高齢猫の体重減少

 高齢猫の体重減少についておはなしします。

 

高齢猫の体重減少はよく認められる症状です。猫の寿命はこの20年くらいの間にとても延びてきたので体重減少が気になる猫も増えてきました。

しかし高齢になった猫は生理的に体重が減ってくるものと思われていて、体重変化にあまり気を使ってもらえない節があります。確かに生理的な原因からも体重減少は発生します。栄養素(脂肪やたんぱく質)の消化・吸収能力が低下するため、同じだけ食べていても太らず体重が減ってきます。初期はこのような仕組みに対して代償機能が働くために、これまで以上に良く食べる(多食になっている)こともあり、「しっかり食べるのだから」と心配に及ばないこともあるでしょう。これと反対に味覚や嗅覚が変化してくるため食の嗜好性が変わって、これまで喜んで食べていたフードを食べ残す現象が出てくることもあります。多頭飼育ではこの食べ残しを他の猫が食べてしまうため、気付かれずに過ぎてしまいます。

このように消化吸収能力の低下が体重減少につながるケース、食の変化が体重変化につながるケースのほかに、病気に由来して体重が減少するケースもあります。最も心配なのは病的原因による体重低下です。

生理的な理由による体重減少であっても、食事の変更によりこれを補うことができれば、もとの体重を取り戻すことができるでしょう。また、病気が原因の体重減少であれば、なおさらのこと病気に対処してもとの体重を取り戻したいものです。

まずは体重変動に気付くことから、そして、病気由来の体重減少ではないかを確認し、さらに原因となる病気を探り、それぞれの疾患を治療しましょう。

 

 

<体重の変化?>

前回の体重から今回の体重を引いたものが体重差です。この体重差は何百gとかの変化になるだろうと思います。しかし、もとが数kgですから100g200gのことでも人に換算すると大きな変化になります。それでこれを体重減少率という割合にして考えていきます。

例えば1年前に6.0kgあった体重が今年の検査で5.2kgに変化していたとします。800g減です。0.8÷6.00.13これに100をかけた数値、13%が減少率です。1年で13%の体重減少がみられました。

10%を超える体重減少は有意な減少で、ウンチやオシッコのことや食後かどうかを考慮したとしても体重低下が認められます。すぐに対処した方が良いでしょう。5%から10%の間にある場合も検査を受けた方が安心です。5%未満の減少であれば心配の要らない場合もあるため、近いうちにもう一度同じ条件で体重測定をし、さらに体重減少が続いていれば検査に入りましょう。

 

<食事量は適正だろうか>

何をどのくらい食べているのかは、個体の健康を探る上でとても大切なことです。エネルギー要求量に見合ったカロリー摂取がなければいけません。痩せてくると免疫力も低下し、さまざまな病気を呼びこんでしまいます。

食欲の変化は無いでしょうか。口内炎や歯科疾患があり、口が痛かったら食べる量は減少してきます。これまでと同じだけ食べられているのでしょうか、正確な把握が必要です。

また食べたものが消化器疾患等により、おさまっておらず、嘔吐などにより出てしまっていないかどうかも今一度確認してもらえるといいですね。

 

 

<高齢猫に体重減少をもたらす病気>

高齢猫で慢性的に体重減少を引き起こす原因となる病気がいくつかあります。高齢の猫は加齢に伴って免疫機能の低下を招きやすく、そのため感染性の病気や腫瘍にもかかりやすくなっています。高齢猫に発生しやすい(体重減少を伴う可能性のある)病気をあげておきます。

・甲状腺機能亢進症

・慢性腎臓病

・糖尿病

・炎症性腸疾患や消化管の腫瘍

・猫免疫不全ウィルス感染症

・消化管以外の腫瘍

・肝臓の病気

・猫白血病ウィルス感染症

この中で、正常に食欲があるにもかかわらず体重減少を起こしやすい病気は以下の4つです。

①甲状腺機能亢進症

 体重減少そのものがこの病気を示唆する初期症状になっています。

②糖尿病

 高齢猫の好発疾患です。増加傾向にあると思います。栄養(ブドウ糖)が体に利用されることなく尿と一緒に排泄されてしまうので猫は痩せてきます。

③慢性腎臓病

 腎臓病の初期は食欲があっても痩せてくることがあります。腎臓病になると食欲がなくなる、というのはある程度進行している場合です。

④炎症性腸疾患

 食欲の変化と嘔吐、下痢を伴う場合があります。あまり馴染みのない病名かもしれませんね。この病気のときもとても痩せてきます。

 

 

<病院へ行く前に>

まず、いろいろ思い出してみてください。

①食欲は?食べる量に変化は無いかしら?

②飲水量の変化は?尿はどうだろう?

③嘔吐は無いかしら?

④下痢や便秘はどうだろう?

⑤毛のつやはある?

⑥目が悪くなってきていない?

⑦最近飼育環境に変化は無かった?

⑧痛がるところは無いかなぁ?口やそのほかのところも。

⑨何か行動が変化したようなことは無い?

 

 <総合的な検査のはじめに>

病院では一般身体検査を行います。

皮膚は?目は?口は?様子を見ます。(視診といいます)

お腹の中に塊は無いだろうか?さわってみます。(触診です)

心臓や肺の音はどうだろう?(聴診です)

そのほか、歩様を診たり、神経学的な検査をすることもあります。

血圧測定も行いましょう。

複数の問題が隠されている場合が多いからです。

 

 

<問題点を整理します>

お家の方に伺った家での様子と、病院で観察できた様子から、ありがちな病気に的を絞って考察します。

こんな可能性は無いかな?あんな可能性は無いかな?これが大丈夫だから、この病気は否定できそうだな、という感じです。

それで検査のプランを立てます。どんな検査が有用になるのか、無駄にたくさんは行わないように考えています。

 

<検査室の検査>

血液や尿の検査を実施します。

ここで異常値が出るとさらに追加検査が必要になることもあります。

 

<画像の検査>

レントゲン検査や超音波検査などを実施します。

異常が見つけられないときにさらなる検査に進むかどうか悩むことになるかもしれません。

次は内視鏡と細胞の病理検査です。さらに試験開腹が必要なことも出てきます。これらの検査は麻酔が必要です。

 

以上の検査は順に行います。ですから途中で体重減少になる原因が判明すればそこから先の検査は行いません。

 

 

<治療>

体重減少にストップをかけるため、いくつかの治療があります。原因療法は体重減少を引き起こした病気が確定した場合、その病気に対してとられる治療法です。支持療法は原因療法と並行して特に体重を増やす目的でとられます。また体重減少が生理的な理由であった場合に行われるのも支持療法です。

高カロリーの食事を選んだり、食欲刺激剤を服用したり、ビタミン剤やサプリメントを使うこともあります。嘔吐があれば制吐剤を使用したりもします。

 

最も重要視しているのは食事療法です。最適な食事を適切な量食べて、体重増加につなげるのが重要だと考えています。

痩せてきた高齢猫の多くはこのような支持療法に良く反応して減少した体重を復活させることができます。嗜好性や消化性が高く、ハイカロリーな食事を個別に選択してご紹介しています。ご心配な点がありましたら遠慮なくスタッフにお声掛けください。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード