猫のリンパ腫・検査

猫のリンパ腫のお話、2回目です。

診断への道のり、とくに増えつつある消化器型リンパ腫の診断について、もう少し詳しくお話ししようと思います。

 

<いろいろ検査>

 どのような病気でも輪郭がはっきりしないときや、身体の状態が優れていると思えない状況では、最小限度の検査が必要になってきます。

    血球の検査(顕微鏡で細胞を確認することまでを含めたもの)、 

    血液の生化学的検査、

    X線検査、

    超音波検査

などは必須です。

そして腫瘍性の病気が疑われるときは、塊状になった部分に針を刺し細胞を採取して

    病理学的な検査

を実施することになります。ここでリンパ系の腫瘍細胞が認められると確定です。

病理学的な検査は大変デリケートなもので、明らかな悪者の顔をしている細胞とそうでもない顔をしている細胞があります。炎症により多数出現しているように見える場合も出てきます。複数回の採取と検査を必要とすることがあります。

さらに病理学的な検査では、リンパ腫であることのほかに、さらに詳しく悪性度をみることができます。細胞の分化の程度が悪性度の指標になります。細胞は分化を繰り返すうちに、だんだんと元の細胞の性質を外れて違う細胞に変化していきます。元の細胞に近いものは高分化型で分裂スピードは比較的遅く、悪性度からいうと「低」になります。ローグレード、低悪性度といいます。元の細胞からかけ離れた性質を持つようなものは低分化型で、悪性度でいうと「悪」になります。ハイグレード、高悪性度といいます。高悪性度のものは発症も進行も急で、深刻な症状を出していきます。猫のリンパ腫では低悪性度の高分化型のものと、高悪性度の低分化型のほかに「大顆粒性リンパ腫」として非常に急速に悪化していくタイプのものがあります。こちらは「極悪」な経過をとります。

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<消化器型リンパ腫の症状をもう一度>

前回もお話ししましたように、経過が慢性的です。いつから調子が悪くなったのか、その日の特定ができないことがほとんどですし、どこがどんなふうに、といっても「なんとなく食べる量が少ない」。たいていは1か月から3か月くらいは経っていて、「なんとなく食べが悪い」し「体重が減ってきた」のに近頃気がついた、ということです。そのほかの症状は「寝ていることが多い」「元気がない」です。「おう吐」や「下痢」を問題にされて来られる方は少ないです。

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<診断のきっかけ>

 おなかを触診したときに、ソーセージみたいに腫れた腸か、腫瘤(腫れもの、塊)を触ることができる猫ではここから消化器型リンパ腫を強く疑い、血液検査のほか、X線や超音波検査などの画像検査へと進みます。

 X線検査は欠かせません。腫瘤の大きさ、腸管の位置関係を読み取ります。場合によっては食べ物がスムーズに流れるかどうかを調べるためにバリウム造影の検査を実施したいところです。しかし猫ではこれがなかなか大変です。

 それから、細かな構造を見るために超音波検査も必要です。胃や腸の壁が厚くなってはいないか、正しい構造をしているのか、腫瘤の大きさ、内部の様子、腹水はないだろうかなど見ます。

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<細胞の採取>

細胞を採取するために超音波検査を行いながら腫瘤に針を刺すこともあります。腹水があれば腹水をとって細胞を集め、細胞を病理学的検査に回すこともあります。内視鏡の検査で腸管側から細胞を採取することもありますが、リンパ腫を疑う場合には不十分です。間違いなく診断できるだけの細胞の分量、できればある程度の塊を持ったものが正確な診断へ導くことができます。

 超音波検査の途中で細胞を集めるのが困難だと思われる場合は腹部の手術を行い、とれる部分を切除して組織学的な検査を行います。

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<こんなにも検査>

 おなかにしっかり触れる腫瘍が出来上がっていると画像検査から病理学的な検査に進みますが、主な症状が

①「元気消失」

②「体重減少」

③「食欲の低下」

だけで、腹部の画像検査ではっきりわかるほどの腫瘤が見つからないようなとき、診断をつけるのが難しいことがあります。

「そんなに心配はしておりません」など言われた日にはお手上げです。「なんで検査なんですか」「食べれるようにしてくれたらいいんです」では次に進めません。というのも、これらの病態は「高齢だからこんなもの」と思われるようですが、このような症状を出す病気の中にはしっかり向き合って治療していかないと命にかかわる怖い病気もあるし、逆に個性的な治療を行うことにはなるけれど治療したら好転する病気もあるからです。

あまたある病気の中の何なのかを捜査し、たどり着いたら状況に合わせて個別の治療を行うこと、そしてその後も追跡援護をすることを目指しています。これは当院だけでなく、今の獣医学というものは、です。

 高齢猫で①②③のような症状がみられるのは、消化器型リンパ腫のほかに、炎症性腸疾患(IBD)、猫伝染性腹膜炎ドライタイプ、慢性膵炎、腸の他の腫瘍(肥満細胞腫とか)を心配します。「猫のリンパ腫」であるとストレートに決めるにも検査は必要ですし、よく似た仲間の病気と見間違えないようにするためにも深い検査が必要になります。そしてこのほか、食欲の減少した高齢猫を診る場合、いつも頭の隅においておかねばならないのが慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症などで、「この病気ではない」という打消しをするための検査も行います。

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<外科的な開腹手術>

ときには「おなかを開けてほかの臓器も観察しつつ病気を詳しく調べ、探るために行う手術」に入ることがあります。試験開腹術とか試験切開とか呼ばれます。

とくに炎症性腸疾患との関連では、正確な病理学的検査のための材料採取が必要なため、腹部手術が一層強く期待されます。これはリンパ腫と炎症性腸疾患が一つの猫で同時に別の部位にできていたことがあるという報告や、はじめに炎症性腸疾患があってそれによってリンパ腫が引き起こされると考えていらっしゃる多くの先生の意見などからも、きちんと調べ、細胞特性を調べるため複数の検査を実施するに足りる組織を採取することが望まれます。

試験開腹術から組織を切除して大きな塊で病理組織検査を実施することの利点が二つあります。一つは消化管の壁が薄くなっている場所がないかどうかをあらかじめチェックできるので、その後の抗がん剤治療によって腸管に穴が開いてしまうかもしれないというリスクを避けることができる点です。もう一つは腫大したリンパ節の影響で通過が悪くなっている部分があればここを切除するので症状が改善される可能性が大である点です。オプションで外科的な検査がある、というよりは、様々な状況から外科的な検査を選ばざるを得ない場合があると考えてください。

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<予後を決める因子>

消化器型リンパ腫についてはこんな条件だと比較的長生き、というデータがあります。

「長い>短い」

で示します。

    メス>オス  メス猫のほうがオス猫よりも長生きできそうです。

    食欲あり>食欲なし  栄養状態の良いほうが長生きできます。

    貧血なし>貧血あり  貧血は消化管からの出血を表しているのかもしれません。

    血清ナトリウム値が正常>低ナトリウム血症  消化吸収の良し悪しを表しています。

    腹水なし>腹水あり  吸収不良からくる低アルブミン血症やがん性腹膜炎を表します。

こうした悪い因子が検査で見つかった場合、残念ですが余命は短くなってしまいます。

 

 

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猫のリンパ腫のおはなし、今回は診断のこと、とくに検査の重要性についてお話ししました。

次回は治療についておはなしします。

 

 

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