胆のう粘液のう腫

 肝臓の病気のお話、5回目。

「胆のう粘液のう腫」(Gallbladder MucoceleGMです。

 

胆のう粘液のう腫は、胆のうの中に粘液様の物質が充満し、中で動かなくなった状態で、胆のうが異常に大きくなっている病気です。内容物は色の濃いコーヒーゼリーの様なものです。

まれな疾患と考えられていましたが、近年は好発犬種を中心に中年齢から中高年齢での発症がときどき見られるようになってきました。

 

 

<原因は何?>

何らかの原因で胆のう壁の粘液産生細胞が過剰なムチン分泌を起こした結果、粘液様物質が貯留すると考えられています。胆のうの運動機能低下、胆のう炎、胆泥症、胆石症も何らかの関係があるかもしれません。

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患から併発しやすいことが分かっています。また脂質代謝異常(高脂血症)も発症に関係があります。発症にかかわる遺伝子(ABCB4)の変異があると言われていましたが、現在は、糖尿病関連因子と同じように否定的な見方が強まっています。

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<病気になりやすい犬は?>

好発品種はシェトランドシープドック、アメリカンコッカスパニエル、ミニチュアシュナウザーで、このほかビーグルやシーズー、チワワ、パピヨンを挙げる先生もおられます。

中年齢から中高年齢で、基礎疾患として甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症、高脂血症のある犬も要注意です。

 

 

<症状は?>

胆のう粘液のう腫はゆっくりと進行する病気で、初期には症状はみられません。病態が進行すると胆のう炎、さらにひどくなると胆のう壊死(壊死性胆のう炎)を起こします。症状があらわれたときは非常に深刻な病態になっていることが考えられます。胆のうは「沈黙の臓器」ですから問題が起こるぎりぎりまで痛みや不快感を現わすことがないのです。

 

この病気が見つかる3つのパターンがあります。

①健康診断で肝酵素が高かったため、または別の病気があったため超音波検査を受けて偶然見つかる場合。

②元気や食欲がなく、吐き気やおう吐などを訴えて病院に来院し、病気が分かる場合。

③それまでずっと無症状で過ごしてきたのに、胆のうが破れたり、総胆管(胆のうから十二指腸への胆汁の通り道)が詰まったために、急に激しい症状を現わし、病院に来られて分かる場合。

①では無症状です。

②では消化器系の症状一般を現わします。

③では②でみられる消化器症状に腹痛と黄疸が加わります。

膵炎や腸炎を併発している時があります。同じように食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などの症状です。

このような症状が前にも起こったことがある、何回か繰り返しているという場合もあります。これは慢性化している徴候です。

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<診断は?>

血液検査ではアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリフォスファターゼ(ALP)といった肝酵素の上昇のほか、総ビリルビン値(TBil)、総コレステロール値(TCho)の上昇、またあまり聞きなれないかもしれませんがガンマーグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)なども上昇しているのが見られます。炎症の度合いによって、総白血球数(WBC)も増加するし、C反応性蛋白(C-Reactive Protein:CRP)も上昇します。

診断に最も有効なのは超音波検査です。胆のうが大きく拡張した中に、動かない内容物が見られます。いくつかのパターンはあるものの、キウイフルーツを輪切りにしたような象、放射状の象、星型の像などの特徴的な像が見られます。

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<外科治療が第一選択>

外科手術による治療がゴールドスタンダードです。胆のう切除術を行うことと、総胆管の閉塞があればこれを解除することが手術内容です。

胆のうは消化液である胆汁を貯めておく袋状の臓器です。胆のう切除術は胆石症など胆のうの病気のときに行われる手術で、さほど特殊な手術ではなく、一般的な手術の方に分類されます。また胆のうは切除されても術後、深刻な後遺症を残すことはありません。

手術の際に亡くなる確率が17%から40%と言われています。しかしこれは胆のうの穿孔や破裂がおこった場合と、無症状で破裂を起こしていない段階で行った場合とを分けて調べた数字ではありません。検査により偶然発見され無症状のうちに手術する場合の死亡率は高くありません。いつ手術をするのかが、成功へのカギになっています。

そのため、急性に激しい症状を現わしている場合、緊急的に内科的な治療で状態を改善させ、手術リスクを軽くしてから行う場合があります。静脈内点滴で脱水を補正し、抗生物質や肝庇護剤を投与します。また症状に応じた治療(嘔吐や痛みを止める)も行います。

このようにして、ある場合は緊急的に、またある場合は症状を鎮め状態が改善してから手術が行われますが、手術を乗り越えた後の経過は良好です。短命になることもありません。

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<手術は嫌だ!>(内科治療)

しかし今は症状がなく落ち着いている、または緊急的な内科治療で症状が鎮まったという場合では、どうしても手術に踏み切れない、手術はいやだ、という気持ちになるのが人情ですね。症状がおさまると、このまま内科療法を継続することにして手術はしないで済ませたいと思う飼い主さんがおられます。ただ、残念ながら内科的治療のエビデンスはありません。2か月後、3か月後に消失した、という報告が2つありますが、これらは非常にまれなことです。

では、そのような場合には治療のオプションはないのかというと、科学的な根拠には非常に乏しいのですけれども、希望をもって内科治療を継続するというのが残された道になります。術前の緊急的内科療法とは違い、家庭で内服薬投与をする方法になります。
お薬の内容ですが、もし、基礎的な疾患、甲状腺機能低下症のようなものがあればこちらの薬をまずお願いします。それから利胆剤や肝庇護剤、抗菌剤、オッジ括約筋を弛緩させ胆汁を出やすくする薬、胆のう運動を改善する薬などもお願いします。さらに抗酸化薬や
酸化ストレスを防ぐ薬などが加わることもあります。けっこうたくさんの薬が処方になります。

内科療法を希望される場合は動物を注意深く観察していただくとともに、定期的なフォローアップ検査に来院していただくこと、また消化器系症状そのほか異常な点が見られたら速やかに病院に来ていただくことをお願いします。しかしこのような投薬とともに経過を観察をしている間に、病状が急変してしまう可能性がないわけではありません。温存されていた胆のうが穿孔したり破裂した場合の外科手術は、無症状で安定しているときの手術に比べるとハイリスクになってしまいます。

そうならないことを祈って治療を続けることになります。

*お薬について、もう少し細かな説明をしようかなと思います。7回目(次の次)にお話しします。




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