猫の慢性腎臓病が心配になったら

3月は腎臓病月間です。もう3月も終わりになりますが、猫の腎臓病のお話をしていきます。

診断後にお話をしていると「腎臓病のことはなんとなく知っていたけど、どんな病気なのか詳しくは知らなかったし、うちの猫に関係するなんて想像できなかった」というお話を伺います。とてもよくある病気だし、みなさんご存知のものだと思っている私たちの怠慢なのかな、罹患する頻度の高い病気についてはもっと頻繁にアナウンスし、「診断されたときは結構ステージが進んでいた!」なんてことのないようにしなくてはいけないな、と反省しました。

今日からお話していこうと思うのは

猫の慢性腎臓病の診断と検査

についてです。

「うちの猫は腎臓病になってはいないだろうか」と心配になったとき、探してみると「こんな症状があったら腎臓病の心配があります」というのにたどり着くかと思います。でも心配になったらまず病院で検査を受けるのが一番だと思います。
はじまりの今日は診断にまつわるお話をしていきます。

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<何はともあれ検査を受けてほしい理由>
猫の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease : CKD)の診断は臨床症状からこの病気を疑い検査をして確定診断する流れと、臨床症状が出ていない段階でスクリーニング検査をして早期発見をする流れがあります。無症状の段階でこの病気を見つけ出せるとうれしいなと思います。なぜなら「10歳を超えた猫の1/3は慢性腎臓病にかかっている」といわれているくらい高齢猫ではこの病気の発生率は高いのです。けれど特徴的な臨床症状はなく、飼い主さんに早期の段階で気づいてもらえることは難しいのです。病院でも身体検査の段階では、体重減少や脱水やおおよその貧血の有無くらいしかとらえることはできません。しかし症状がないうちに検査を実施し、腎臓病の早期発見ができると、腎臓のダメージが少ないうちから腎臓を保護する治療を始められるので腎臓が長持ちします。つまり猫はより良い状態で長生きできることになります。

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<腎臓病の診断>
腎臓の機能を最も確実に把握することができる検査はGFR(糸球体濾過量)測定ですが、この検査は煩雑である上、高価です。そのため私たちは日常的に「高窒素血症」と「尿比重の低下」から慢性腎臓病を診断しています。尿素窒素(BUN)とクレアチニン(CRE)が高窒素血症の有無をみるために使われる検査項目です。しかし残念ながら尿素窒素もクレアチニンも腎臓の機能を測るのに感度の高い検査項目とはいえません。GFRの値ときれいな相関関係がみられないのです。尿素は排泄された後に再吸収されてしまう物質ですし、高蛋白食を食べていたり、激しい運動をした後の血液では高く出たり、筋肉量の乏しい猫や肝臓機能に問題がある猫では低く出て、腎臓以外の要因で検査結果に影響がでてしまうのです。尿比重は腎疾患の早期診断に役立っています。腎臓の機能をみるための一番はじめの検査としては尿検査です。
「高窒素血症」は腎臓機能が衰えていることのほか、脱水や循環不全、膀胱破裂や尿道の損傷などでもおこります。高窒素血症の原因が腎臓以外の由来でないかどうかを確認し「高窒素血症」に「尿比重の低下」もあることを確認して、慢性腎臓病と診断します。
高窒素血症は何を指標にするかというと、血漿クレアチニン値(CRE)で、目安は1.6mg/dlを超えるところからです。これは一般の血液検査標準値よりも低くなっています。定期健診でいただく結果表を見ると「健康」範囲になっているところが多いと思います。高齢猫では基準値との境目(カットオフ値)を1.6mg/dlにしています。
一方、尿比重は1.035よりも低いものを「尿比重の低下」としています。正常な猫の尿比重は1.040から高いものでは1.090にも上ります。脱水があるときは1.047から1.087くらいで、腎機能の低下した猫では脱水があっても1.035から1.040未満の濃度にしかなりません。
尿比重 分類
1.045< 十分に濃縮された尿
1.035~1.045 正常な濃縮尿
1.013~1.035 最小限の濃縮尿
1.008~1.012 等張尿
<1.008 低張尿


<ステージの分類>
診断した後は、IRISのガイドラインに沿って、慢性腎臓病のステージ分類を行います。
国際的な機関であるInternational Renal Interest Society (IRIS)は、犬と猫の腎臓病に関して、私たち獣医師の理解と診断、治療を向上させる目的で1998年に発足しました。腎臓病の犬猫の評価と治療のガイドラインを考案しています。腎臓病のステージ分類は血液のクレアチニン値を基に行っています。できるだけシンプルにという配慮から分類の中心をクレアチニン値においていますが、「脱水があると数値を上昇させてしまい、実際よりも重度であると誤解を生じる可能性がある」として、1回の検査結果ではなく、脱水があればこれを補正し、数週間後に行う再検査の数値を基に当てはめるようにされています。
IRIS ステージ CRE値 判断
0    <1.6mg/dl CKDのリスクがある
1    <1.6mg/dl 高窒素血症ではない
2  1.6~2.8mg/dl 軽度の高窒素血症
3  2.9~5.0mg/dl 中等度の高窒素血症
4    >5.0mg/dl 重度の高窒素血症


<慢性腎臓病とわかったら>
慢性の腎臓病です、とわかってから猫さんの治療の日々が始まります。それはごく初期の段階で見つけられたとしても、です。これからの人生(にゃん生)の中で「今日が一番腎臓機能が残っている日」なので、腎臓を丁寧に使って悪化するスピードを最小限に食い止める生活をする必要があります。これが治療です。まずはどんなことをすると腎臓によくないのか、腎臓にとって悪者は何なのかを知り、そういう状況を避ける努力が必要になってきます。
でも、ひとつお知らせしておきます。腎臓病は必ず進行性に悪化していくわけですけれど、じっとその診断時のステージにとどまって何年か過ごしていく猫と、あれよあれよという間に次のステージへと昇っていく猫がいます。進行のスピードには個体差があるようです。
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<おまけ・新しい検査のこと>
新たに注目されている検査があります。対称性ジメチルアルギニン(SDMA)です。これは血液を用いたバイオマーカーで、腎機能と高い相関関係があり、筋肉量の影響も受けず、早期の診断で感度も信頼性も高い、ということで大変評価されている検査項目です。外部委託の検査になります。実用化までもうちょっとお時間をいただく必要があります。
IRISではSDMAに関する新しい解釈が出ています。
①血漿クレアチニン値(CRE)が1.6mg/dlを下回っていても、もしSDMAが継続的に14μg/dlを上回っていればステージ1とするべきだ。
②CRE値が1.6 mg/dlから2.8 mg/dlの間(これはステージ2に相当)であっても、SDMAが25μg/dlを上回っていればステージ3として治療すべきだ。
③CRE値が2.9 mg/dlから5.0 mg/dlの間(これはステージ3に相当)であっても、SDMAが45μg/dl以上ならばステージ4として治療すべきだ。
これからはSDMAも総合判断に加わるかもしれません。もしくはこちらをもとにして基準が作り替えられる日が来るかもしれません。

今日のお話はここまでです。
次回は慢性腎臓病だとわかってから行う追加検査についてお話します。


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