猫の尿道閉塞症(UO)

 猫の尿道閉塞症(UO)のおはなし

 

12月に入り急に冷え込んできました。寒くなると尿石症関係の猫さんが増えるというのは過去のこと、と思っていたら今週は尿道閉塞症(UO)の猫さんが来ました。今シーズンは尿道閉塞症の猫さんが例年より多いように感じます。

さて今日は尿道閉塞症(
UO)の、ちょっと新しいことについてお話します。

<物理的な閉塞> 
尿道は、おしっこを貯めている膀胱から出口に至るまでのおしっこの通り道です。ここに結石や尿道栓子が詰まったり(他の原因で狭窄が起こったり、腫瘍ができたり)すると尿道は閉塞します。物理的な閉塞です。従来は雄猫で砂状のストルバイト結石が詰まって尿道閉塞を起こし、急性の腎機能不全に陥ってしまうということがよく知られてきました。そしてこれが猫の下部尿路疾患(FLUTD)の大半を占めていた病態です。


<機械的な閉塞> 
今は少し違っています。まず、下部尿路疾患(FLUTD)の中心は尿道結石症から特発性膀胱炎(FIC)になりました。特発性膀胱炎(FIC)はストレスから発症すると考えられています。特発性膀胱炎(FIC)は無菌性の炎症ですが、尿道閉塞症(UO)も根底には特発性膀胱炎(FIC)があるのだろうと考えられています。特発性膀胱炎のことについてはまた後日お話することにします。


<機械的な閉塞をおこす仕組み>
猫にストレスが加わると交感神経系とストレスのときに分泌されるホルモン系のバランスが崩れ、血流に障害が起こります。そして炎症性の物質が放出され、結果的に下部尿路が腫れたり、平滑筋がピクピクしたりして痛みが出てきます。尿道の炎症です。尿道の筋肉が腫れたり痙攣をおこすと、うまく尿を送り出せません。このとき、たまたま膀胱内に結石や栓子のような尿の流れを悪くし排出が困難な物質があると、結果的に尿道で機械的な閉塞を起こすのではないかというのが、特発性膀胱炎(
FIC)に続発して発症する尿道閉塞症(UO)の発生のしくみです。


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今月は尿石症(ストルバイト結石症)について掲示してあります。 

<尿道閉塞が起こると?>
尿道閉塞が起こって困った事態に陥るのは従来の病態と変わりありません。

膀胱内に尿が貯留し、膀胱の内圧が上がり、膀胱の粘膜は圧迫のために傷つき出血します。血尿です。ひどい場合は尿が「血」そのものに思えるくらいの暗い赤色で、ドロドロした感じになります。膀胱内の高まった圧が尿管から腎臓へ伝わります。腎臓内の糸球体のろ過が低下し、尿毒症を発症します。猫はじっと動かなくなり、吐き気を催し、食欲不振になります。その後続いて嘔吐が始まり、飲むことも食べることもできなくなります。さらに悪化してくるとショック状態で低血圧、低体温になり、そのままでは死に至ることもあるくらい重篤になります。

 
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発生の仕組み
を図でわかりやすくしてあります。


<どんな症状がでる?> 
尿道閉塞症(UO)の初期症状は特発性膀胱炎(FIC)とほとんど変わりありません。尿が出ない様子で何度もトイレに通ったり、鳴きながらトイレでいきんでいたりします。本当に出ていないのか、ぽとぽと垂らしているだけなのか、別の場所で漏れてしまっているのか、少量ずつでも排尿しているのか、しっかり確認することが大切です。多頭飼育でひとつのトイレを共有していたり、外にお気に入りの自然のトイレがあるような場合、確認することは簡単ではないかもしれません。しかし特発性膀胱炎(FIC)は待つことができても、尿道閉塞症(UO)は一刻を争う緊急疾患です。完全閉塞を起こし24時間から48時間を経過すると腎臓は全く機能を果たすことができなくなって、猫は急性腎不全で死んでしまいます。

もしおしっこが出ているのかいないのか分からないという時、オス猫で、嘔吐がある、元気が消失している、食事がとれない、水も飲まない、お腹が痛そう、お腹を触ると嫌がったり怒ったりする、下腹部に硬いものを触れる、等の全身状態が現れていれば急いでください。


IMGP6135.jpg 
食事やその他の注意事項をまとめました。



<動物病院ではどんなことをするの?> 

動物病院では、一般チェックに続いて膀胱に尿が溜まっているのかどうかをレントゲン検査や超音波検査を通して確認します。全身状態の確認のために血液検査をし、尿の状態を知るために尿の検査をします。

膀胱が大きく腫れている時には膀胱に直接針を刺して尿を抜き、膀胱内圧を下げ、腎臓を保護するようにします。その後、物理的な尿道の閉塞を解除することを試みます。外部から圧をかけながら丁寧な操作で特殊な管を挿入します。閉塞が解除できたら皮膚にこの管を縫いつけます。その後、しばらくこの管を通して排尿させます。

血液性状から高カリウム血症などの危険な状態が判明したらこれを是正するための点滴を始めます。

 血管に管が入り点滴が始まり、尿路にも管が通り排尿路が確保されればひと安心、のように思われがちですが、それではまだ危険な状態から脱出できたとは言えません。滞っていた尿が開通すると、そのあと普通以上にたくさんのおしっこが作られるようになり、脱水状態に陥る危険があります。また尿が十分に作られなくなる場合もあります。しばらくは油断のできない状態は続きます。点滴をしながら尿量を監視していきます。

 どうにも閉塞が解除できない場合、または何度も再発が繰り返されるような場合、また先生の方針によって、このような管を通す試みがなされず、肛門の下の部位に新たな尿道口を設ける手術が行われる場合もあります。


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おすすめフードのサンプル、一部ですが掲示しています。



<おうちケアは?>
 全身状態が安定し点滴の管も抜け、排尿の管がなくても自然な状態で十分な排尿があれば、入院治療から家庭でのケアにシフトされます。

必要があれば尿道を弛緩させるお薬や、鎮痛薬、抗生剤などを処方しますので指示通りに服用させてください。

尿道閉塞に結晶尿が関係するかどうか分からない、とする先生もいらっしゃいますが、尿路結石関連の処方食をおすすめしています。この尿結石を溶解させる処方食については後日またお話します。

また飲水量が十分に確保できるよう、水飲み場の整備もお願いします。

ストレスと特発性膀胱炎(FIC)、またそこからの尿道閉塞症(UO)が考えられますから、家庭でも極力ストレスのない生活を送れるよう、同居猫との関係、トイレの問題等、生活環境の見直しをお願いします。生活環境と不適切な排泄についてはこれまで数回にわたりお話してきましたので、そちらも参考になさってください。

 

 

今日のお話はここまでです。

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ジャンル : ペット

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