7月の新しいできごと

 7月に入っていくつかの新しいお薬や検査ができるようになったのでお知らせです。

 <腎臓病の検査>

愛猫が「慢性腎臓病です」と診断されるきっかけで一番多いのは、血液検査で「尿素窒素BUN」値や「クレアチニンCRE」値の上昇があったからというものだと思います。腎臓病以外の原因でも高窒素血症になりますが、血液検査で窒素代謝に関する項目に異常値が出たら、そのほかの検査も調べて腎臓が悪いのがわかったということが一般的かと思います。そのとき、「実は高値が出たときはすでに腎臓の3/4位は機能しなくなっています。もっと早く異常を知るには尿検査(尿比重)をしておくと良かったのです。」という説明を受けたかと思います。腎臓の機能が低下するとおしっこを濃縮する力が減少するため、おしっこの濃度が薄くなるのです。血液検査で「BUNCRE」が上昇するより前に尿検査で尿が薄くなっているのを調べるのが腎臓を調べる早期検査です。

さて前回の猫の腎臓病のおはなしのときに、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-904.html

血液の「対称性ジメチルアルギニンSDMA」検査が早期発見として感度も信頼性も高い検査です、というお話をさせて戴きました。そのときはまだ実用化されていませんでしたが、これが外部委託の検査でできるようになりました。これで、「血液検査じゃもう遅い。尿検査が一番だよ。」という時代が終わり、「やっぱり血液検査で早期診断!」に戻ったような感じです。

高齢の猫さんの(本当はシニア期よりも前の、ミドルエイジさんも受けていただきたい)定期検診では、これまでの血液検査項目にSDMAも加えたもので評価するといいなと思います。

 1_201607301804077b3.jpg

<アトピー性皮膚炎の新薬> 

もう一つはアトピー性皮膚炎のおはなしのときに、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-874.html

ご紹介させていただきましたアトピー性皮膚炎の期待のお薬「ヤーヌスキナーゼ阻害薬」ですが、ついに処方できるようになりました。ただ、お薬の規格(大・中・小とでもしておきましょうか)で、「中」に当たるお薬がまだ出ていないため、ちょうど中サイズのお薬が適応になる範囲の体重にある犬の場合、もうしばらくお待ちいただいています。でもこの規格に当てはまるサイズのアトピーさんにも、もうじき処方できると思います

アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、脂漏性といった皮膚病をもつ犬たちには、痒みをコントロールするために食事や薬浴、環境への配慮、心理的なケアなども含め飼い主さんには多大な労力をお願いしてきました。進化する時代背景にあっても、基本軸に違いはないものの、ちょっと違うアプローチがあり、困惑した飼い主さんもおられるかもしれません。また痒みをコントロールするため毎日の投薬が欠かせない犬たちも大勢います。体にやさしい抗ヒスタミン薬や炎症を鎮める脂肪酸などのおサプリメント、または免疫系を強めるプレバイオティクスだけではどうにもコントロール不能なことが多く、即効性で安価だけれども長期連用するには副作用が心配になるステロイドのお薬か、副作用がステロイドほど強く出ないけれども遅効性で高価、時に投薬が難しいシクロスポリンの2薬に頼らざるを得なかったわけです。新しいお薬はそうした心配な点をいくつか克服できています。(高価な点はまだ弱点ですね。)

すでに服用を始めてもらった犬たちは、どの子も激しい痒みを軽減させ、またはすっかり解放され、QOLは向上しています。多くのアトピーっ子のもとにこの薬が届くといいなと思います。

2_201607301807159ca.jpg 

<動物用のインスリン> 

3つめは猫の糖尿病のときに

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-823.html

おはなしした「どうも猫はインスリンが効きにくいことがある」件ですが、インスリンの作用時間が猫の生活に適していることや、耐性ができにくい遺伝子組み換え製剤であること、少量でも正確に用量を計って注射できることは、薬サイドの「効きにくさ」を克服する上で大切なことでした。(身体サイドの効きにくさは併発疾患をコントロールすること等あります。)

今回、猫専用の糖尿病治療薬ができました。猫にとって最適な血糖の管理がしやすくなると思います。もうひとつうれしいことはメーカーさんが糖尿病諸注意の冊子や毎日の健康日誌(ホームケアダイアリー)を用意してくださっている点です。これまで口頭でお話しし、病院オリジナルの白黒印刷紙をお持ちいただいていましたが、見にくかったですよね。メーカーさんの力は偉大です。オールカラー、とても見やすいものを作ってくださいました。また医療廃棄物になるシリンジをまとめて保管しておけるキットもご用意していただきました。使い終わったら箱ごとお持ちいただけます。(ベーリンガーさん、感謝です。)

そのようなわけで、今月糖尿病が発見された猫さんから順次、「猫専用のインスリン」を処方しております。

3_201607301804103e8.jpg 

4_20160730180717c47.jpg

 

「日進月歩」という言葉があります。今はまだ届かないことも、「待望の新薬!」「期待の新療法!」が舞い込んできて、無理なく治療ができるようになる日が来ます。あきらめてはいけませんね。

伴侶動物は以前と比べものにならないくらい市民権を得てきました。運良く幸せな家庭とご縁を結ぶことのできた犬猫もありましょうが、これまでは「仕方がないね」と短命にされてきた犬猫も、たくさんのボランティアさんの努力でリベンジし、受け入れてくださる飼い主さんのおかげで幸せな第2の人生を与えてもらっています。幸せに縁遠く命を終わることになった犬猫が数ある中で、より良く生きるチャンスを得られたのはほんの一握りの犬猫たちになるのかもしれません。今幸せに暮らせている犬猫は、悲しい思いをしていった多くの命の代わりに存在している子たちなのかと思うと、見えない子たちの分も含めて大切にしてあげなくてはいけないですね。

そんな子たちも、私たち獣医療に携わる者が現代の浦島太郎であったら、せっかくのチャンスを十分に生かしてあげられないことになってしまいます。なんて残念なことでしょう。日々進歩する獣医学に遅れを取らぬよう、頑張らなくてはいけないと思うのでした。頭が化石にならぬよう精進精進です。        合掌。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード