FC2ブログ

猫のフィラリア症

 猫のフィラリア症

 

「犬はフィラリア予防してるけど、猫はしなくて大丈夫なの?」というご質問をいただきます。このような内容のご質問は毎年聞かれます。答えは「ノミ予防と一緒にしていますよ」になります。レボリューションスポットを滴下している猫さんはフィラリア予防もいっしょにできているのでした。

今日は「猫のフィラリア感染」についてちょっと詳しくお話します。

 

<猫の犬糸状虫症>

猫の犬糸状虫症については丁寧にお話しする機会が少ないので、あまり知られていないかもしれません。「えっ!猫でも?」と驚かれる飼い主さんもいそうです。

猫は犬糸状虫とは相性が良くないので、蚊に刺されて感染子虫が体内に入っても心臓まで到達できず途中で死んでしまうことがほとんどです。それで感染した場合に出る症状が犬とだいぶ違います。昔は「心臓に虫が入らないから大丈夫」と思われていたのですが、様々な研究から今は、途中で死んでしまうことそのものが猫の体にとても大きな害を及ぼすことが分かってきています。

 IMGP8388.jpg
今月の掲示板は猫のフィラリア症についてです。

<猫の体内に入った虫のゆくえ>

フィラリアは蝶々などの昆虫と同じように脱皮して体を変えていく寄生虫です。蝶々は「卵⇒幼虫(あおむし)⇒さなぎ⇒成虫(蝶々)」という変化ですが、フィラリアは子供の虫から大人の虫まで、形そのものはそうめん状の虫で形態に変化はありません。ただ大きくなるだけです。けれど脱皮して成長をする過程で、5段階の変化があります。

 (犬の体内)最初はフィラリアに感染した犬の血液中に出現する子供の虫で「ミクロフィラリア」です。体長は300ミクロン。顕微鏡でなければ見えない大きさのものです。

-2 (蚊の中に)フィラリアにかかっている犬の血を蚊が吸うとき、ミクロフィラリアが血と一緒に蚊の体に入ります。蚊に吸われた虫は「第1期幼虫」です。蚊の体内で1週間もすると脱皮して大きくなります。

 (蚊の体内)1回目の脱皮で「第2期幼虫」になります。それから2週間くらいでまた脱皮します。

 (蚊の体内)2回目の脱皮で「第3期幼虫」になります。

-2 (猫の中に)蚊が猫を刺したときに「第3期幼虫」は猫の体に入り込みます。猫の体に入った「第3期幼虫」は「感染子虫」と呼ばれます。猫の体に入ってから10日くらいすると脱皮します。

 (猫の体内)3回目の脱皮で「第4期幼虫」になります。ここから約2か月すると、また脱皮します。

 (猫の体内)4回目の脱皮で「第5期幼虫」になります。成熟には達していない、という意味で「未成熟虫」とも呼ばれますが、ここからが犬と異なる点です。犬ではここから末梢血の中に入り込み、血液の流れに沿って心臓(右心室を経て肺動脈)に行き成熟するのですが、猫では免疫作用を受け肺動脈で死んでしまいます。(*危険1)

-2 (猫の体内)一部の虫は死なずに成熟することもあります。心臓に入ります。しかしたいていはごくわずかなため、子供を産むことはありません。それで犬のように検査をしてもミクロフィラリアを検出できません。この後、成虫は2年から3年ほど生きて死にます。(*危険2)

 IMGP8387.jpg
猫を宿主としたときのフィラリアの行方についての図です。

<猫のフィラリア症の症状は?>

猫のフィラリア症の症状は犬のフィラリア症の症状と大きく異なります。フィラリアが悪さをする時期は3つあります。

➀第1病期
 上述のライフサイクルの中の(*危険1)の時がまず初めの病期です。急激に死亡したフィラリアの虫が肺の血管や間質組織で炎症を起こします。これは犬糸状虫随伴呼吸器疾患(Heartworm Associated Respiratory Disease : HARD)と言われているもので、咳や呼吸困難が特徴です。喘息のような症状です。おう吐する場合もありますが、全くの無症状で経過することもあります。

 この時期を過ぎると猫には何ら問題のない期間が過ぎていきます。

②第2病期
 次にトラブルが起こるのは心臓内に寄生した成熟虫が死んで肺に流れ肺塞栓を起こす(*危険2)の時です。肺の炎症、急な肺障害が起こります。突然死を起こすこともあります。

③第3病期
 第2病期を乗り切った猫では、肺の変化からくる慢性呼吸器病を発症します。



いずれの相でも、咳や呼吸困難などを示す呼吸器の病気になります。たいていの猫の呼吸器病ではこのような症状を出しているので、フィラリア症と診断されずに終わっているケースもたくさんあるのかもしれません。

 IMGP8386.jpg
犬糸状虫のライフサイクル。
犬と猫で違うのを表した図です。


<猫のフィラリア症を発見するには?>

犬のフィラリア症は予防薬投与前に2つの検査を行っています。一つは血液の中のミクロフィラリアを発見する検査で、顕微鏡で確認します。もう一つは心臓内の成熟虫を確認する免疫学的な検査(抗原検査)です。キットに血液を滴下し、反応して現れる赤い線を目視し判定します。

しかし猫の場合は診断がとても難しいです。心臓内に寄生する成熟虫の数が少なくミクロフィラリアを産まないことから、犬で行われるミクロフィラリア検査の結果は陰性になります。免疫学的な検査(抗原検査)は寄生する成熟虫が少ないと陰性になります。もう一つの免疫学的検査(抗体検査)では寄生があることを確認することができても、今の状況をそのまま表すものではありません。レントゲン検査で気管支を見ますが、喘息と似た所見で、区別がつきにくいです。心臓内を超音波で観察するのには猫の心拍数は早く、呼吸が荒いときはきれいに見えないことが多いです。
このようにそれぞれの判断が大変微妙ですが様々な検査を実施し、総合的な判断をします。それでも白黒はっきりつかないもどかしさがあります。

 IMGP8389.jpg
Q&A方式でわかりやすくしました。



<猫のフィラリア症の治療は?>

おなかの虫だと、寄生している虫を駆虫するのが寄生虫治療の基本ですが、フィラリアの場合は成熟虫を死滅させる薬を使うことはありません。血管系は閉鎖されていますから、死んだ虫が肺に流れて閉塞を起こすからです。肺動脈塞栓症は危険な状態です。

それで「虫を殺してなくす」という治療ではなく、「猫が苦しんでいる臨床症状の改善をする」治療を行います。狭いケージの中で静かにさせる、酸素を流す、気管支を広げる薬や炎症をやわらげる薬を投与する、場合によっては点滴などの支持療法です。

 IMGP8391.jpg
予防方法はレボリューションスポットでできます。

<どうやって予防しましょうか?>

このように、猫のフィラリア症はとても怖い病気です。運悪くかかってしまうと、どうにもならないようなところがあります。診断は難しいし、根本的な治療方法がありません。蚊は犬も猫も関係なく刺すでしょう。一番良いのは刺されても感染子虫が猫の体内で成熟しないように予防薬を投与することです。

現在、猫のフィラリア予防には内服薬と外用薬があります。カルドメックチュアブルはジャーキータイプの内服薬で、外用薬はレボリューションスポット。ノミ予防のためにいつも使っていただいている滴下剤です。(当院では取り扱いしておりませんが、バイエル社のアドボケートやメリアル社のブロードライン等でも滴下予防が可能です。)内服薬も滴下剤もどちらも1か月に1回投与します。

というわけで、これまでノミ予防としてお使いいただいてきたレボリューションスポットを、シーズン中忘れずに1か月間隔で使っていただくだけで猫さんはフィラリア予防ができます。夏の暑いときだけ、ノミが気になるときだけ、時々2か月くらい間が開いちゃうけど、という使い方を改めてもらうだけで、真新しいことはありません。

猫の
10頭に1頭が感染している?ともいわれている猫のフィラリア症。今年はきっちりお使いいただくと安心ですね。


今日のお話はここまでです。

長くなりましたが、「猫のフィラリア症は犬よりも怖いな」でも「予防は簡単だ」。これだけわかっていただけたら十分です。
それではしっかり予防をお願いします。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

No title

初めまして。
疑問なんですが、犬のフィラリア薬の処方の時は、毎年検査します。
理由は、もし感染していた時に薬を処方すると危険だからだそうです。
猫の場合は、検査自体無いですが万が一感染していても犬のように危険じゃないのでしょうか?

Re: No title

こんにちは。

犬のフィラリア検査では2つの系統の検査を実施しています。
一つは顕微鏡で直接、血中のミクロフィラリアの有無を観察するものです。
心臓内に寄生したフィラリア成虫が産んだ子供のフィラリアがミクロフィラリアで、
少なくとも雄雌1匹ずつ心臓内にいなければ陽性にはなりません。
もしミクロフィラリアがいて予防薬を投与するとミクロフィラリアが薬に反応して毒素を出すとか、
急性の前大静脈症候群になるなどして宿主の犬に多大な被害を起し、
場合によっては死亡するような事態になりかねません。
これを防ぐために投与前検査が実施されます。

もう一つの検査はフィラリア抗原検査といわれるもので、
フィラリア検査キットに血液を滴下して反応を見る検査です。
ミクロフィラリアの産生は雌雄どちらか一方であるとき(まれですが)、
ミクロフィラリアの産生数量が少ないときなど擬陽性を起すことがあります。
また、成虫が心臓内に寄生していても予防薬を投与することにより
子供の産生が無い場合もありますので、ミクロフィラリア検査だけでは不十分。
そのための検査です。(近年の主流の薬の影響もあります)

猫は犬と違い、終宿主ではないので、心臓内に成虫が収まりません。
蚊に刺されて皮膚から入った感染子虫が移動途中で居心地の良い所を見つけ
そこで落ち着いてしまいます。そのためミクロフィラリアは産生されません。
ですからフィラリアに感染していてまだ症状を出していない段階であっても
予防薬(たいていはノミ予防として使用することが多いです)を投与しても
個体に対する危険性はありません。
というわけで、猫にはミクロフィラリアはいないので
予防薬を投与する前に犬のように検査をしなくても
大丈夫ということです。

猫の呼吸器疾患で、胸のレントゲン撮影をしたりして、なんだか怪しいぞ、というとき
確認のためにフィラリア検査をすることがあります。
フィラリア症を疑って行なうのは、後者の方、抗原検査です。
でも検出率は低く、偽陰性になることも多いです。

なお、猫のフィラリア症は犬のフィラリア症よりもたちが悪いです。
感染していたらすごく危険。呼吸不全が主な症状ですし、治せません。
こんな大変な病気なのに、残念ながら認知度が低く、フィラリア予防率も低いです。
zoetisさんのレボリューションはノミ予防薬がそのままフィラリア予防になるので
ぜひとも予防をお願いしたいです。
ちなみに、このセラメクチン以外で猫のフィラリア予防を検討してみましたが、
採算性に見合うだけのお薬は見当たりませんでした。
(他のお薬ですと犬の大型犬向けの用量を投与する必要があります。)

以上です。
疑問が晴れたら良いのですが。

No title

お忙しいところご返信いただきまして、ありがとうございます。
10年ほど前に、掛かりつけの先生に猫にフィラリア予防しなくていいのかと聞いた時に、検査法がないので投与できないと聞いて以来ずっと不思議に思っていました。
プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード