歯周病とバイオフィルム

歯周病のつづきです。

今日は口腔内細菌のことを中心にお話しします。

 

前回、歯周病というのは歯が汚れる病気ではないことをお話ししました。歯の奥の方、歯根部をしっかりきれいにしないと歯周病を治療したり予防したりすることにはならないので、この部分を処置するためには全身麻酔が不可欠です。それで麻酔下での処置に同意をお願いします、のお話しをいたしました。

 

<前回のおはなしのまとめ>

歯周病は歯を支える組織(歯肉や歯根膜、歯槽骨)が腐って壊れる病気です。目に見える部分の歯の汚れを気にしていらっしゃる方が多いのですが、歯周病は見えている歯(歯冠部)に付いた歯石の程度とは関係なく、見えない部分に発生する病気です。歯石が付いていても歯の根元の部分が健康であれば歯を失うことはありませんが、この根元の部分が歯周病に侵され、病気が進行すると歯を失うことになります。そしてそれは歯が植わっている顎の骨を脆くしていきます。こうした変化をもたらすのは口腔内の細菌が元になっています。

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口腔には細菌が常在しています。歯と歯茎の間の歯肉溝は深くなると歯肉ポケットと呼ばれるようになります。歯肉ポケットの中にも細菌が入ります。しかし健康な状態では噛み方や唾液の分泌による自浄作用や歯肉ポケットの防御システムによって歯周病にはならないように維持されています。歯周病に発展していく過程をお話ししますので、口の中の細菌群のことに注目してください。

 

<歯周病が発生するまでの過程>

1.ペクリルという糖たんぱくの膜で歯は覆われています。

  ペクリルは歯を保護する膜で無菌性です。

2.歯肉の縁に口腔内の善玉菌が付着し、ペクリルを栄養にして増殖します。

歯垢が形成されていきます。

3.歯肉に赤みや腫れがみられるようになります。

これが歯肉炎です。

歯と歯ぐきの間の歯肉溝が開いてきて歯周ポケットができてきます。

4.歯垢に善玉菌の代謝産物を栄養源にする悪玉菌も集まってきます。

歯周ポケットの中にも菌が侵入、増殖し、歯垢が増えてきます。

5.悪玉菌が増えて成熟した歯垢にバイオフィルムが形成されます。

  バイオフィルムが厚くなってきて、石灰質が沈着すると歯石を作るようになります。

バイオフィルムから炎症性物質が放出されます。

6.炎症性物質に反応した細胞が歯周ポケットに集まり、歯槽骨を侵しはじめます。

歯槽骨が壊され、歯がぐらついてきます。

これが歯周病です。

 

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バイオフィルムというのは聞きなれない言葉かもしれません。近年になって、なかなか制御できない細菌感染にはバイオフィルムが関係していることが分かってきました。

 

<バイオフィルムというのは?>

身近なバイオフィルムの存在としては台所の流しにできる「ぬめり」が該当します。微生物が産生するスライムのような菌体外多糖などの物質から形成されていて、強い結合力を持っています。このバイオフィルム内では多数の種類の菌が高密度に共同生活を送っています。空気を好む菌が生息しやすいように外側は網目状の構造になっていて空気を取り入れやすく、また空気を嫌う菌はその影響を受けないように塊状の組織の奥深いところで生息するなど、細菌同士は互いに情報交換し合い、遺伝子交換も行っています。共同生活をすることで1種類の細菌にはない機能を生み出し、さまざまな環境にも生存していけるようになっています。いわば細菌の小宇宙を作りだし、互いに身を守っているわけです。

病原細菌は生体内での免疫反応を逃れないと宿主の体内に入ることはできません。しかし宿主の攻撃に対してはバイオフィルムの表面に膜(細胞外高分子マトリクス)を張り、これを防いでいます。また宿主に攻撃されないように自信の身体をカモフラージュする物質(免疫寛容物質)を分泌し、身体の炎症反応を弱らせ、除去されないようにもしています。実に巧妙な手段をとっています。それでこのようなバイオフィルムが形成されると、細菌が単体で感染した場合に比べ、殺菌剤や抗生剤が効きにくくもなってくるのです。

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ひどい歯周病です。このままの状態で抗生剤を投与しても効果は望めません。

 今日のお話はここまでです。

バイオフィルムが作られると細菌感染の治療は一筋縄ではいかなくなってしまうことがお分かり頂けたかと思います。

この次は、バイオフィルムを撲滅することや形成を予防することについてお話しします。


<おまけのおはなし>


Antibiotic Awareness Day  

11月18日は欧州抗生物質啓発デーです。
細菌は抗菌剤から逃れようと常に耐性菌を作りだしています。
抗菌剤の耐性を防ぐために、私たちは、感染症と診断し、必要な時にだけ、適切な薬剤を処方するよう努めています。
処方された抗菌剤は処方通り飲ませ、良くなったと思っても処方があれば継続して投与してください。同じような症状だからといって、自分の判断で別の犬や猫に飲ませるのはやめてください。















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