脱水と熱中症・熱中症予防

「脱水」が「水」だけが不足しているのではなくて「電解質」も不足している状態なのだというのは、もうお分かり頂いていると思います。

脱水するとからだはどのようになるのか、そこからどうして「熱中症」につながるのかお話しします。

 

 <脱水すると血液の量が減ります>

血管の中をめぐる水分の減少は血圧の低下につながります。すると肝臓や消化器系組織(胃腸など)をめぐる血液量が減ります。必要な栄養素を吸収する力に欠けるだけでなく、食欲不振になります。脳に行く血液量が減ると考えることをしたくなくなります。腎臓をめぐる血液が減ると老廃物の排泄が滞ります。同時に電解質も減りバランスが崩れると神経や筋肉に影響が出てきます。やる気が起こらない脱力につながります。

これらをそのまま自分のからだに置き換えると、「食欲がなくて、なんだか疲れたような感じ」です。「夏バテ」かしら、と思う症状に似ています。

 

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<脱水と症状>

「脱水していますね」、と私たちがお伝えするとき、動物の体にどのような変化があるかというと、

・粘膜が乾燥している

・皮膚をつまんで離すときにテント状になって残る

・目がくぼんで眼窩にすきまができる

・体重が減っている

・脈が早い、脈が弱い

などです。

清書では5%脱水の時はこんな風で、6~8%の時はこんな風、10~12%ではこんなところまで、というように大まかな区分ですが症状を分けており、体重の10%が失われるほどの重度脱水ではショック状態になりますが、軽度の脱水では見た目には分からないくらいのものです。

実際に「脱水」していますよ、と診断した犬の飼い主さんが、こんな症状が出ているので病院にきましたという「主訴」では

・食欲不振

・嘔吐

・下痢

・元気消失

・弱っている

というもので、「脱水」だからこんな症状が出る、といった特徴的な症状はありません。

 

このようなものですから飼い主さんからみてはっきり「脱水」と見てとれる症状がないだけでなく、ごく軽度の脱水では症状が表れにくいということもあるのではないかと思います。これを「かくれ脱水」と言うことにしています。からだの中の水はとても大切で、多くの重要な仕事をしているので、傍目には分かりにくくても不足しているとからだは不調に陥るのです。そしてこの「かくれ脱水」こそが「夏バテ」であって、「脱水症と熱中症の始まり」だと思うのです。

 

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<かくれ脱水はすでに始まっている>

「具合が悪いです」といって犬が連れてこられる時、ほんとうは犬のからだの中で調子が悪いのが始まってすでに2~3日は経過しているのかもしれないと思います。

暑さの始まりのころは消化器症状を訴えてくる患者さんが多いと以前お話ししましたが、気温の上昇などで不感蒸泄が増えると、食欲も減退し、体液が減少します。軽い脱水です。それから消化管への血流が減少するので消化や吸収がうまくいかなくなり、嘔吐や下痢などの症状を出すことになります。この結果、水分の喪失に拍車がかかり、電解質も失い「脱水症」になってしまいます。

暑さの始まりのころは晴れた日中は暑いですが、夜は涼しいので寝苦しいこともありません。このような気候だと、日中仕事で家を留守にしている飼い主さんには、犬の昼間の様子が分かりにくいだろうと思います。食欲不振や嘔吐、下痢になってはじめて身体の不調に気づくのではないかと思います。

屋外で土の上に居る犬の場合では、飲んだ水を嘔吐していても浸みこみ乾燥してしまい吐物の跡が残らなければ夕方帰宅された飼い主さんは気づくことができません。嘔吐では「水分」と「電解質」を喪失しているわけですが、その後犬が水を飲んで、なんとかからだに収まったとしても、補われるのは「水分」だけで「電解質」は補われませんから、専門的にいうところの「低調性脱水」を起こしていることになります。

 

