慢性肝炎

 肝臓の病気、6回目は「慢性肝炎 :Chronic Hepatitisです。

肝臓の病気が進行し、慢性化したものが「慢性肝炎」です。

慢性肝炎で多いのは「特発性肝炎」です。

犬種によって、銅が肝臓内に蓄積することが害になって発症する肝炎がみられます。「銅蓄積性肝炎」、「銅関連性肝炎」です。

「慢性肝炎」は進行性の病気で、最終的には「肝硬変」へと移行していきます。

これまで5回ほどよくある肝臓の病気についてお話ししてきましたが、その中でも一番手ごわいのがこの「慢性肝炎」です。

 <特発性肝炎>

慢性肝炎では、細菌やウィルスなどの微生物が原因となったもの、毒物や薬物など化学物質が原因になったもの、免疫の関係するもの(免疫介在性疾患)、銅の代謝障害によるものなど、さまざまなものが肝臓に慢性的に障害を起こしています。しかし原因が特定できないことも多く、それらは「特発性肝炎」と呼ばれます。突然発症するわけではありません。「突発性肝炎」ではなく「特発性肝炎」、原因を特定することができない肝炎です。

一番心配しているのは少量ずつの化学物質が長い年月をかけて肝臓に障害を起こすものです。「犬が喜んで食べるから」と与えているジャーキー類は私たちが食べるサラミソーセージと良く似ています。が、サラミソーセージと違って冷蔵庫に入れる必要がありません。そのまま常温に置いても腐らないのです。カビが生えてくることもありません。虫がわくこともありません。そのように作られているからです。実は犬用の食品には規制がありません。大きなメーカーさんは自主的にAAFCOの基準に沿うようにペットフードを作っています。しかし基本的にどのようなものを元にして作っても、何を混ぜてもよく、その意味では犬の健康に対して責任を持ちません。嗜好性を良くした商品、家族の手間がかからないようにした商品、それがナチュラルな製品とほど遠いものであっても自然志向であるかのような広告を打って経済性を追求した商品、それらが市場にはたくさん出回っています。すぐに健康を損なう急性毒性を示すものは入っていないでしょう。しかし食品添加物はすべてが安全なわけでもありません。また問題のない物質であっても酸化という変化により体に害を及ぼすようになる物質もあります。このような微量な化学物質から肝臓がむしばまれてしまうことがあります。

AAFCOについて:

「AAFCO」とは米国飼料検査官協会(Association of American Feed Control Official)の略称です。AAFCOでは、ペットフードの栄養基準、ラベル表示などに関するガイドラインを設定しており、日本のペットフード公正取引協議会の規約でも、AAFCOの栄養基準を採用しています。AAFCOは基準を提示している機関であり、フードの検査を行ったり、認定や承認は行いません。

 <銅蓄積性肝炎、銅関連性肝炎>

ベドリントンテリアでは常染色体劣性遺伝で肝細胞内に銅が蓄積し、銅蓄積性肝炎になることが分かっています。銅の代謝異常によるもので「銅蓄積性肝障害 Copper-Associated Hepatopathy」とも言われています。

ベドリントンテリア以外の犬種、ウェストハイランドホワイトテリア、ダルメシアン、スカイテリア、ドーベルマンピンシャー、スプリンガースパニエル、ラブラドールレトリバーなどでも慢性の肝障害で、肝臓の組織検査や肝臓の銅重量の検査をすると肝細胞内に銅が大量に蓄積しているものがあります。しかしこちらの犬種の場合、銅蓄積が原因となって肝障害を起こしているのか、肝障害の結果銅が蓄積しているのかよくわかっていません。そこで「銅蓄積性肝炎」と区別して、「銅関連性肝炎」とか「銅関連性肝障害」と呼ばれています。

 <肝硬変>

肝硬変は慢性肝炎の最終段階になります。正常な肝臓の構造が壊れ、障害のあった部分が線維組織で置き換わった状態です。肝硬変は元に戻ることができない変化です。

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<症状は?>

飼い主さんが気づく症状で、多いものから挙げていきます。

・食欲低下

・嘔吐

・多飲多尿(水をたくさん欲しがる、飲む、尿が多量に出る)

