肝微小血管異形成

肝臓の病気3回目です。
これまでの2回に比べ、今回の病気は肝臓の病気らしさがあり、心配度合いが高いです。が、この病気に遭遇する頻度は前回、前々回の病気に比べるとだいぶ下がります。

今日お話しする予定の肝臓の病気は「肝微小血管異形成」:Hepatic microvascular dysplasia(HMDMVD)です。「原発性門脈低形成」:Primary hypoplasia of the portal vein(PHPV)といわれることもあります。生まれつきの病気です。

小柄な犬、トイ種の中でも特に小さくて可愛い犬がいます。このような犬で心配な病気です。

 

 

<どんな病気?>

確認できないくらい細かい血管(微小血管)で本来の系統とは違う血管同士がつなぎ合わさっている先天的な異常です。

「門脈体循環シャント」は腸管からの栄養をたっぷり含んだ太い血管(門脈)が肝臓に入る手前で体循環の血管と結合しているのですが、「肝微小血管異形成」は肝臓内部の細かなレベルで似たようなシャントが起こっているのではないかという仮説が挙げられています。立証されていないのでこんないい方になります。

門脈シャントは生後6か月齢から8か月齢くらいで発症し、確認されますが、肝微小血管異形成の臨床兆候が出てくるのはもっと遅く、3歳近くになったころ(さらに遅く発見されることもあります)に見つかることが多いです。

ケアンテリアは遺伝することが分かっています。他にはトイ種。ヨークシャテリア、マルチーズ、パピヨン、シュナウザー、ノーフォークテリア、チベタンテリアなどに発生があります。人気犬種からするとヨーキー、マルチーズ、パピヨンの発生が多いように思います。

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<どのように発症?>

肝臓の中を走る血管は肝臓に酸素を送る肝動脈と、腸などから運ばれた栄養素やその他の成分をたっぷり含んだ門脈があります。この二系統はそれぞれ枝分かれして規則正しく整列している肝細胞の間を走ります。門脈からの血液は肝細胞内で様々な物質が化学的に処理されたあと、体に無害な物質につくり変えられて肝静脈から体循環に乗る仕組みになっています。しかし微小なレベルで血管が結合してしまうと代謝前の物質を含んだ血液が全身循環に入り、血中アンモニア値や、尿酸値が上がります。

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<特別な症状がある?>

日常的には何ら問題がなく過ごしています。

重度に血管が入り組んでしまった犬では、門脈体循環シャントでみられる徴候によく似た症状を現わします。

血中アンモニア濃度が高まると、異常な神経症状を現わします。元気がなく、うまく歩けないようなふらふらした感じです。おかしな行動を見せたり、変な鳴き声を出したり、休みなくぐるぐる丸く円を描くように歩き回ったりすることがあります。異常行動です。そのほか、よだれが垂れたり、目が見えなかったり(物にぶつかります)、けいれんやまひが起こったりします。(肝性脳症といいます)

ただ、このような激しい症状が出ることはまれで、食欲がない、嘔吐する、下痢になったなどの症状が繰り返されて、「この子はお腹が弱いタイプなのね」と思われていることが多いです。

多量の尿酸アンモニウムが尿中に排泄されると尿石を形成します。アンモニウム尿酸塩からできた尿石症を発症すると、何度もオシッコに行く、オシッコが赤い、ちょっとずつしかオシッコが出ない、オシッコを(便と間違えることもありますが)したいんだけど出ないような姿勢だけを取る、などの症状が出ます。これは膀胱炎の症状です。

 

 

<体つきに特徴がある?>

はっきりしたものではありません。体型の小さな個体が多いです。

「同じ犬種のおよその子に比べると小柄なのかな?でも小さいトイ種だからこのくらいが基準で、あちらの子が大きめなのかもしれないな」と感じていたオーナーさんがほとんどです。ですから、分からないと思います。

被毛の毛つやがよくない場合があります。

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<検査等で異常が出る?>

血液検査ではアルカリフォスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)等の肝酵素が上昇していたり、尿素窒素(BUN)の減少が示されたりします。

尿検査では通常は正常、アンモニウム尿酸塩の結晶がみられることもあります。

レントゲン検査では通常は異常がみられません。肝臓が小さいのが確認されることもあります。

通常行われるこれらの検査では異常値を見つけ出すことはなく、犬を診る獣医師側がこの病気を意識していれば何らかの小さな引っかかりを感じることもあるかもしれません。あやしいかな?と判断したら次の詳しい検査に入ります

血清の総胆汁酸(TBA)は食前と食後に数値を測定します。この病気のときには食後の数値が必ず上昇すると言われていますが、さほど上昇しないものも見られます。ただ複数回検査をしていると上下はするものの基準値よりも高い数値を示します。

肝性脳症の症状を示している時以外、血清アンモニア値(NH3)は標準値になっています。

確定診断になる検査は肝臓の一部を切り取り組織学的に検査することと、門脈の造影検査です。

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<治療は?>

肝性脳症の症状(前述:神経系の症状)が出たときには集中して緊急治療に入ります。

日常的にご家庭で長期治療に参加していただくのは、ひどい症状が安定してからです。

肝性脳症にならないようにする目的でお薬を服用していただいたり、食事を検討していただいたりします。処方になるのはアンモニア発生を抑えるお薬などや低たんぱくの治療食です。

肝性脳症を起こしていない犬の場合、内服薬は利胆剤中心の処方になります。

門脈体循環シャントでは大きな血管を操作する手術が適応になりますが、この病気は手術ができません。手術では治らない病気です。

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<注意することは?>

肝臓内部で血管がくっつきあっている状態は手術で整えることもできないし、薬で覆すこともできません。しかしほとんどのものは、さして進行することも無く経過していきます。つまりはっきりとした徴候を示さないものは予後良好です。心配することも無く寿命を全うすることができると思います。

経過観察(定期的に血液検査などのフォローアップをするということです)をしていると、肝酵素は微妙に上下を繰り返します。その時々で一喜一憂されなくても、そんなもんだ、という気持ちで臨んでいただけると助かります。

肝性脳症の徴候を示すものの予後は様々です。

鎮静剤や麻酔薬、肝臓で代謝される薬が必要になるときは慎重にならないといけないため、何か外科手術が必要になった場合は、一般の犬に比べハイリスクになります。 
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