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<熱中症を起こしやすい犬>

体温上昇と脱水を起こしやすいのが熱中症のリスクの高い犬です。

1回目のお話で熱射病になりやすい犬についてお話ししました。同じことになりますが再度載せておきます。

熱射病は効果的な呼吸ができない犬に多く発生します。

ブルドックやパグ、ペキニーズなどの短頭犬種が起こしやすいのはご存知かと思いますが、そのほか、肥満犬や黒い被毛の犬、年齢的には幼犬や老齢犬で危険は高いです。呼吸器(気管や肺)、心臓に病気を持っている犬、高熱になる病気や全身性の発作を起こす病気を持っている犬、過去に熱射病の病歴がある犬でもリスクが高いです。

このほか体毛が冬向き(寒冷地が産地になっている犬種)の犬もリスクは高くなります。アンダーコートが密でグルーミング不足になっていると冬の毛布を身にまとったままの状態で夏を迎えることになるので、体温を体内にこもらせやすいのです。シベリアンハスキーやチャウチャウは珍しい犬種になってきましたが、柴犬も彼らと同様、アンダーコートがみっちり生えているのでハイリスクになります。

人と同じように高齢の犬も起こしやすくなっています。腎機能をはじめ様々なからだを維持するための機能が衰えているので体調を崩しやすいためです。また筋肉は水分を多く含む場所ですが、筋肉量が低下している老犬は常の水分保持量があまりありません。心臓病の犬では、溜まりやすくなった水分を排泄しやすくする薬(利尿薬)を処方されている犬がいるかもしれません。これらは尿量が増えるので体液を失い易くなっています。腎機能の低下が傍からは明らかになっていない時(代償期)も高リスクです。

幼齢の犬も脱水を起こしやすく注意が必要です。成犬に比べ体液量が多いのですが、不感蒸泄が多く、腎機能が未発達です。脱水症に対する予備能力も低く、気付くのが遅れると命取りになりかねません。

しかし、どの年齢層のどのような犬種のいぬでも、飼育環境が屋外だろうが屋内だろうが熱中症に罹患します。うちの犬はハイリスクにリストアップされていないから大丈夫、ということはありません。

 

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<脱水を守るために体熱が上昇する>

今回、脱水症を中心にお話ししていますが、「高熱」にやられるのが「熱射病」で、「水不足」にやられるのが「熱中症」みたいな感じになっています。

ちがいますよね。「熱中症」は「高熱と脱水」両方でおかしくなります。

面白くも無かった3回目の「水」のお話に戻ります。水は体温調整の仕事もしています。からだじゅうをめぐる体液は深部の熱い熱を、血液が体表面を通過するときに血管を太くして外に逃がそうとします。皮膚の表面に温度の上がった血液を集めているかんじです。それでも体温と外気温の温度差がほとんどないとここからの熱の放散はできなくなります。

パンティング呼吸でも体内の熱を放散しています。しかし湿った呼吸や涎、不感蒸泄の増加で徐々に水分が減り、脱水になります。一定以上の体液が奪われるとからだはそれ以上の体液喪失にブレーキをかけます。そのため、初めは有効に働いていた体熱放散システムも水分保持のためにやむなく停止してしまいます。それでひとたび脱水のレベルが高くなるとあとは「汗もかいていないのにからだがぐんぐん熱くなっていく」ことになるのです。そして「熱中症」はそのまま重症化していきます。

 

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<初期の熱中症を見逃さない>

長くなりました。熱中症の実態、お分かりいただけましたでしょうか。

結局、「熱中症」は「夏バテ」とも言える「軽い脱水症」から始まります。

熱中症の予防というと、

①熱い車内に放置しない

②暑い時間帯の散歩を避ける

③屋外犬は日陰で風通しの良いところに犬舎を動かす

など、犬の環境に重点を置いた注意事項ばかりが紹介されていると思います。

「かくれ脱水」が「熱中症の始まり」という観点に着目すると、生体そのものの状態から予防できることは何か、と考えられます。すると、初期の小さなサインを見逃さず、脱水を補正していくことが予防になることが分かります。

①なんだか機嫌が悪いみたい

②なんとなく元気がないみたい

③食事が進まない、全量食べるのに時間がかかる

くらいの段階で、動物病院の門をたたき、早めに対処するのが熱中症を重症化させない秘訣だと思います。

 

 

長くなりました。

今回で熱中症のお話はおしまいです。

どうぞ、くれぐれも重度の熱中症を起こさないで健やかに夏を超すことができますように。

 
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