腎臓病と貧血、栄養

 貧血関連のお話が続きました。今回も貧血のお話をします。猫の慢性腎臓病のときにも貧血がおこります。

 

 

「貧血」というのは血液中のヘモグロビン量が少なくなった状態のことをいいます。病気の名前ではありません。

ヘモグロビンはからだじゅうの組織に酸素を運んでいます。貧血になるとあちこちの組織に酸素が十分に届かなくなるため、これによっていろいろな症状が出てきます。心臓のドキドキが速くなりますし、呼吸も速くなって息が切れるようなかんじにもなります。

猫の慢性腎臓病に関連して腎性貧血というのがあります。腎臓病では検査値として尿素窒素(BUN)やクレアチニン(CRECre)が話題に上りますが、クレアチニン値とヘマトクリット値の間には逆の相関関係があります。腎臓が悪くなるにつれて、尿毒症指数ともいえるクレアチニン値(CRECre)は上昇しますが、貧血のバロメーターとなる赤血球容積比(ヘマトクリット値:HCTHt。病院によってはPCV値として検査報告用紙に記されている場合もあるかもしれません。厳密な意味では違いはありますが、ほぼ同じとしてもらってよいかと思います)は低下していきます。

 IMGP7100.jpg

 

<慢性腎臓病と貧血>

貧血は慢性腎臓病に対してどのような意味合いがあるのでしょうか。

貧血になった動物では、食欲不振や弱弱しい感じ、疲れやすさ、気力の無さ、寒さに対する抵抗性、無関心といったマイナス要素の臨床症状がみられます。貧血を改善させるとこれらの好ましくない臨床症状が上向いてきて、猫のQOLがよくなります。貧血を見つけ、これを改善させることは慢性腎臓病の猫をよりよい状態で長生きさせることになります。

 

 

<貧血の原因は?>

1、エリスロポエチン不足。

慢性腎臓病における貧血の原因は?というと、すぐに「エリスロポエチンが足りなくなっているから」という答えが返って来るくらいに、エリスロポエチンの名前は良く知っていただけるようになりました。

腎臓では血液をつくるために必要なホルモンである「エリスロポエチン」がつくられ分泌されています。腎臓病が進んでいくとエリスロポエチンの分泌量が減ってしまい、十分な赤血球をつくることができなくなります。

2、尿毒症の場合に起こる体の変化。

高窒素血症(BUN値やCRE値が上昇している状態)があるとエリスロポエチンの働きが鈍くなってしまいます。また高窒素血症では赤血球の寿命が短くなってしまいます。

3、じわじわ出血。

 腎臓病では胃腸などの消化管から慢性的な出血があり、少しずつ血液を喪失していることがあります。

4、栄養不良。

 慢性腎臓病では食欲が低下し、好みの食事が変化したり、絶対的な分量を摂取できなくなるため、鉄欠乏の状態になってしまいます。

IMGP7101.jpg 

 

<貧血の改善策>

1、エリスロポエチンを注射で補います。

 不足したエリスロポエチンを補う注射をします。エリスロポエチン製剤にはエポジンやエスポーがあります。ダルベポエチンは長時間作用するタイプの製剤です。

2、鉄剤を補います。

 鉄分が不足しているとエリスロポエチンの効き目が悪くなりますから、鉄剤を内服します。うまく飲めない時には注射で補うこともできます。

3、消化管出血を抑えます。

 高ガストリン血症になると胃酸過多になり胃からの出血がおこります。粘膜保護剤や胃酸分泌を抑えるお薬を内服します。

4、高窒素血症をコントロールします。

 高窒素血症があると食欲の低下や吐き気、嘔吐、尿毒症性口内炎などが起こります。高窒素血症をコントロールし、体の中の食べる環境を整えてやります。

 IMGP7123.jpg

 

<貧血を予防するために>

慢性腎臓病は進行性の病気ですが、病気の進行は栄養療法や検査結果に基づいた適切な治療によりコントロールすることができます。定期的に同じ条件下で体重測定をすると大まかな栄養状態を把握することができます。日常の食事では質と量に気をつけます。基本はきっちりと食べられるように管理すること。食欲不振の場合には早期に対応することです。また食欲が出ない場合でも、肉や魚の多い食事に偏りすぎない、リンの高い牛乳などの食品を避ける、高血圧コントロールのため塩分を含む食品を与えないなどにも気をつけていただけるといいと思います。

腎性貧血は食事療法では治らない貧血に分類されていますが、エリスロポエチン療法を実施する場合に、鉄分の補給は治療成果を上げるために必要です。

 IMGP7137.jpg

 

<慢性腎臓病の栄養>

腎臓病用の特別療法食は栄養を維持(一般食から変更された場合は栄養を改善)するのに有効です。腎臓病用の処方食は単に「たんぱく質を制限してある食事」ではありません。

①たんぱく質を制限

②リンやナトリウムを制限

③ビタミンBを強化

④水様性食物繊維を強化

⑤カロリー密度を増加

⑥酸塩基平衡に関して中性化させる効果

⑦ω3脂肪酸の補給

⑧抗酸化薬の追加

などがあります。メーカーによっては

⑨カリウムの補充

のある処方食もあります。

ですから、「たんぱく質が少ない」という基準だけで処方食ではない食事、例えば「シニア食」のようなものを選んでも腎臓に良い効果は得られません。

 IMGP7138.jpg

腎臓のための処方食をすぐに受け入れてくれる猫とそうでない猫がいます。食欲不振その他で診察を受け腎臓病と分かった当日というのは、おそらく高窒素血症もあり、その日から変更された食事を受け入れることはごくまれなことです。治療が入って電解質バランスがとれ、脱水などの症状も改善されてくると猫自身も気分がよくなりそれまでの食事も受け入れられるくらいに回復してきます。これがスタートどきです。気分の悪いときに与えられた食事は「気分が悪い」というマイナスの記憶と重なり体調がよくなっても受け入れられないことがあるからです。スタートするときは、両方をミックスして新しい食事の割合を少しずつ増やしていく方法と、それまでの食事と処方食の両方を食べられるように別々の食器で用意しておき、徐々に以前の食事量を減らし新しい食事の割合を増やしていく方法とがあります。一般に7日から10日もあれば成功しますが、神経質な猫の場合は過渡期に数週間が必要なこともあります。

 

ひとたび慢性腎臓病という診断を受けても、猫の慢性腎臓病の進行は一部の猫を除いて、とてもゆっくりです。コンディションさえ整えてやると、良い状態で何カ月も何年も安定した経過をすごすことができます。栄養学的な調整は病気が分かったときから始めるのが理想的です。その後は病態の変化により変化する個々の要求に応じて変えていくと良いかと思います。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード