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老齢期を迎えた犬の対処法

老年期を迎えた犬のおはなし

 

年齢を重ねると、体のいろいろなところに老化の変化が現れます。肉体の機能的な衰えはある日突然始まるわけではありません。けれど私たちの目に変化を感じる瞬間が訪れます。被毛に白い毛が混じって来て犬も白髪になるのね、と思うのもあるでしょう。



<目に見える変化> 
目の衰えは黒目が白く濁ってくる白内障(や核硬化症)が代表的なものです。視力が低下し、用心になり、動きが遅くなり、ものにぶつかりやすくなります。

耳の衰えは聴力の悪化が挙げられます。飼い主さんの呼びかけに対する反応が鈍くなったり、大きな声で吠えるようになったりします。

視覚や聴覚が衰えると臆病になり、飼い主さんへの依存度が高まります。また恐怖から攻撃的になることもあります。

歯や歯肉も悪くなってきます。歯石が厚く付いてきて、歯周病になります。歯肉が上がり、歯が降りてきます。歯がぐらつき、痛みのために食事をするのが遅くなったり食べにくそうに口をもごもご動かすようになったりします。口腔環境の悪化は口臭を招きます。

足腰が弱ってきたのはよくわかると思います。筋肉量が低下し、運動能力が低下します。立っていても後ろ足が小刻みに震えます。歩くのが遅くなり、走らなくなります。歩幅もせまくなり、ロボットのようなぎこちない歩き方になります。寝ていて立ち上がるのに時間がかかり、散歩を嫌うようになります。骨関節症、脊椎症などになっています。

 
<目に見えない変化>
以上のような比較的分かりやすい(目に見える)変化のほかに、内臓諸器官の機能低下や体温調整能力の低下も起こります。

胃腸の機能低下は嘔吐や下痢、便秘、そして食欲の低下や体重減少を引き起こします。

腎臓の機能低下は多飲や多尿が初期症状です。尿を濃くする機能がなくなるため、薄いおしっこを出すことになります。窒素代謝物の排泄が滞り、尿毒症になると嘔吐や食欲廃絶を起こします。

心肺機能低下で運動不耐症が起こります。呼吸が浅く速くなります。少し動いただけでも疲れやすく、動くことを嫌います。咳が出ることもあります。

寒さや暑さに対する耐性が衰えてきます。夏バテしやすく、冬の寒さをこらえきれません。

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3月の掲示板は犬の認知症について取り上げています。


 

<脳の変化> 

そして何より、脳の機能の低下が起こります。認知機能不全症候群、いわゆる認知症です。家の近所で迷子になる見当識障害、家族と遊ばなくなる社会交流の低下、昼夜逆転などの睡眠サイクルの変化、トイレサインを失う不適切な排泄、さまざまな活動性の低下などがみられます。

前置きが長くなりました。今回から2回ほど高齢犬に発症する認知機能障害についてお話していきます。

 

<認知症というのは>
かつては「痴呆症」と言われていた「認知症」、どちらも英名ではDementia、同じです。1995年、内野先生が犬の痴呆症を「高齢化に伴って、いったん学習によって獲得した行動および運動機能の著しい低下がはじまり、飼育困難となった状態」と定義し、診断基準を作成されました。先生がお亡くなりになった現在もこの基準から評価することが多いですが、今はこの状態をヒトにならって「痴呆症」から「認知症」とか「認知機能不全症候群」(Cognitive dysfunction syndromeCDS)と呼ぶようになりました。

 ヒトでは認知症はいくつかのカテゴリーに分類されています。動物でも脳の病理学的検査を行うと、ヒトのアルツハイマー型認知症に特徴的なアミロイド沈着や、そのほかの変化が見られることが分かっています。このような変性が発生するのは酸化ストレスにより産生される活性酸素などが原因とされています。

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いろいろな症状が出ますが、治療で軽減することができます。
 

<発生しやすい犬>
1995年の内野先生の研究では、犬で11歳ころから発症があり、年齢が増すごとに罹患率は高くなり、13歳で急増し、15歳でピークを迎えています。思った以上に早い年齢で認知症は始まっています。

どの品種にも認められる疾患ですが、国内では柴犬の発生が群を抜いて多く認められます。2002年、高齢で異常行動を起こしやすい犬種についてヒルズが調査した結果によると約半数の51.0%が柴犬で、それに続くのが柴犬の雑種、雑種、日本犬、日本犬の雑種でここまでを総合すると全体の79.7%が日本犬の系統で占められることになりました。海外の報告では特定の品種に好発が見られないことから、これ以外の犬種の発症はあまり差がないかもしれません。

 
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内野式痴呆症の判定基準です。
30点以下は生理的な老化。
31~49点は予備軍。
50点以上は痴呆症。





<診断の手順>
常に観察している飼い主さんからの報告により、臨床症状から判断するのが始まりです。臨床症状から判定する基準があり、内野式のほかDISHAの行動変化のカテゴリー表記やRofinaらによる質問票があります。点数加算式で、標準的な高齢犬、認知症の予備軍、認知症と判断することができます。

さらに神経学的な検査や血液検査、そのほかの検査を行って、認知症以外の病気から認知症の症状になっていることはないかどうかを確かめます。

例えば頭を傾け、一方方向にだけぐるぐる回るような動きがある場合、認知症による旋回運動なのか、前庭疾患によるものなのかを見極める必要があります。このような病気に

①骨関節症

②椎間板ヘルニアや脊椎症

③歯の病気

④甲状腺機能低下症

⑤心臓病

⑥腫瘍

⑦膀胱炎

などがあります。

これらの病気を適切に治療すると今の症状が解決される場合もあるので、早く見つけて治療に入ります。もちろん、病気はひとつということはなく、複数の病気が重なっている場合も、認知症を併発している場合もあります。

 

<進行を抑える治療があります>
認知症は脳の変性によって起こる病態ですから、これに対して決定的な治療は有りません。しかし他の慢性の病気のように、病気の進行をできるだけ遅くさせ、飼い主さんご家族と犬のQOLを維持、向上させることを目的にいくつかの治療があります。

環境改善や生活改善などによる行動学的修正のほか、サプリメントも含めた食事療法、脳のための薬物療法があります。

 

これらの治療については次回お話しします。

 

 

    
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