猫の特発性膀胱炎の治療4

特発性膀胱炎の治療、4つ目は栄養学的側面からの治療についてお話しします。

<栄養学的な治療>

    水分をたくさん摂取すること。

古い研究になりますがMarkwell先生が1999年に行った研究があります。特発性膀胱炎にかかった猫にドライフードと缶詰フードのいずれかを与え、再発の有無を観察したものです。缶詰フードを与えられた猫ではドライフード群に比べ再発が少なかったのです。缶詰フードを与えられた猫の尿比重はドライフード群に比べ低くなっていました。水分含量が多いことは尿の希釈をもたらし、良い結果を生むのだろうと考えられています。

特発性膀胱炎の猫では正常な組成(または異常になっているかもしれません)の尿の成分が高濃度であることが膀胱粘膜を刺激しているのかもしれません。

この研究から、どのような手段であれ、水分をたっぷり摂取することが大切であることがわかっています。

DSC_9188.jpg 

    尿を酸性化する成分を加えること、Mgを制限すること。

閉塞を起こしていない特発性膀胱炎において、これらが必要であるかどうか、今のところまだわかっていないようです。

ただし、特発性膀胱炎のオス猫で尿道閉塞を起こしているもの(尿道栓子)は、マトリックスと結晶の混合性の物質で、尿道栓子の中心に結晶があると考えられています。尿道閉塞のリスクがある猫には結晶形成を防ぐ処方食を食べさせることは理論的ではないでしょうか。

 

    ω3脂肪酸、抗酸化成分が含まれていること。

特発性膀胱炎症状の再発にω3脂肪酸と抗酸化成分が有効かどうかを調べた研究もあります。Lurich先生による研究です。比較的新しいもので、2013年に発表されています。急性の特発性膀胱炎症状を出す1歳から9歳の屋内飼育猫を1年にわたって観察されました。ミネラル分や目標尿pHは同じようになるように作られた食事と、ω3脂肪酸と抗酸化成分がそれにさらに添加された食事を2つのグループに分けて与えてみました。添加された食事を食べた群で再発は少なくなりました。研究にさんかした猫の頭数と述べの日数とで比較すると、添加なし食事群は11.15/1000日で、添加された食事群は1.28/1000日ということですから有意に差があります。これを数値処理すると再発を89%カットということになるそうです。

 DSC_9183.jpg

    ストレスマネージメントとしてのL-トリプトファンとαカソゼピンの添加をすること。

トリプトファンは5-ヒドロキシトリプトファンからセロトニンに変換される脳内幸せ物質であるセロトニンの前駆物質です。脳内におけるセロトニンが増加すると動物はリラックスし、不安が減少し、気分がよくなります。食事由来のL-トリプトファンの増加による猫の不安や不安に関連する行動異常が緩和されたという研究はPereira先生たちが2010年に報告しています。

またミルクの成分であるαカソゼピンは対人恐怖を低減し、人との接触を増加させたという研究があります。Beata先生が2007年に報告したものです。

 

    必要なカロリーを摂取すること。

好きな時に好きなだけ食べる方法は肥満を招きます。肥満は特発性膀胱炎発症の危険因子です。適正量となるよう栄養計算し、それを守って与えることが大切です。

食事方法として自由摂食は特発性膀胱炎の治療として望ましい方法ではありません。

食事の捕り方として集団で食べるのもよくありません。行動学的な側面だけでなく、適正栄養量を摂取するという意味からも好ましくありません。

 

なお、②③④についてはサプリメント的な摂取方法ではなく、これらが添加され整えられた処方食がありますので、ご家庭では水分摂取方法を工夫(①を実施)し、計算された量を与える(⑤)ようにしてくださるだけで大丈夫です。

 以上、特発性膀胱炎の多面的な治療についてお話ししてきました。

多面的であるために、動物病院にお任せしておけば治る、という質の治療ではありません。もちろん、ほかの病気でも飼い主さんの治療参加がなければ治療が成立しないことには違いないのですが、猫の排尿にまつわるいろいろな病気に関しては特にご家族にお願いする部分が多いし、それだけにご負担を強いてしまうところがあると思います。

DSC_9185.jpg




猫の特発性膀胱炎が猫の自由を奪うためにストレスを感じて発生する病気、と考えると少々つらいものがあります。

動物の幸せはどこにあるのだろうか
、とは常に考えている問題です。おそらく、多くの心優しい飼い主さんは「私が飼っていて、この子は幸せだろうか」と悩むこともあるのだろうと思います。飼育するということは宿泊と食事を提供はしますが、好みの生活を犠牲にしているのではないかと思うからです。

 

ただ、このような境遇にうまれ、このような生活をする運命に生まれてきたのです。あなたと一緒に生活するようになった猫には何とも言えないご縁があったのだろうと思います。野生で生活する幸せもあるでしょうが、大事にされるおうち猫としての幸せもまた捨てたものじゃないと感じているのではないでしょうか。共同生活者として私たちが猫にするべきお約束もありますが、猫さんにも守っていただきたいお約束があって当然です。一般には家庭内で生まれる「守ってもらいたい決まりごと」は「しつけ」と言われています。「おしっこはここでしてください」「こちらの家具で爪をとぐのはやめてください」のようなものです。中には本能的な動作もありますから、こちらが譲らなくてはいけない部分があります。しかし全面的に承諾できない部分についてはできるだけ野生性を再現させてやることで回避するしかないのですよね。

まさに、環境エンリッチメントの考えです。

DSC_9184.jpg 

もちろん飼育される動物が飼育する人のために痛みや苦しみをこうむるのは最小限に抑えられなければいけません。

アニマルウェルフェア(Animal welfare:動物の福祉、と訳されています)は猫のストレスを減らすことでもあります。猫の幸福な暮らし(ウェルビーイング:psychological well-being)は単に病気にかかっていないとか衰弱していない、ということではなく、身体的にも精神的にも社会的にもよい状態にあることを健康とします。動物の健康や衛生状態が良いということだけでなく、動物のこころにも配慮した暮らしがwell-beingです。

 

環境に配慮した暮らしは、ストレスを原因とする特発性膀胱炎以外の病気の治療にも、予防にも有効です。

人と猫、猫と猫、同居する他の動物と猫。互いがより良い関係で毎日過ごせると良いですね。

特発性膀胱炎についてのお話は今回で終了です。

 

 

 

    
スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード