熱中症のこと

 立秋を過ぎてもまだなお暑い愛知県ですが、窓を開けて安眠できるようになるまでは、もう一月くらいはかかりそうです。

今日は心臓病のお話を中休みして、熱中症のことをお話していきます。

 <熱が高くなる、ということ> 


生きている身体からは熱が発生しています。産熱といいます。この熱を身体の外に出して(放熱といいます)一定の体温を保つようにしています。犬や猫の平均的な体温は38.5℃前後。37℃台では低いぞ、だし、39℃台になると、ちょっと高めだぞ、というふうに思ってください。さて、運動しますとこの熱産生が増え、体温は高まります。もちろん運動しなくても、暑いところにいると身体が温められて同じように体温が高まります。体温が高まると体表面の血管が太くなって、ここを通過する血液の量を増やします。皮膚から熱を出そうという働きです。身体の外側をめぐる血液が増えるので、全体的にみると血液量が不足してきて低血圧になることがあります。脳へ行く血液量も減るので、一時的なことですが、脳の酸素が欠乏するので私たちでいう立ちくらみのようなことが起こります。犬とか猫ではふらふらっとなります。これは熱いお風呂に長いこと浸かっていてのぼせてしまった時のような状態です。意識がなくなって倒れこんでしまうかもしれません。この時、近くに誰もいなくて気づいてやれなかったら、犬や猫は自分で歩いて涼しいところへ移動できないので、一時的に倒れただけなのに、このままの体温上昇が続いてしまいます。


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<脱水がある、ということ>


すごく暑いときは汗をかいて熱を逃がそうという働きが起こります。人ではね。犬や猫はあんまり汗をかきません。足の裏とか、すごく狭いところだけです。あとは、口を開けて、はぁはぁ。べろを出して、よだれをたらたら出しながら熱を下げようとします。でも、これだけでは十分に熱を下げる所まではいきません。
汗は出ないのに脱水は起こります。不感蒸散です。がぶがぶ水を飲んでも追いつかないのです。まぁ、よほど走った後でないと、たくさん水を飲むようなことはありません。また、飲んでいる以上にたくさんの尿が出ていたり、嘔吐や下痢などがあって、そちらからも水分が奪われていると、水分の喪失の方が多くなりますから、脱水になってしまいます。脱水があると身体がだるくて、疲れたーって感じになります。頭が痛かったりします。犬も猫も頭痛を訴えるすべはありませんが、じっとしています。あんまり食欲がありません。脱水、とはいいますけど、水だけではなく、水の出入りに伴って電解質のバランスも崩れてしまうことがあります。嘔吐があるときは胃液の中の成分も一緒に出てきますから、よけいにバランスを壊すことになってしまいます。


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<熱中症というのは?> 


いわゆる熱中症はがんがん熱が上昇してしまうタイプです。車の中に置き去りにしちゃったとか、まだ暑い時間帯に散歩に行ってハァハァ、ゼロゼロが止まらない!というような華々しい熱中症です。

若くて活動的な犬、肥満体、気管や気管支に問題をかかえている犬、教科書的にいう短頭犬種ももちろんですが、こうした犬に多発します。それと被毛のお手入れ不良で、アンダーコートがもさもさしていて熱がこもりやすくなっている犬も危険です。

病院に連れてこられたときには意識がある場合も、意識も無くぐたっとしていて痙攣までおこしている場合もありますけれど、たいてい体温が40℃を超えています。中には42℃くらいまで上昇していることも、普通の体温計では測定できないくらい上がっている場合もあります。すぐに氷を入れた水槽の中に身体を沈めて体温冷却をしていきます。冷たい補液剤を静脈内点滴して、こっちからも冷やすようにします。

身体というのは結構「代償機能」があって、ちょっとやそっとのことだと、なんとか乗り越えてくれる仕組みが備わっているのですが、さすがに高熱が長く続くといろいろな問題が起きてきて、DIC(播種性血管内凝固症候群:あちこちに血栓ができて血が回らなくなります)だの多臓器不全だのという、命にかかわるような現象が起きてきます。考えられないほどの高温は、温泉の温度くらいになります。あれで温泉卵ができる、ということは、そのくらいの体温になるとたんぱく質の変性が始まってしまう、ということです。一度、ゆで卵になってしまった卵からヒナが孵ることはできません。犬や猫の身体も同じ、最悪の事態が起こる可能性が大、ということです。そして、30分で熱は下がったとしても、身体も熱と同時に元に戻るわけではなく、身体の機能がしっかり回復するまでには数日またはそれ以上かかりますし、脳の方に問題を残す場合もあります。


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<もうひとつの、熱中症> 


華やかじゃない熱中症ですけれど、なんだか元気がないよね、食欲もないみたいね、御馳走をやれば食べるけど食べても吐いちゃうし、というかんじで、夏バテだね、で終わってしまうかもしれないタイプの病態があります。私はこれも熱中症のひとつの型ではないかな、と思うので、いっしょにお話します。消化器症状をともなう夏バテのような状態ですが、人では「慢性熱衰弱症」とかいうのでしょうか、食欲不振でだらだらしてしまう病態です。近年はこちらの方をより多く診察します。きっとお年寄りの方がエアコンをつけないで寝ていて深夜に体調を壊してしまうのはこういうのじゃないのかな、などと思っています。

動物でも高齢の犬猫、心臓病や腎臓病、糖尿病などの基礎疾患を持っている個体によく起こります。これらの犬や猫は水の代謝がうまくいっていません。口から入ってくる以上の水分が尿から出て行ってしまいます。尿を濃くする能力に欠けていたり、水分保持する筋肉が少なかったりしているので脱水をおこしやすくなっているのです。また脱水は血液の粘度を高めるため循環不全も起こしやすいので注意が必要です。人は自分の体調を自覚していますので年齢による変換期がよくわかります。おそらく犬や猫にも、年齢を重ねていく時、このごろちょっと前のように行かないぞ、という自覚の時があるかもしれません。教えてもらえるといいのに、と思います。

さて、この「物静かな熱中症」ですが、元気がない、食欲がない、吐くといった消化器系の病気と同じ症状を示すわけですが、簡単に制吐剤を注射するくらいでは治りません。いつまでも症状がぐずぐず続きます。血液検査や尿検査などから、身体にあった補液剤を選択し、崩れた電解質バランスを補正していきます。こうした時は状態を見ながら、余病の発見のための追加の検査を行い、並行して見つかった病気の治療を進めていくべきだろうと思います。

 

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<たいせつなこと> 


熱中症で大切なのは、早期発見早期治療ではありません。熱中症にならないようにしてやること。予防こそが重要です。「このくらいの温度なら大丈夫」とか「案外うちは涼しいんです」とか「去年だって外にいましたよ」とか言ってる場合じゃなくて、地球は年々暑くなっているし、犬や猫も年々歳をとってきているのを飼い主さんに自覚してもらうことなのではないかと思います。

クールマットを用意するとか、日陰を作ってやるとか、もうそんなのでは追いつかないほど高齢な犬は体温調整がうまくいかなくなっています。なんとか調整してエアコンのきいた屋内に入れてやっていただきたい。

暑いときに散歩に行ってはいけないとか、車の中に置き去りにしてはいけないなど、言うに及ばない話はここではいたしません。

とにかく、涼しくしてやってください。水を欠かさないようにしてやってください。水が飲みたくなるような環境を作ってやってください。

 

今日のお話はここまでです。

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