嘔吐の原因になります。

嘔吐や下痢は私たちでもつらいことですので、出来ればかわいい愛犬、愛猫の嘔吐や下痢を避けてやりたいと思いますね。

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