猫の糖尿病

 11月は糖尿病予防月間。その中でも8日から14日は糖尿病予防週間です。犬や猫でも糖尿病はあります。糖尿病については以前にも6回お話しましたが、猫の糖尿病については犬と異なることもあり、一概に同じように捉えることはできません。「猫の糖尿病でなんだかうまくいかない」ということを中心に追加のお話しをします。

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今月の掲示板です。

猫の糖尿病の原因

糖尿病になる原因は犬と猫とは、もちろん人とも大きく違います。よく言われるのは肥満を危険因子として発生する(ヒトでいうところの)2型糖尿病ですが、猫では慢性膵炎に併発した糖尿病が圧倒的に多いのです。この慢性膵炎を原因とする糖尿病は、膵島(ランゲルハンス島ともいいます。インスリンはここの細胞から分泌されます)が膵炎により徐々に破壊されてインスリン不足になり、糖尿病を発症するというものです。

 

初期管理の問題点・インスリンが効かない?

インスリンが効かない、というのは犬よりも猫で多く聞かれます。併発症に目を向けていなくて、糖尿病の治療だけを行っている場合に多いように思います。

「猫さんの調子が悪い⇒検査を行う⇒糖尿病をにおわす所見が現れる⇒糖尿病に的を絞って診断を行う⇒やっぱり糖尿病だった」

この流れで行くと、最低限の検査で糖尿病の診断はできます。

「こんなに簡単に診断ができてしまった⇒なにか見落としていることがあるかもしれない⇒これもチェックしてみよう⇒あらら、こっちが仕掛けた悪さが先発だった」

という流れで診断をしていくと併発症が見つかる、というものです。

できれば高価な検査はナシでお願いします、とオーナーさんに言われると後者の流れをとることができないので、糖尿病だけを診断するにとどまり、併発症という落とし穴に入ってしまうため結果として期待通りの治療効果が得られない可能性があります。

やはり初診時には併発症も含めたチェックが必要になってきます。

 

それから、猫に犬と同じインスリンを使っても作用時間が短く、効いていないように感じられることがあります。11回なら注射できるけれど2回はできない、としてしまうと24時間のうちインスリンの効果が得られるのがそのうちの数時間だけ、ということになってしまいます。内気な猫さんを入院させ1時間ごとに採血して検査、血糖値の推移をグラフにする(日中曲線を描く)検査を行うのも、それなりに費用がかかるのですが、これもパスしてしまうと、効果のある時間帯、効果が終わってしまった時間帯を知ることができません。本当は短時間だけだけれど効果があったのに、効かないと判断されるような結果になってしまうことがあります。猫さんを預かって時間の経過を追って多数回検査をする方法をとる方が結果的には最適なインスリン薬や注射量を決定するための近道になってきます。

 

猫さんの体型によってもインスリンの効果が期待したように現れないことがあります。インスリンは筋肉や脂肪に作用するため、適度な脂肪組織が必要です。また逆に脂肪がありすぎてもインスリンの吸収が悪く、作用時間も短い傾向にあります。このような特性のためにやむを得ないところもあります。標準体重を維持したいのは、このインスリンが作用する組織を適正量つけたいためでもあります。すぐにしっかりした筋肉組織も欲しいところですが、安定してから追々筋肉をつけていくことにします。

 

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糖尿病についてです。

食餌療法の注意点

さらに猫さんの治療を難しくしているのが食事療法かもしれません。

太っている、もしくは太り気味の糖尿病猫さん向けに高線維食(食後の血糖値が急激に上昇するのを抑える処方食)が第一選択とされてきました。高蛋白質の処方食というのも糖尿病の処方食として推薦されている食事ですが、糖尿病が悪化し痩せてきてしまった猫さんではうまくたんぱく質を利用することができず体重が増加していかないことがあります。もともと猫さんは「これまでに食べたことがある味」「慣れ親しんだ味」に興味を示すのですが、処方食はそれまでの食事と異なるため嗜好の面で猫さんに人気がないことがあります。しかし食べない食事を食べるまで待っていようとか、極度の肥満体形を急激にスリムにしようと極端な減量にチャレンジしようとすると肝リピドーシスを招くのでよくありません。

 

併発症に適応した処方食(膵炎ならば消化器系用のもの)を第一に考え、併発症がない場合は糖尿病用の処方食を選択するようにしますが、どうしても処方食に反応しないのならば今まで通りの食事で、カロリー計算に基づいた量を与えるというのでも良いと思います。標準は理想体重に対し、1kgあたり60~80kcalになるように設定し、これを1日数回に分けて与えるのが食後の血糖値が急激に上がるのを防ぐ食事法になります。

 

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1カ月くらい掲示している予定です。

長期管理上の問題点

これは犬猫共通の注意点になりますが、長く糖尿病の猫さんを管理していると、途中から「管理日誌」をさぼってしまう傾向があります。「昨日も今日も同じだった。はい、〃〃」、と印をつけて終わりにしてしまうのです。またフォローアップの検査も、安定しているし、そんなに頻繁に病院に行かなくても大丈夫、ということで再診間隔が延びてしまうのです。診療費の節約にはなるかもしれませんが、気がついたら安定どころか、悪化していたということになってしまいます。糖尿のコントロールがうまくいかなかったり併発した膵炎のうごきが怪しかったりすると肝リピドーシスを起こしやすく、重症の場合は予後がとても悪くなります。毎日が同じようで変化があるのです。どんなに間隔が開いたとしても6週間くらいでは再診をお願いしたいですし、日々の観察も怠らないようにお願いしたいと思います。

 

 

感染症の心配

これも犬猫共通ですが、感染症を起こしやすいのが糖尿病の特徴です。ブドウ糖は細菌にとっておいしい食糧源。これが尿に含まれているわけですから膀胱に細菌が感染すると瞬く間に繁殖し、細菌性膀胱炎を発症します。また真菌も同様です。再診間隔を短くしておけば膀胱炎が悪化しないうちに発見が可能です。感染症は膀胱だけでなく他の組織でも発生しますが、特に多いのが膀胱炎です。

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ハートニュースも同じ内容です。

腎臓病の併発

猫では高齢になると高い割合で慢性腎臓病が認められるようになります。糖尿病性腎症ではなくて高齢猫によく見られる慢性腎臓病の可能性が高いと思われます。高窒素血症になっていないかどうかは定期のフォローアップ再診でチェックが可能です。もし慢性腎臓病を併発するようになったら、皮下補液をおこない処方食も腎臓病用のものに変更し、あとはいつもの糖尿病の管理を行うだけです。高窒素血症になったから糖尿病性腎症になったと考えるのは早計です。そしてこれで終わりになるわけではありません。諦めないでください。

 

インスリンが不要に?

治療をしているうちに、インスリンが不要になることがあります。糖尿病猫の25%から30%くらいの割合で不要になることがあると言われています。身体のインスリン要求量が減るためと言われています。併発疾患の管理ができたということかもしれません。ですから長く続けていくときに低血糖に注意する必要があります。これには日々の観察と管理日記が役に立ちます。インスリン注射をするとふらふらするというような場合はチェックする必要があります。大変だったインスリン治療生活を卒業できるかもしれません。

 

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ブルーの輪が糖尿病啓発のマークです。

長期管理が必要な慢性疾患

いつもお伝えしていますが、慢性疾患の長期管理は家族の中の特定の方ひとりでできるものではなく、みなさんの協力が必要です。

それから、「この子がいるから旅行に行けない」というお話をお伺いしますが、そういう時こそ動物病院を利用してください。少し息抜きしたい、という時もお手伝いさせていただきます。

先の長いことですから、根を詰めすぎないように、そしてもし手抜きをしてしまったとしても、また軌道修正していけばよいのです。長いマラソンのようなものですからダッシュで走り途中で疲れて走れなくなってしまうよりは、ときに歩いてでも走り続けられる方が良いのです。大変ですがよろしくお願いします。



追加のお話

このほど猫さんのためのインスリン注射ができました。耐性など悩みどころの多かった猫さんに朗報です。
詳しくは病院で。(2016.6書き込み)



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