- 2014-10-12 :
- 食物アレルギー
食物アレルギーについて
食物アレルギーについてはアトピー性皮膚炎のおはなしの8回目(http://heartah.blog34.fc2.com/blog-category-25.html)でも少しお話ししましたが、食物アレルギーはアトピー性皮膚炎によく似た症状が出るのでこの二つを区別するのは難しいです。またアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方がある場合もあるので、なおさら区分けはできにくいのです。
アトピー性皮膚炎は吸入性のアレルゲンによって痒みを主とした皮膚炎をおこします。食物アレルギーはアレルゲンとなる食べ物を摂取して、アトピー性皮膚炎と同じような皮膚症状を表します。それ以外に嘔吐や軟便、下痢などの消化器系症状をあらわすのが違うところかもしれません。しかしアトピー性皮膚炎の犬でも胃腸炎をおこすことはあるので、やはり確実な鑑別はできないことになります。また実際に双方を併発していることも多いですから「きっとうちの子は両方あるに違いないわ」、というかんじで捉えてください。
<食物アレルギーのしくみは?>
私たちヒトはアレルゲンとなっているものを食べたらじきに蕁麻疹(じんましん)が出たり、下痢になったりするのですが、犬の場合は反応がすぐに出ません。それは遅れて反応が出るⅣ型過敏症が主に関与しているせいです。
食物アレルギーでは①即時型であるⅠ型過敏症だけが関わる場合と②遅延型であるⅣ型過敏症だけが関わる場合、③Ⅰ型Ⅳ型両方が関与する場合の3つがあります。食物アレルギーでは食物アレルゲンごとに①か②か③のタイプが異なるとも言われていて、近頃の報告ではⅣ型の関与するものが割合的には多かったという結果がありました。
難しい話になりますが、Ⅰ型過敏症では免疫グロブリンのうちのIgEがその反応に関わっていて、皮膚や消化管組織にいる肥満細胞からヒスタミンを放出させるので、ヒスタミンによる炎症を引き起こさせます。ヒトの蕎麦によるアナフィラキシーショックはとても有名な話です。
一方、Ⅳ型過敏症はTリンパ球の関与したものです。アレルギー炎症を起こした部分に産生される物質を目指して特定の受容体をもつヘルパーT細胞が集まってきます。そしてそこで炎症反応を起こします。詳しい病態は未解明ですが、集まってくる速度、集まった細胞の数、それによって炎症の度合いが違ってくるのかもしれません。
慢性の腸炎では内視鏡の検査と、内視鏡下で採材した小さな組織の病理検査が行われますが、腸の組織にリンパ球が集まってきた様子を見つけることができます。
Ⅳ型は遅延型過敏症ですから、アレルゲンを食べてもすぐに反応が出ません。そのため、好ましくないものが何であるのかが分かりにくく、結果的にアレルゲンとなるものを食べ続けてしまうことになります。
<食物アレルギーではどんな症状が出るのか>
アトピー性皮膚炎だと、名前に「皮膚炎」がつくので皮膚病だという認識をもっていただけますが、食物アレルギーの場合は、蕁麻疹(じんましん)が出るようなことはあってもそのとき限りで、皮膚が痒くなるのは別の病気だと思われてしまうことがあります。また比較的若齢で初回発症することが多いため、常に皮膚のあちこちが赤く飼い主さんからは「こんなもんだろう」と思われていることも珍しくありません。また「病院に来てる時には興奮しているから赤いけれど、家ではそんなに赤くない」と言われる飼い主さんもたくさんいらっしゃいます。
外耳道、耳介部分、足の先端部(指先)、腕の内側、わきのした、後ろ足の内側やお腹の下の方はアトピー性皮膚炎、食物アレルギーともに病変の出やすい場所です。それに加え、目や口、肛門や陰部の周りは食物アレルギーで変化の出やすい場所です。赤く毛が薄く、皮膚が見えやすくなります。
生後1歳にならない頃からすでに痒みが始まっていたとか、季節に関係なくいつも痒がっているとかいうのは食物アレルギーによくあることです。
皮膚症状だけでなく消化器症状もあります。便がゆるいことが多いとか、排便回数が1日に3回くらい、またはそれ以上の日があったりします。たまに嘔吐することもあります。慢性的にゆるい便で、時々は下痢と言えるほどの水分量になってしまうこともあるのに、元気はあり、体重も維持されていて痩せ細ることはありません。
ときに合併症として膵炎や胆管炎を起こし、こんな時は元気はなくなってしまいます。
長くなりましたので、検査と治療については次回に回すことにします。