アレルゲン特異的IgE検査

 暑さ寒さも彼岸まで、っていいますね。

暑さが遠のき、空にも植物にも秋の気配が感じられるようになりました。多くのアトピー性皮膚炎の犬たちも、春の彼岸から秋の彼岸ころまでが痒みの強くなる季節で、お彼岸を過ぎるとすーっと痒さが遠のいていくようです。締めくくりの秋に悪化する子たちにはキク科植物とイネ科植物、夏に繁殖したダニの死骸がつらさを引き起こさせることが多いようです。

 

さて、アトピー性皮膚炎と診断した犬たちに(猫も同じですが)、次のステップに進むため、アレルギーの検査をおすすめしています。今日はこのアレルギー検査についてお話をしようと思います。

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今月の掲示板はアトピー性皮膚炎の検査のご紹介です。
 

 

<診断があって検査が付随する>

おおよそ検査というものは診断の道筋をつけるために行われるものですが、この検査は先に診断があって、そのあとの検査になります。

痒みを伴う皮膚炎には

①細菌や寄生虫の感染に伴った皮膚炎

②アトピー性皮膚炎(犬アトピー性皮膚炎:Canine atopic dermatitis:CAD

③食物有害反応(Adverse food reactions : AFR

があります。

食物有害反応は、別の動物が食べても害のない食物(や添加物)をその動物が食べたときに、嘔吐や下痢をする、便の回数が多くなる、皮疹(じんましんのような)が出るなどの困った症状を出すもので、免疫が関係しているもの、いないものがあります。免疫と関係がないものは食物不耐症と呼ばれますが、免疫と関連があるものは過敏症と呼ばれます。食物不耐症では皮膚の痒み反応は起こりません。「食物過敏症」は従来「食物アレルギー」と呼ばれていたものと同じ、と考えていただいて結構です。

アトピー性皮膚炎と食物有害反応の皮膚炎は臨床症状がそっくりで見分けはつきません。また食物有害反応があるとアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があるといわれていますが、病態は解明されていないため今はまだ分からない段階です。 

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アレルゲン特異的IgE検査



<アトピー性皮膚炎の診断>

国際的に支持されている犬アトピー性皮膚炎の診断基準があります。2010年、Dr.Favrot が発表し、The International Task Force on Canine Atopic DermatitsITFCAD:犬アトピー性皮膚炎国際調査委員会と訳すといいのでしょうか。International Committee on Allergic Diseases of Animals : ICADA のホームページに関連する報告がまとめられています。)によって新たに支持されました。臨床症状から判断するものです。これは1000頭以上の統計データを解析して評価されたもので信頼度は高いのですが、それでも100%ではありません。以下の8項目のうち5項目を満たせばアトピー性皮膚炎である感度は85%、特異度は79%。6項目を満たせば感度は58%ですが、特異度は89%です。感度、特異度はそれぞれ、アトピー性皮膚炎と診断するのに見落としをしない確率、他の病気なのにアトピーと診断してしまうことがない確率、と置き換えることができるでしょうか。

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アトピー性皮膚炎と食物有害反応での免疫の仕組みの違いです。
 



診断手引きの
8項目ですが、原著をやさしい言葉に変えました。

1、はじめて発症したのは3歳未満のとき。

2、多くは室内ですごしている。

3、グルココルチコイド(お薬です)を投与すると痒みが減少する。

4、皮膚に病変が見つからないけれど痒みがあって診察に行ったのが始まり。

5、前足に皮膚病変がある。

6、耳に皮膚病変がある。

7、耳の辺縁はおかしくない。

8、体の背中の方はおかしくない。

少々分かりづらいですね。


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検査の具体的な進め方です。
 

 

<典型的なアトピー性皮膚炎は?>

アトピー性皮膚炎の診断基準に基づかなくても、「こんな感じがアトピー性皮膚炎ですよ」っていうと「そうそう、それそれ、当てはまるわ!」ということになると思います。挙げてみます。

1、皮膚に痒みがある。

2、皮膚にぽつぽつ、ぷっくりの膨らみ、赤い紋々がある。がさがさがついている。

3、慢性でずっと続いている。または良くなったと思うとまたぶり返す。

4、はじめて発症したのが3歳にならないとき。

これらはすべて当てはまっているとアトピー性皮膚炎です。


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結果はこのように返ってきます。



それから皮膚炎の起こる場所です。
ちょっと細かくなります。

1、目の周り。口の周り。

 ここは毛の密度が低くて皮膚が赤くなっているのが分かりやすい部分です。さらに顔全体を床でこすったり後ろ足で掻くため、頬の毛もまばらになり地肌が見えたりします。また明らかな脱毛になっているのもわかるかもしれません。

2、耳介の皮膚と外耳道。

 耳介の皮膚は赤く、ぽつぽつを認めることもあります。特に外耳炎は繰り返して発症します。耳垢は茶褐色でねっとりしていませんか。黒色でしょうか。染めて検査するとマラセチア(酵母菌)や細菌を発見することがあります。

3、前足:わきの下、ひじの内側。

  後ろ足:お腹側の太ももの付け根、かかと近くの内側部分。

 左右両方の内側の病変が中央方向に広がって、胸やお腹のところでつながっていることもあります。赤いポツポツや斑ができたりします。

4、足先:甲の部分。

 毛が薄くまばらになります。地肌が見えたりします。

5、足の先:指の間、足裏パットとパットの間。

 赤くなります。さらに舐めて毛が抜け、つるつるしてきます。じっとり濡れたようになっていることもあります。慢性化すると黒ずんできます。

6、後ろの脚:太ももの内側、太ももの外側、太ももの後ろの方。

 ボツボツや赤い斑が出ることが多いです。

7、お腹。

 毛が薄く抜けやすいところです。赤いポツポツや斑がよく出ます。

8、陰部の周辺、肛門の周り。

 赤くなりやすいところです。毛が抜けて皮膚があらわになっていることもあります。この部分は舐めやすい部分で、慢性的に舐めていると皮膚が黒く厚くなり、表面に粉をふいたようなものが付着することもあります。

9、わき腹。

 後ろ足で掻くことができる左右のわき腹は慢性化すると黒ずんだ皮膚が象の皮膚のように厚くなってきます。


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アトピー性皮膚炎についての冊子も掲示板近くに下げておきました。
 



<食物有害反応は?>

アトピー性皮膚炎と食物有害反応の過敏症とは見分けがつきません。本当にそっくりさんです。でも、もし次のようなことがあったら、かなり食物有害反応を疑うことになります。

1、発症したのが1歳前。

離乳食開始と同時に起こってきている場合もあるくらいです。

2、季節を問わず1年中痒みがある。

 アトピー性皮膚炎でもひどくなると年間を通じて痒みがあるといわれています。

3、ウンチがゆるい。13回くらいの排便回数がある。

 これはアトピー性皮膚炎ではみられることのないものです。

 

このような犬で、

1、耳。

2、足の先。

3、太ももの付け根の内側からお腹にかけて。

4、肛門周囲。

5、わきの下。

に痒みの中心がある場合は食物有害反応も併発している可能性は濃厚です。

 

さらに、強く痒みを抑えることができるはずの「グルココルチコイド」を使っても、なんだか切れが悪い。薬を飲んでいるのに痒みをうまく抑えられない。ということがあれば、ますます疑いは濃くなります。

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こちらはIgE検査のパンフレットです。
 



<アレルゲン特異的IgE検査>

このような痒みと皮膚や耳の病変が何から起こっているのかを調べたいとき、アトピー性皮膚炎であれば「アレルゲン特異的IgE検査」が有効です。

当院で採用しているのは「スペクトラムジャパン社のSPOT TEST」です。92種類のアレルゲンを一度に検査します。

この検査でも食物についての項目はありますが、食事性のアレルギーにはIgEが関与するものとリンパ球が関与するものがあるため、食物有害反応が疑われる場合はさらに「リンパ球反応検査」を実施して避けるべきアレルゲンを明らかにしていく方が有益です。


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今月のハートニュースはスクリーニングの血液検査と血液を材料にしたそのほかのおもな検査についてです。

窓際の方にかけてあるのは昨年1年分のバックナンバーです。
 

今月の掲示板はIgE検査についてです。お時間がありましたら、来院の折りにご覧になってください。

次回は検査結果をどのように生かしていくのかについておはなしします。

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