体液について

熱中症についてのお話、3回目です。


「熱中症」は「体液の不足」と「体温上昇」が原因で発生するトラブルであるとお伝えしました。前回までは主に「体温上昇」に視点を置いたお話しをしてきました。熱中症は「高体温症」だけでなく、脱水症とも密接な関連があります。今回からは「体液」に視点を置いたお話しをしていきます。

「脱水があります」というと、「あんなにお水を飲んでいたのに脱水になるの?」というご質問を受けることがあります。脱水は単純な「水」ではなく、からだを構成する「体液」が不足するものですから、「水分」だけでなく体液を構成する「電解質」が不足しても脱水になります。


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<体液というのは>

人と同じように健康な成犬もからだの60%(体重比)は水でできています。年齢や性別、栄養状態により少し変動があり、若齢動物では70%から80%にも上りますが、老齢動物では50%から55%です。

この水は「水分」と「電解質」からできていて「体液」と呼ばれています。

①細胞の中、

②細胞と細胞の間(組織間)、

③血管の中(血液成分として)に、

およそ
831の比率で入っています。

60×1/831)=5。からだの約5%が血液の中の水分になっています。

細胞の中の水分(①)は細胞内液(Intracellular fluid:ICF)、

細胞と細胞の間や血管の中の水分(②+③)は細胞外液(
Extracellular fluid:ECF)と

呼ばれています。細胞内液と細胞外液では、中に含まれる溶質の濃度が大きく異なります。

 

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<電解質というのは>

電解質というのはナトリウム(Na)やカリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などで、イオンになって体液に溶け込んでいます。

細胞内液(①)には高濃度のナトリウム、カルシウムとごくわずかなカリウム、そのほか重炭酸塩、リン酸塩、たんぱく質などが含まれています。

 細胞外液(②+③)ではカリウム、リン酸塩、マグネシウムが主要な電解質になっています。

血液検査では血管内の血漿(③)中に含まれる(細胞外液の)電解質を調べています。

電解質は陽イオンと陰イオンがありますが、細胞膜を通して細胞の中に特定の物質が入り込んだり出ていったりしてその細胞が活躍するので、大切なのです。心筋の活動をおこしているのもイオンの働きです。

 

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<体液は平衡に保たれています>

飲水ができる状態の健康動物では体液の平衡が保たれています。つまり、入ってくる水の量と出ていく水の量のバランスがとれています。

からだにとっての主要な水の供給源は飲み水と摂取する食物に含まれている水分ですが、そのほかに代謝からも水が産生されています。(1Kcalの熱量が産生されるとき0.1gの水ができます。)

電解質のバランス(電解質の一部が増加したり減少したりすること)も、酸塩基バランス(からだが酸性になったりアルカリ性になったりすること)も均衡がとれています。おもに腎臓がそのような仕事をになっています。

 

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<脱水がおこるとき>

脱水している時、これは①水分摂取量が減少しているか、②水分喪失が増加しているかが原因です。その他に③腹水などのように水分が本来の場所以外のところに入っていき(サードスペースへの喪失といいます)機能的に利用できなくなっていることもあります。

①水分摂取量が減るのは、何か基礎疾患があって食欲や飲水欲が低下している(もしくは廃絶している)ときや、飲みたいなと思ったのに水が近くになくて飲めなかったようなときに起こります。

②水は尿、糞便、唾液、呼吸、汗、じくじくしている傷口などから体外へ失われていきます。尿路からたくさん水分が出ていく病気の代表的なものは腎疾患や糖尿病、クッシング症候群などで、これらの病気をもつ場合は脱水へのリスクが高いということになります。体外に水分が失われていくもう一つの重要な経路は消化管です。健康であれば糞便中に排泄される水分はごくわずかですが、嘔吐や下痢をした場合は、水分喪失を考えなくてはならないほどの(有意な)量の水分が失われてしまいます。(また嘔吐や下痢になっている時は水分の摂取量も減少しています。)

少々詳しいお話しになりますが、胃からの嘔吐がある場合失われるのは水分だけでなく、HClNaKもあり、十二指腸からの逆流もある場合は、HClNaKのほかHCO3も喪失するので、脱水だけでなくからだが酸性に傾く「代謝性アシドーシス」も起こしやすくなっています。

 

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<夏の時期に多い脱水>

なんとなく食欲がない、食事の摂取量が減っている、時間はかかるけれど、まぁなんとかいつもの量は食べられたかなぁ、というような場合は①の水分摂取量の低下につながります。

気温が高いと知らず知らずのうちに唾液や呼吸、汗などで水分が失われていく「不感蒸泄」も盛んになります。意識しないうちに失われていく水分、これが②にあたります。

普段は入る水と出ていく水のバランスは取れていますが、気温の高いところに長時間居たり、暑いときに激しい運動をしたり、体調を崩して嘔吐や下痢になったりすると失われる水分が増えます。摂取水分量がこれに見合う量にならないと水分のバランスが崩れ脱水になります。

 

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<体液は働き者>

体液はその中に栄養素や老廃物、酸素を溶かし、全身をくまなく回っていき、必要なものを必要なところに届け、不要なものを排泄できるところに届けています。そのあいだに体温調節も行っていますし、電解質や酸アルカリなど、体の内部の環境が一定に保たれるようにしています。「ホメオスタシス」(恒常性)です。

水の物理的な特徴と、それによる利点を挙げてみます。驚くほどの機能を持っていることが分かります。

①溶媒能が大きい(多くの物質を溶かすことができる)

②電媒係数が高い(多くの電解質のイオン化やその反応を発生しやすい)

③表面張力が高い(小さな隙間から入り込み細胞の奥まで届くことができる)

④比熱が大きい(体温が下がりにくく保持しやすい)

⑤熱伝導率が大きい(局所だけが高温になるのを防ぐことができる)

⑥気化潜熱が大きい(不感蒸泄によって熱を放散するのに都合がいい)

⑦融解潜熱が大きい(凍結からからだを守っている)

⑧短波長光線の透過性がある(紫外線を良く通してビタミンDを産生するのに適している)

 

まさかの物理学を持ち込みました。

からだの中の水がとても大切なものであること、有益な仕事をしているということをお伝えしたかったのです。今日のお話はつまらなかったですね。次回は脱水についてお話ししていこうと思います。

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