免疫介在性溶血性貧血

 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)についておはなしします。

 

免疫介在性血小板減少症(IMTP)のところで免疫介在性溶血性貧血(IMHA)についてタイトルだけ書いておきましたが、こちらの病気について訪ねてきてくださる方が多いようです。なかなか手ごわい病気なのでどうしても悲観的になりがちですが、今発症している事態がなんとか鎮まってくれないか、なにか良い手だてはないものか、というお気持ちが伝わってきます。

 

さて、免疫介在性溶血性貧血(Immune-mediated hemolytic anemia IMHA)は溶血性貧血を起こす病気のうちで代表的なものです。赤血球表面にある自己抗原、薬物抗原、微生物抗原などに抗体が付着して、赤血球が破壊される病気です。

以前は溶血性貧血というと、その代表格は「玉ねぎ中毒」でしたが、昨今、皆さんが「玉ねぎ中毒」について良く知ってくださっているので、煮込んだエキスも含めてネギ類を食べてしまうことはほとんど見かけなくなりました。「免疫介在性溶血性貧血」は以前「自己免疫性溶血性貧血」といっていました。ほとんどは自己免疫によるものですから、同じもの、という認識でも良いと思います。

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<発症しやすい犬がいますか?>

年齢的には中年層。ほとんどは2歳から8歳です。

オスよりもメスの方が3倍も発生頻度が高いようです。

コッカースパニエル、ミニチュアプードル、イングリッシュスプリンガースパニエルは好発品種です。

たいていは特発性で、ときどきワクチンの後に発症したということがありますが、ほんとうにワクチンが誘発原因になっているのかどうかは議論があるところです。

あまり多くはありませんが、ウィルスや寄生虫の感染、腫瘍などに併発して発生することがあります。

春から初夏にかけての発生が多い、と私たちの間では認識しています。

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<この病気になるとどんなふうになりますか?>

急に元気がなくなって、動くのを嫌がり、寝ていることが多くなります。だるっとしています。

急な変化がポイントです。

食欲も無くなり、好きなものだけ食べるか、もしくは一切食べなくなります。

発熱があります。

嘔吐することがあります。

おしっこが濃いオレンジ色とかうすくち醤油のような色、コーヒー色をすることもあります。

明らかな黄疸は目をみると分かりやすいと思います。白目の部分が黄ばんできます。

貧血が進んでいる病期では唇や耳介の皮膚が蒼白です。

いつもより呼吸が早いかもしれません。注意深く観察するとそんなのも分かるかと思います。

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<病院で行う検査は?>

血液検査が中心です。

いつも通りの血球検査を行います。

赤血球数(RBC)が少なく、ヘモグロビン値(Hb)が低く、赤血球容積比(ヘマトクリット値:HCTHt)も低くなっています。貧血です。

日常はあまり気にしない平均赤血球容積(MCV)や平均赤血球血色素濃度(MCHC)の計算値のチェックにも気を払います。一般にMCVが高くてMCHCが低い「大球性低色素性貧血」で、これは再生性貧血に分類されます。ただしMCVMCHCも計算によって導き出される数値ですから、計算の基本になる数値(RBCHbHCT)にエラーがあると正しい数値は出てきません。

網赤血球数(RETIC)は再生度の目安になるものです。

さらに白血球(WBC)系の検査(数のカウントや大まかな白血球分類)、血小板(PLT)数にも目を通します。白血球は反応性に増加していることが多いです。内訳は好中球の増加によるところが多いです。血管内で血栓が作られている心配があり、その場合血小板数は低下しています。

ここまでは自動血球計算機によりカウントまたは計算されて数値が表示されます。

 

血球を染色して顕微鏡で観察する検査(血液トマツ検査)を行います。

赤血球の形状を確認します。大きさに違いが出たり(大小不同)、染まり方にムラのある赤血球(多染性)がみられたり、本来は末梢血中に出現しないはずの若々しい赤血球(赤芽球)が数多く出現していたりします。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に併発して免疫介在性血小板減少症(IMTP)(特発性血小板減少性紫斑症:ITPと呼ばれることもあるかもしれません)を発症したエバンス症候群もあります。血小板数が減少しているのが凝集のため(血栓症)なのか、実数が少ない(IMTPを併発)のかは機械では判断がつきませんから、血液トマツ検査で鑑別を行います。

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血清生化学検査は肝酵素値やビリルビン値など通常のもののほか、C反応性蛋白(CRP)値も見ていきます。

 

血液を生理食塩液で薄めて赤血球がぎゅっと集まるのを観察する検査(凝集試験)までが院内で行える検査です。

 

外部の検査機関に委託する検査があります。

特殊な免疫に関係する検査(クームス試験)です。これは赤血球の表面についている抗体を調べる検査ですが、抗体が輸送の途中で剥がれてしまうこともあり、必ずしも陽性の結果に出てこないこともあります。そのためこの検査の結果が陰性であっても免疫系の疾患である可能性を否定することができません。

血液凝固系検査はプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリン/

フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products : FDP)、Dダイマー(D dimer)、アンチトロンビン活性(AT)などを調べてもらいます。血栓ができていないか、血管内凝固(DIC)が始まっていないかをみるためです。すべての検査項目を網羅することができないこともあります。

 

尿検査も行います。ビリルビン代謝の様子や腎機能をみるためです。

そのほかX線や超音波の検査で脾臓や肝臓の大きさや内部の様子、腹水の有無などを確認したりします。

 

長くなりました。治療については次回に回します。

 

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