ちいき猫・そと猫・おうち猫

 今日もまた心臓病のお話を途中休みです。それは地域猫のことをお話したいからです。

 

はじめは猫さんのお話というよりは患者さん自慢かもしれません。先月はたくさんの方に新しい命を救っていただき、それはもう、嬉しく思いました。

猫さん、春の発情で新しい命が誕生したわけですが、地域猫になっている母さん猫が育児に疲れたのか、また運搬途中に非常事態に遭遇したのか、お家で生まれた猫さんが捨てられてしまった!なんて思いたくはありませんが、とにかく母さん猫とはぐれてしまった子猫たちが出現したのです。市内のあちこちで誕生したこのままでは生きていくことができなくなった子猫たちを、ハートの患者さんたちはたくさん保護してくださいました。みなさん異なる地域で子猫の危機に遭遇し、自主的に手を差し伸べてくださった方々です。

飼育犬が散歩途中に発見してくれた前足の麻痺した子猫さん、カラスにつつかれたらしい外傷跡がある子猫さん、まだへそのをがとれたばかりのようなミルク飲みの子猫さん、目ヤニで目がくっついたままになっていた子猫さん、くしゃみ連発の子猫さん、お腹に数種類も寄生虫がいた子猫さん、皮膚病にかかっていた子猫さん、いろいろです。複数まとめて保護してくださった方もいらっしゃいました。保護がなければ治療は始められませんし、治療だけ行ったところで、家庭での看護がなければ治らない病気ばかりです。ウンチやおしっこもまだうまくできない子猫さんもいます。病院で治療するのは1日のうちのほんの数十分に過ぎないところ、ご家庭では残りの23時間数十分という長時間のめんどうみていただかないといけないのです。そして、どの子も途中でリタイアすること無く、そのまま「うちのこ」にして飼育していただけることになりました。みなさんの温かなお気持ちに感謝です。

 

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<地域猫・ちいきねこ>

全く人と関わらず外で暮らしている猫さんもいますが、お宿の提供は受けないまでもある程度の距離をもち、少し食事をいただきながら暮らしている猫さんがいます。「地域猫」と呼ばれている猫さんです。環境省の定義している地域猫は、「地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている、特定の飼い主のいない猫」です。うまく地域猫活動が進んでいる地域では、飼育管理者さんがはっきりしていて、彼らが飼育する対象の猫をしっかり把握し、食事の管理(与えるだけでなく、食べ残しの片付けなどもできている)だけでなく、排泄物の管理も(きちんと専用のトイレを作り、清潔に保たれている)、不妊や去勢の手術もきちんと実施させていて(一代限りの命を全うしてもらい、数が増えないように管理されている)、周囲の住民の方々(もしかしたら猫さんをあまり好きではない人たちもいらっしゃいます)のご迷惑にならないように飼育されています。こういうの、理想ですね。

 

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<外猫・そとねこ>

その一方で同じように猫さんへの愛情から始めた行動が、単なる「外猫」の餌やり活動だけに終わってしまっていることもあります。

「かわいそうだから餌をやった」

「そしたらたくさん集まるようになった」

「猫同士でケンカが始まった」

「知らない間に子供が出来ていた」

「こんなに急に子猫が増えるなんて思いもしなかった」

「近所の方から排泄物のことや食べ残しの餌のことで苦情が来た」

こんなサイクルですと、餌やり活動をある日突然止めざるを得なくなってしまいます。また、それでも餌やり活動を継続できたとしても、ご近所の方からの苦情を回避できていませんから、ご近所さんは行政からの指導をお願いしようとするかもしれません。猫に良かれと思って始めた活動が、猫を窮地に追い込む結果になってしまいます。

 

 

「地域猫活動」と「外猫餌やり活動」では活動した結果がだいぶ違ってくるように思います。

 

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TNR活動>

TNRというのをご存知でしょうか。

TTrap「捕まえて」

NNeuter「不妊手術をして」(手術した印として耳先に小さなV字カットをします)

RReturn「もとに返す」

こういう活動です。

 

初めて聞く方には「捕まえる!?」「手術なんてかわいそう!」「耳を切るなんて痛くない?」と思われるかもしれません。けれど、かわいそうな子猫さんを増やさないためにとても有効な方法です。

 

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<地域猫の避妊や去勢の手術>

「おうち猫」の避妊や去勢手術の利点については前から触れてきました。ちいき猫でも同じで、個々の身体にとって良いことがあります。性腺ホルモン由来の病気(前立腺や精巣の病気、卵巣や子宮の病気、乳腺の病気など)をなくすことができますし、また行動学見地から、無益な接触が減少するため猫に特有の伝染性ウィルス疾患に罹患すること、ケンカによるけが、飛び出しによる交通事故などのリスクが減少します。おうち猫ならとても気になるマーキングですが、外で自由にしていている猫でも同じことで、去勢手術をするとスプレー行為も格段に減少するので、排泄物のことでご近所迷惑になっていた問題も鎮静化する可能性があります。

手術のときには麻酔がかかるので、それまで遠くの方からしか観察できなかった猫の身体検査が可能になります。ノミや耳ダニなどの外部寄生虫のほか、お腹の寄生虫も発見すれば駆虫できますし、他の外傷や皮膚病の治療も同時治療が可能になります。

また、耳をカットするのは「この子はもう手術済みですよ」という目印。知らないでもう一回手術してしまうのを防止するためです。レーザーメスで切り込みを入れると全く出血もしません。術後は鎮痛処置も行いますからしばらくは痛みからも解放されています。

地域猫を集団としてみる場合も、避妊や去勢の手術は良いことがあります。発情による濃厚な接触がなくなり、伝染病の拡散を防ぐことができます。

 

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<外出自由なおうち猫の去勢手術>

地域猫の繁殖をTNR活動で制御していても、外出自由なおうち猫が去勢手術されていなければ、出先で繁殖させてしまうことになります。もし、地域猫に対する問題に関心を示していただけるのならば、ぜひおうち猫の去勢手術を検討していただけるとありがたいと思います。去勢手術の利点は上記のようにたくさんあります。

 

 
<ちいき猫の幸せのために>
外猫さんを可愛いな、何かしてあげたいな、と思うようでしたら、集合体としての猫さんのことを理解していただき、単に「餌やり活動」で終わらないようにしてもらえると、うれしいです。
もちろん、お外遊びをするおうち猫の去勢手術も立派な貢献です!


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