空胞性肝障害

これまでALTが高くてもALPが高くても、「それって、ほとんどは『反応性肝障害』ってやつですから心配しなくて大丈夫」みたいなことを書いてきまして「本当は怖い肝臓病のおはなし」はしてきませんでした。いよいよ今日から「それって『肝臓病』です!」のお話も含め、肝酵素が高かった時の病気のおはなしをして行こうかと思います。

 

 

予定では、6回くらい。

1回目:空胞性肝障害

2回目:胆泥症

3回目:肝微小血管異形成(原発性門脈低形成)

4回目:結節性過形成

5回目:胆のう粘液のう腫

6回目:慢性肝炎

これらは当院で「肝酵素が高いです」という時に順に多いもので、教科書的な肝疾患の分類ではありません。偏見に基づいた「良くみられる肝臓病」になります。で、この中にはすっごく怖い肝臓病も、ちゃんとケアしておけば大丈夫な肝臓疾患も、飼い主さん反省系のお話もあります。

 

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それでは1回目。「空胞性肝障害」についてです。

 

空胞性肝障害:Vacuolar hepatopathy(VH)は肝臓の可逆的な(元に戻ることができる)障害です。良性です。

 

<どんな病気でしょうか?>

グルココルチコイドは副腎皮質から分泌され生きていくのに無くてはならないホルモンです。しかし過剰なグルココルチコイドが体を巡ると、肝細胞の中にグリコーゲンを貯めこむように働きます。以前のブログ「肝臓のおしごと」のなかで紹介した「栄養素の合成と貯蔵」の結果です。これが亢進しすぎた状態です。グリコーゲンは体内でつくられるもので、毒物でも異物でもありません。体が必要とすればグルコース(ブドウ糖)のかたちに戻して血中に戻っていきます。ですから良性の変化です。しかしグリコーゲンのために肝細胞がぷっくり膨れます。肝細胞の間を胆汁の通り道である肝内胆管が走っています。肝細胞でつくられた胆汁は管を通り、いくつかの胆管が集まり太くなって最後は胆のうに送られます。肝細胞の間を走る胆管は膨れた肝細胞によって圧迫を受け、胆汁の流れは悪くなります。

「グルココルチコイド肝疾患」とか「肝臓のグリコーゲン蓄積」とか「ステロイド肝疾患」などといわれてきたものと同じ病態で、診察してくださる先生の年代によって少々呼び名が異なりますが、同じもの、という見方でよいかと思います。

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<どのようなときにこうなるのでしょうか?>

「副腎皮質機能亢進症」ではグルココルチコイドの分泌が高まり、空胞性肝障害を引き起こします。また代謝が悪くなっている「甲状腺機能低下症」では貯蔵されたグリコーゲンの利用率が低下しますから空胞性肝障害が起こります。

薬としてグルココルチコイドが投与された場合も(医原性といいます)空胞性肝障害は起こってきます。最近の3か月とか半年くらいの間のものは結果に反映してきます。免疫系の病気のほか、皮膚疾患でプレドニゾロンが使われている場合があります。

特別に投与されたものでなくても、例えば歯科の問題(歯石がついていて歯肉炎や歯周炎がある)のように慢性的なストレスによって体内から副腎皮質ホルモンがたくさん分泌される状態が続いているようなこと(内因性のグルココルチコイドといいます)があっても起こります。

また性ホルモンの影響によっても起こることがあります。プロゲステロンは肝臓に対してグルココルチコイドと同じような影響を及ぼすからです。卵巣機能障害のようなメス特有の病気も考慮しないといけません。性ホルモン由来のアイソザイム(c-ALP)は調べることができます。

それからシュナウザーやシェルティーで個体の特性として(家族性の)高脂血症があるとき、これによって発生してきます。

 

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<どんな症状が出るのでしょうか?>

たいてい無症状です。元気だし、特に問題も無いけど血液検査をしたら肝酵素が高かった、というものです。ときどき、嘔吐や食欲不振があるくらいです。

 

 

<どんな治療をするのでしょうか?>

副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症のような内分泌疾患があればこちらを治療します。また歯科の問題があれば歯石のスケーリングを行い、歯肉炎等を治療します。

中性脂肪やコレステロール値が高くなっていたとき、追加でリポテストを行います。リポテストは血中のコレステロールと中性脂肪を詳細に分析します。状態にあった高脂血症薬を選択することができます。効率よく高コレステロール血症や高脂血症をコントロールすることが可能になります。

薬として投与されているグルココルチコイドは免疫抑制剤などの別の薬に置き換えることができれば、変更します。どうしても必要で、薬を中止できないこともあります。その場合は投与回数や投与量を減らせるように別の薬を加えて変化を見ます。

該当するようなパターンに当てはまらないときには治療をするのか、しばらく様子をみることにするのか迷う時でもあります。胆汁排泄を良くする利胆剤、胆管炎を併発させないようにする目的での抗菌物質などを処方しています。経済的に余裕があるのであれば、低脂肪食と腸管免疫に良い作用をするサプリメントなどをおすすめしています。

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<経過は?>

甲状腺や副腎の疾患に伴うものであれば、主疾患の治療で肝酵素の数値はほどなく下がってきます。

高脂血症由来の場合、高脂血症薬の投与で肝酵素値は驚くほど下がることがあります。肝酵素低下だけでなく急性膵炎の発症を抑えることができれば犬はつらい思いをしなくて済むことでしょう。

しかし肝臓のための薬を投与していてもフォローアップの血液検査で肝酵素値の減少がみられないこともあります。

肝酵素が今以上に急上昇しないこと、胆のう炎や胆管閉塞を疑わせる症状を出さないことなどが経過観察のポイントになります。

 

今日のお話はここまでです。 
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