・活動的でなくなる(元気がない、という表現をされることが多いです)

・体重が減る(痩せてきた、と言われます)

・黄疸(尿の色が濃い、目が黄ばんでいる)

・下痢

・お腹が膨らんできた

これらの、この病気特有ではない(ほかの病気でも同じようにみられる)症状が、場合によっては数カ月くらい前から続いている、というのが大方の飼い主さんから聞かれます。

(これらの症状のすべてが当てはまるのが慢性肝炎、ということではありません。ひとつでも二つでも、慢性肝炎になっていることはあります。)

 

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<身体検査>

病院で身体を診させていただくと、筋肉が萎えていることが多いです。

腹水があるとお腹は大きくなっていますが、腹水がない場合は、外から見ただけでお腹が大きく張っているのがわかるほど肝臓が腫れているというのはあまりありません。

眼結膜を見て、黄疸がすぐにわかるものもありますが、貧血のために白っぽく見えるものもあります。

その他は肝臓が悪いかどうかは見た目では分かりません。

 <血液検査>

肝臓が悪いのかどうか、全身状態はどうなのか、を目的に血液検査を行います。外から見ただけでは肝臓が悪いのかどうなのかは分からないので、肝臓に絞った検査を行うわけではありません。

スクリーニング検査でALTALPなどの肝酵素の上昇を確認し、その後、追加の検査として総胆汁酸(TBA)アンモニア(NH3)など、肝臓に特化した項目も検査します。たいていは基準範囲の上限を超えています。

黄疸がある時は総ビリルビン(TBil)が上昇します。

アルブミン(ALB)は肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓が悪くなると低下してきます。

糖代謝、尿素回路などがうまく回らなくなると、ブドウ糖(Glu)や尿素窒素(BUN)が下がってきます。

さらに血液凝固系検査を実施することもあります。肝臓は血液凝固に関係するたんぱく質を作っているため、肝機能が低下するとこれらのたんぱくが作られなくなります。その結果、出血した場合、血の止まりが悪くなります。

 <超音波検査>

肝臓の実質がどのようになっているのか、胆のうの様子はどうか、肝臓に入る血管は太くなっていないか、腹水はないか等を見るのに超音波検査を行います。

 <肝臓の病理検査>

肝臓の状態を把握することは大切で、そのために最も良い検査は、太い針を用いた組織検査と、銅関連検査です。しかし、肝臓が悪くなってくると、出血もしやすく、また組織の修復も悪くなってきます。

徐々に悪化していく慢性の肝障害では、修復が難しくなってくる肝硬変のステージより前の段階での検査はおすすめします。肝硬変と思われる所見が超音波検査その他で見られた段階ではあまりお勧めしません。この段階以後では危険率が増してくるからです。検査情報が得られることが危険リスクを上回ると判断した場合は組織検査を実施します。

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<肝臓を保護する内科治療>

意外かもしれませんが、プレドニゾロンが処方になります。

肝酵素を上昇させる要因のひとつにコルチコステロイドがあります。内因性のコルチコステロイドも、医薬としてのプレドニゾロンも肝酵素を上昇させることもお話ししました。しかし慢性の肝障害、ことに免疫介在性の場合はプレドニゾロンが治療薬になります。プレドニゾロンには抗炎症作用があるからです。このほか、抗線維作用もあります。コルチコステロイド療法に関しては
Strombeck先生の研究、1988年のものですが、95頭の慢性肝炎の犬で治療薬にステロイドを加えたものと加えなかったものとの比較で、加えたグループの方が長生きできたという結果があります。

また酸化ストレスが病気の進行に重要な役割を果たしていることが分かっています。抗酸化剤は慢性肝炎の治療に役立つと考えられています。

 抗酸化剤を中心にした「肝障害があるときに使われるお薬」については次回お話しします。

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