骨関節症・4

 骨関節症の内科的管理についてのおはなし、続きです。

 

 

<体重管理>

実はこれが一番有効な治療になるのです。肥満または肥満気味にある場合は適正体重までウェイトコントロールしていきます。QOLを維持するためにとても重要なことです。

ご家庭で体重測定をするのが難しい場合は、ボディコンディショニングスコア(BCS)で判断していきます。犬を立たせて真上から見たときに、適度なウエストのくびれがあることや、肋骨や椎骨の突起を触れる要領など、病院で判断する目安をお伝えしますので、それを念頭に置いてもらうと良いと思います。もちろん、定期的に体重測定にご来院くださるともっと良いです。

疼痛がひどい時は少々運動制限を行いますし、痛みを伴ったまま「運動して痩せましょう」というのも良くない方法です。具体的には出ていくカロリーを増やすのではなく、入ってくるカロリー(食事によるもの)を抑えていくのが有効です。

では肥満のときの食事に関するお約束をもう一度おさらいです。

①ヒトの食事は与えません。

②おやつも与えません。

③フードの量は抑えめ、75%程度に絞りましょう。

④食事は決めた時間に与え30分で残っていても取り上げます。

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<運動量と運動の方法>

ボールを取ってくる遊びやフリスビーなど、ジャンプする遊びは禁止です。関節にとって低刺激な運動が良いのです。平坦なところをゆっくり歩くことから始めます。水中を歩く、または水泳をするのは浮力によって自重が軽くなるため、とても良い運動です。小型犬で家に子供用のプールがあって、夏季でしたら、ぜひともお願いしたいと思います。水中ではありませんが、丈の高い草の間や砂浜などは歩きにくいことも手伝って、慎重に足高に歩くことになるため水中ウォーキングの代用にすることができます。アレルギーの無い犬で、陽気の悪くない時でしたら良いと思います。

屋内でしたら、フローリングなどの床にじゅうたんやカーペットなどを敷いて滑りにくくしてもらうと良いと思います。

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<理学療法・リハビリテーション>

「歩く」という運動は骨や関節だけでなく筋肉や靱帯によっても支えられています。筋肉が減ってくると関節にかかる負担が増えます。丈夫な筋肉を作ること、筋肉量を増やすこと、筋肉の衰えを最小限に食い止めることは歩行にとって大切なことです。

理学療法は専門的な知識のもとで行われる治療法です。

水中ウォークやバランスボールによる運動、負荷運動としての傾斜や階段での運動があります。

 

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<痛みを鎮める薬>

非ステロイド性の消炎鎮痛薬NSAIDsが中心になります。中でもCOX2選択性鎮痛薬は副作用も少なく長期に連用しても安心なお薬です。

しかし目標は、鎮痛薬がなくても大丈夫な生活になります。体重管理や運動療法、構造修飾薬などで管理できるように持っていきたいと思います。

 

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<骨関節症の構造変化を修飾する薬>

骨関節症の構造変化を修飾する薬はDMOADsDisease modifying osteoarthritis drugs)といわれているものです。軟骨保護剤として骨関節症の代替的治療、また補助的な治療としてポピュラーです。関節軟骨を保存するまたは回復させる作用を期待して使用しています。軟骨細胞や滑膜細胞の健康と代謝に有益な効果があるとされています。

注射用薬剤としてペントサン多硫酸があります。ヒアルロン酸の合成を増加させる効果、関節軟骨におけるプロテオグリカンの喪失を減少させる効果などが認められています。週に1回、4週ほど連続して使う方法があります。残念なことにNSAIDsとの併用はおすすめではありません。

栄養補助食品としてはグリコサミノグリカン(GAGs)の前駆物質であるグルコサミンと、コンドロイチン硫酸の合剤が主流です。緑イ貝(グリーンリップド・マッセル:GLM)はこれらGAGsのほかにアミノ酸、ω3脂肪酸、各種ビタミン類、ミネラル類を含んでいるものです。緑イ貝は炎症を減少させ、軟骨の破壊を制限し、軟骨の再生を支持して、骨関節症の症状を軽減、改善させるといわれています。そのほか、多くの栄養補助食品をサプリメントとして用いることができます。

また処方食で関節症に特化したものがあります。体重管理のため低カロリーで、関節に効果のある栄養補助食品がすでに添加してあります。

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さて、飼い主さんから聞かれるご質問が二つあります。

<犬は足が痛いフリをするのだろうか>

本当は痛くないけれども足を挙げて気を引こうとしているだけ、と考えておられる飼い主さんがいらっしゃいます。病院に来て緊張のあまり痛みを強く訴えない場合があるとしても、家族の前で「痛いことを装う」ことはないと思います。犬が跛行を示しているのであればおそらく痛みがあるのだろうと思います。

 

<若いからサプリメントは不要だろうか>

遺伝学的な関節の疾患は最終的に骨関節症に発展するものです。遺伝的な関節異常は早期のうちから関節をいたわることが大切です。高齢ではないから関節のためのサプリメントはまだ早すぎる、ということはありません。若いころから投与していくと関節の障害を遅らせることができます。

 

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<おわりに>

動物のQOLだけでなく、一緒に生活する家族のQOLを高く維持するためにも、年老いた動物が自力歩行し、排泄に介助を必要としないことは大変重要なことです。

手を加える必要はないけれどひとりでできることを監視する「見守り」は、自力の運動を継続することにつながります。あまり早期のうちに「痛そうだから」と歩行させるのをやめて「抱っこの散歩」に切り替えると、残る能力を活用できません。ゆっくりでも散歩をさせてやりましょう。動きやすいように、食事の台を高くしたり生活圏内をバリアフリーにもっていくなどは高齢動物にやさしい配慮です。

また人でいう「要支援」の段階になったころには、さらにもうひと手間の補助が出てきます。散歩の際、腹部を支える補助服を着用させ、背中の上で保持してやると体重の軽減により犬は歩きやすくなります。若いころと同じような運動パターンを課すのは高齢動物にとって苦痛です。距離は短く、歩行はゆっくりと、きつい坂や足元の悪い道を避けるなどのいたわりをお願いしたいと思います。

いよいよ「要介護」になってきますと、食事や排泄に手を貸さねばならず、健康面だけでなく衛生面で相当な労力と時間が必要です。また介護用品等にかかる経済的負担も出てきます。

高齢動物には最後まで自力で歩行してもらえるよう、骨関節症の管理は軽度のうちから対処しておくのが、飼い主さんのQOLの向上にもつながります。

 

今回で骨関節症のお話はおしまいです。

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