猫のリンパ腫・概要

 猫のリンパ腫についてのおはなし。

 

<はじめに>

猫にもリンパ腫が発生します。むしろ、猫は犬以上に発生件数が多いのです。人で1万人に1人、犬では1万頭に1~3頭の発生率と言われていますが、猫では1千頭あたりおおよそ1~2頭と言われていますので、1万頭では1020頭の発生になります。人や犬の約10倍の発生率ということになります。

 

猫のリンパ腫は猫白血病ウィルスとの関連性が高く、ここ西尾地区では猫白血病ウィルス感染が急激に広まった1980年代の後半にはウィルス感染を伴った猫のリンパ腫の縦隔型が大変多く発生しました。比較的若い猫で呼吸困難を特徴として来院し、抗がん剤による治療を行わないと呼吸が苦しいまま食事もとれず亡くなっていきました。

現在は猫白血病ウィルス感染の陽性率は低くなってきました。猫白血病ワクチンが普及したこと、また猫の飼育が屋外飼育から屋内飼育になってきたことと関連があるのかもしれません。けれど猫のリンパ腫は減少していません。

猫のリンパ腫は発生部位によって特徴があり、縦隔型リンパ腫(前縦隔リンパ腫)は猫白血病ウィルス陽性の幼若猫に発生が多く、消化器型リンパ腫は猫白血病ウィルス陰性の中高齢の猫に発生が多い傾向があります。現在多く診るのは、この中高齢の猫に発生する消化器型リンパ腫です。

 IMGP8662.jpg

<ウィルス感染と猫のリンパ腫の発生>

西尾地区では猫白血病ウィルス感染の陽性率は減少していますが、猫免疫不全ウィルスの感染率は依然高いままです。猫免疫不全ウィルスも猫白血病ウィルスと同じ「レトロウィルス」の仲間で、猫免疫不全ウィルスも猫のリンパ腫の発生に関係があります。猫のリンパ腫発生率は、両方とも陰性の猫の発生を1とすると、猫白血病ウィルス陽性の猫で60倍、猫免疫不全ウィルス陽性の猫で5倍、両方とも陽性の猫で80倍の発生率になっています。あまり知られていませんが、猫免疫不全ウィルスは単独でもリンパ腫を引き起こさせます。もちろん自然でも(ウィルス感染とは関係なく)発症します。

IMGP8664.jpg 

<猫のリンパ腫の臨床型。特徴、症状など>

リンパ腫がからだのどの部分に発生するかをもとに「臨床型」という名称の分類をしています。このような分類をするのは、できる部位によって病気の様子が違うからです。飼い主さんにとっては全く違う病気のように感じられるでしょう。それから腫瘍細胞の細かな分類や抗がん剤に対する反応も、臨床型ごとに特徴があり、どのくらい生きられるのかということにも違いが出てきます。

    縦隔型・Mediastinal lymphoma 

比較的若い猫(2歳とか3歳、もしくはそれよりももっと若い猫)で、猫白血病ウィルス感染陽性の猫に多いタイプです。

「いきが苦しそう」「食べれない」「食べても吐いてしまう」という内容で来院されます。胸の中に腫瘍ができ、胸水も溜まるため肺が圧迫されて呼吸が苦しくなります。

    消化器型・Alimentary lymphoma / Gastrointestinal lymphoma

 近年増加傾向にあるのが消化器型です。中高齢の猫(かかった猫の年齢の平均は10歳から12歳)で、検査をすると猫白血病ウィルスの感染は陰性であることが多いです。

「なんとなく」「いつからとははっきりわからないけれど」「だんだんと」「歳のせいかもしれないけれど」という前置きに「食べる量が減ってきている」「いよいよ食べなくなった」「体重が減ってきた」「調子が悪くなってきた」という言葉が続いて来られます。「なんかおかしい」「元気がない」などの、あやふやな感じですが、「調子のよかった頃と違う」様子を伝えてくださいます。「おう吐」や「下痢」があることもあります。

おなかを触ると腸が厚みを増している様子やリンパ節が腫れて大きくなっているのに触れることがあります。

IMGP8710.jpg

    鼻腔型・眼窩型・Nasal orbital lymphoma 

猫白血病ウィルスや猫免疫不全ウィルスの感染に関連していることも、いないこともありますが、若い猫で見られる場合は感染が陽性であることが多いかもしれません。高齢猫では、猫白血病ウィルス感染が陰性のことが多いです。このタイプもよくみられます。

 「鼻カゼがなかなか良くならない」ということで来院されます。見ると鼻汁や鼻血のために鼻が詰まっていて、口を開けて息をしています。涙が多くて目やにがついています。腫瘍が大きくなり、鼻や目のあたりの顔が変形していることもあります。

    多中心型・Multicentric lymphoma

 このタイプにはウィルス感染陽性猫も陰性猫もいます。

「なんとなく元気がない」「食欲がない」「痩せてきた」ということで来院されます。体表から触れることのできるリンパ節が一つ、または身体の内部のリンパ節も含めて複数腫れていたりします。犬の多中心型リンパ腫とはちょっと違った様相です。

    そのほか

 ・脾臓型・Splenic lymphoma

 ・腎臓型・Renal lymphoma

 ・肝臓型・Hepatic lymphoma

 ・中枢神経型・Central nervous system lymphoma

 ・皮膚型・Cutaneous lymphoma

 ・咽喉頭型・Pharyngo laryngeal lymphoma

 ・骨格筋型・Skeletal muscle lymphoma

 あげたらきりがないほど、リンパ腫は身体のどこにでもできる腫瘍です。

 ある報告によると、①縦隔型は全リンパ腫のうち12%を占め、②消化器型が52%、③鼻腔型15%、④多中心型9%、⑤その他は合わせて12%になっていました。やはり消化器型が多いようです。

 IMGP8666.jpg

<どのくらい生きられるのか>

予後についての数字ですが、治療をした場合の大まかな目安です。発見時のステージによってはこれよりも短くなってしまうこともあるでしょう。どれも中央生存期間で、治療する立場からするとこの数値が目標になります。

    縦隔型リンパ腫  143

    消化器型リンパ腫 低悪性度113日、高悪性度67

    鼻腔型リンパ腫  135

    多中心型リンパ腫 95

 

 

猫のリンパ腫について概要をお話ししました。

次回は診断についてお話しします。

 

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード