デング熱ほか・動物由来感染症のこと

 西アフリカ諸国で、エボラ出血熱が近年にないレベルで流行しているのが報道されています。そんな中で国内でもデング熱の感染が認められ、動物由来感染症に対しての関心がすすんでいます。

今日は動物由来感染症についてお話します。

 

 

動物由来感染症は感染力や発症した時の重篤度により、5つに分類されています。

エボラ出血熱はその中でも最も危険度の高い一類感染症に入っています。エボラウィルスによる感染で発症する急性の熱性疾患です。必ずしも出血性の臨床兆候を示すわけではないのだそうで、「エボラウィルス病」と呼ばれることもあるそうです。自然界の宿主(ウィルスが感染する動物)はオオコウモリではないかと考えられています。ゴリラやチンパンジーの生息する地域で発症が見られることから、このウィルスはヒトだけでなくこれらの動物にも感染するようです。感染経路は感染した動物の体液との接触感染といわれています。

 

一方、デング熱は重篤度分類からするとSARSや腸管出血性大腸菌感染症よりもレベルの低い四類感染症に分類されています。エボラ出血熱の報道の後での国内の発症ということで、この2つを混同しておられる方もあり、心配が大きくなっているようです。こちらもウィルス感染による病気で、デングウィルスは日本脳炎と同じフラビウィルスに属するウィルスです。蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)を媒介して感染し、感染した人に直接ふれても感染することはありません。デング熱ウィルスの生活環ですが、森林型生活圏では、サル⇒蚊⇒サルになっていて、都市型生活圏では唯一ヒトだけが対象になっています。つまり、ヒト⇒蚊⇒ヒト、という生活環です。デングウィルスはアジアの熱帯地域のサルに寄生して進化してきたと考えられているそうです。森林から都市へと住む世界を拡大させたのかもしれません。

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犬や猫はデング熱の感染は大丈夫なのか、というご質問を受けました。

私見ですが、犬や猫は宿主に該当しないので、おそらく感染しても不顕性感染であり発症することはないのではないかと思われます。ただ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染の例のように(後述)犬が感染の中間的な存在となってしまう可能性は否定できません。蚊の飛翔範囲はあまり広くないようですが、風には飛ばされるので、今話題となっている地域だけでなく、その周辺へのお散歩も避けた方が賢明だろうと思います。

 

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先日、静岡で開催された中部地区獣医師大会に出席しました。

今回は犬や猫の病気についての発表ではなく、感染症についての特別講演を拝聴してきました。

 

堤可厚先生は感染症界で有名な先生で、故シュバイツァ博士に師事した医師でもあり獣医師でもある先生です。

多くのウィルス性感染症についての知見を伺いましたが、印象深かったのはコウモリとの関連です。マールブルグ熱、エボラ出血熱、ヘンドラウィルス病、ニパウィルス病、SARS(重症急性呼吸器症候群)、狂犬病の自然宿主は疑い段階のものもありますが、どれもコウモリと関連が深いそうです。また新しい感染症のMERS(中東呼吸器症候群)はコロナウィルスによる感染症ですが、ラクダが自然界の宿主になっており、こちらもコウモリの関与が示唆されているそうです。洞窟の中にコウモリを見に行くツアーがあったり、所によってはコウモリを食する文化圏があるようですが、非常に危険なので止めた方が良いとおっしゃっておられました。渡航に際しては現地の感染症などの情報をしっかり入手し、予防できるものはしっかり対策をとってから出かけるのが安全なようです。

 

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また静岡大学の大橋典男先生の特別講演では、日本国内に潜在する新興感染症の「アナプラズマ症」についてお伺いすることができました。今年春ころ、西日本各地でマダニを媒介した病気、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のことが報道されました。アナプラズマ症もマダニを介在して感染する病気です。アナプラズマはリケッチア目アナプラズマ科の偏性寄生性細菌でウィルスではありません。自然界では野生哺乳動物⇒マダニ⇒野生哺乳動物、という生活環を送っています。

蚊にさされるのも危険ですが、マダニにも気をつけたいです。

 

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おまけのお話になりますが、827NHK総合「ニュースウォッチ9」でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染と犬について放送されました。犬についていたマダニを手で潰してSFTSウィルスに感染し発症した例があったようです。愛媛の方でした。犬に付着するマダニすべてにこのウィルスが感染しているわけではありませんが、動物に付着したマダニは手でとるのではなく、ノミ・マダニ駆除の滴下剤で駆除するのが安全ですし、効果的です。家族の健康のためにも、犬猫にきちんとノミ・マダニ予防を行ってください。また、犬が感染源となってヒトに媒介するわけではないので、ダニが付着していたからといって犬を過剰に嫌わないようにお願いします。

 

 

ダニ媒介性の感染症はまだあります。ダニの一種であるツツガムシによって媒介されるリケッチアの感染で発症するつつがむし病です。このリケッチアもアナプラズマと同様の偏性細胞寄生細菌です。感染は今から上昇し、11月に最大のピークを迎えます。風土病としてつつがむし病の発生がある地域ではこちらに対する注意も必要です。

 
ちなみに、DFTSもつつがむし病も四類感染症に分類されています。

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しのぎやすい季節になりました。秋には連休も数回あり、紅葉狩りに山中に入る機会があるかもしれません。おしゃれなパンツではなく、足首まで隠れる長丈のズボン、長袖の上着を着用し、頭部には帽子をかぶり身体を保護したうえでお出かけになられることをおすすめいたします。

 

 

今日は感染症についてお話し、また心臓病のお話が延びてしまいました。また次回にします。

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