マダニ予防は続けて

今月3日、日本紅斑熱についての記事がありました。さほど大々的に取り上げられたものではありませんが、人と動物に共通する感染症でしたのでご紹介します。ダニ媒介性疾患については昨年SFTS(重症熱性血小板減少症)についてお話ししましたが、今回のニュースでとりあげられた日本紅斑熱については初めてのお話になります。

 

<こちらのニュースです>

「 マダニにかまれて感染する「日本紅斑熱」を発症した広島県の男性が死亡しました。今年に入って全国で4人目の死者です。
 広島県の発表によりますと、死亡したのは尾道市内の80代の男性です。
 「日本紅斑熱」はマダニにかまれることによって感染する病気で、頭痛や悪寒を伴って急激に高熱が出た後、やや遅れて全身に発疹が出ます。
 男性は8月末ごろ畑付近で感染したと推定され、1日に救急搬送され、2日に死亡しました。
 これで、今年に入って全国で105人の感染と、4人の死亡が確認されたことになります。
 マダニは秋にかけて活動が盛んで、かまれないよう皮膚の露出の少ない格好をするなどの注意が必要です。」

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マダニは秋にも活発に活動しています。
 

 

<日本紅斑熱も怖い病気です>

さて、「日本紅斑熱」はマダニ媒介性疾患で、病原体「リケッチア・ジャポニカ」を保有するマダニに咬まれて感染する人の病気です。リケッチアによる感染症は「つつがむし症」と同じです。頭痛、発熱、倦怠感、発疹などが主症状で表れ、ダニの刺咬後に発症します。

本年2月に岡山県で平成26年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会が開催されました。この大会の市民公開シンポジウムで、ダニ媒介性疾患であるSFTS(重症熱性血小板減少症)と日本紅斑熱について講演がありました。6人の演者の先生方、それぞれ違った方面で活躍されていらっしゃる先生方なんですが、普段うかがうことができない貴重なお話をうかがうことができました。

 

ダニの発生数はもちろんですが、野生の鹿の発生頭数にも影響を受けるそうです。近年、日本紅斑熱は増加傾向にあり、昨年の発生数は非常に多く過去最多であったということです。

ダニ媒介性疾患の発生は地域性があります。演者の一人である馬原文彦先生のスライドからの写しになりますが、人の発症で報告のあった地域を色分けした地図です。ピンク色の県は累積発症数が50例未満、赤色の県は50例以上の地域です。三重県、千葉県を除いた赤色の県ではSFTS(重症熱性血小板減少症)の発症も認められています。

 

愛知県もピンク色になっています。愛知県内の山間部、里山地区のマダニが日本紅斑熱の病原体を保有しているかどうか、日本鹿等の野生動物のリケッチアの抗体価がどのくらいなのか分からないのですが、心配になるところです。

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日本紅斑熱の発症を示したものです。
 

 

<マダニのこと>

マダニは、ダニ類の中でも比較的大型で、成長や産卵のために脊椎動物の血液を栄養としています。成長過程で孵化した幼ダニが寄生して吸血、落下して脱皮、若ダニになって寄生して吸血、落下して脱皮、成ダニになって寄生し吸血、そして産卵というサイクルを繰り返します。成ダニが吸血した後は大きいもので3cmくらいになります(ブドウのデラウェアくらいの大きさです)が、卵からかえったばかりの幼ダニ(秋に大量発生します)は1mmくらいの小ささでクモの子と間違えるくらいのものです。

マダニは山地だけでなく、公園や河川敷、草の生い茂る散歩道などにも潜んでいます。ひゅっと伸びた草の葉の先に固まって待ち伏せしています。通りかかった動物の気配を察知して飛び移り寄生、吸血します。成ダニの寄生と吸血は1週間から長いと1カ月も続きますが、幼ダニの吸血はわずか3日程度と短いため、吸血されたことに気がつかないこともあります。

 

ダニに寄生されたことはグルーミングを通して知ることができます。5月から7月、8月ころは若ダニや成ダニを見つけることが多いのですが、秋になるとダニ寄生を主訴に来院してくる愛犬数は減少します。それは幼ダニによるものが多数で発見されにくくなるためかもしれません。しかし、日本紅斑熱の患者発生数が秋に多数認められることからすると、幼ダニが病原体を運んでいるとも考えられますから、秋になってもダニに対する注意は引き続き必要です。

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マダニの生活環を示したものです。

 

<マダニを取ろうとしないで>

もしマダニを発見しても、決して素手で引っ張って取り除こうとはしないでください。マダニは寄生し、吸血するときに、動物の皮膚に噛みつくわけですが、初めにセメントのような物質を唾液腺から出して動物の皮膚に固着するのです。この口の部分は簡単に外れません。取ったつもりになっていても、セメント質部分が皮膚に残ってしまうことがほとんどです。もし病原体を保有しているマダニだった場合は、体が弾けるときに病原体が飛び散り、指に付着することになります。ダニ感染を受けた動物はそのまま動物病院にお連れください。また、もし飼い主さんがマダニの感染を受けた場合は、できるだけ早く、マダニはつまみとらないでお近くの病院で処置を受けてください。

 

 
<メーカーからのパンフレットを載せておきます>
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マダニによる害があります。



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投与しやすい形になりました。



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同様のお薬ですが、効果が3カ月持続します。



<予防しましょう>

9月は幼ダニの発生個体数が一年のうちで最も多くなる時期です。それは春から夏にかけて吸血した雌成ダニが産んだ卵から幼ダニが孵化するためです。

暑い季節が過ぎ、再び行楽シーズンがやってきました。山に入る機会もあるかと思います。日本紅斑熱に関してはワクチンもありません。ダニに咬まれないようにすることが一番の予防策になります。

どこが汚染地域なのか、もし情報を得ることができるようでしたら汚染地域への立ち入りはしない方が賢明です。ご家族の方は長袖の服に長ズボンのいでたちで皮膚の露出を少なくしダニ付着を防いでください。愛犬を連れて山に入る場合、愛犬には事前にノミ・マダニ駆除薬(予防薬)を使用して出かけてください。予防薬には滴下剤のほか、チュアブルタイプ(愛犬が喜んで食べる味付けを施してある)の内服薬、さらに3ヵ月間効果が持続するお薬も出ています。

詳しくは病院スタッフまで、またご心配なことがありましたら遠慮せずお声掛けください。

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従来型のスポットタイプのお薬です。背中に滴下します。

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1カ月に1回
ご褒美のように与えるお薬です。

 
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同様の効果が3か月続きます

追記

昨年知多半島で見つかったエキノコッカスについての継続検査の結果ですが、平成266月から278月(先月)までの報告で、捕獲犬で糞便中に虫卵が陽性に出たものはなかったようです。お知らせしておきます。
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/Echinococcus1.html

  
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