心筋症・予防的治療は?

 猫の肥大型心筋症のお話、5回目です。

今は未だ症状を現してはいないのだけれど、たまたま実施した検査で肥大型心筋症だということが診断されてしまったらどうしようか、ということについてです。

 

<治療する?>

はじめに結論を言いますが、早期に発見できても、症状のない肥大型心筋症に治療をして良い結果が得られたという有意義な研究はありません。これは早期に治療介入しても、心筋の障害や心筋細胞の壊死を抑制する効果が論理的に証明されていないということです。そのようなわけで、心臓病の専門医たちでも統一見解がでていません。そんな身も蓋もないことです。

それで、猫が投薬に大変抵抗する、経済的に毎月の費用の捻出がきびしいとかいうことであれば、あえて何もしないで経過を見守るという選択肢もないわけではありません。もちろん、興奮させないようにするとか、空調管理などできることはお願いします。そしてしっかり観察を続けて貰い、何か異変があればすぐ治療できるように、何はさておいて、急いで病院に来てください。

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<症状のない心筋症が症状を出すとき>

症状のない心筋症が、どのタイミングで症状を出すのか、ということがいくつかわかっています。

・輸液または輸血などを行った。

・麻酔や手術などを行った。(医療ストレスが加わった)

・大きなけがをした。(自然発生的なストレスが加わった)

・上部気道疾患にかかった。(風邪を引いて呼吸器系に問題を起こした)

・プレドニゾロンなどのステロイド薬の投与をした。

それまで循環機能が低いところで安定していたのが、これらのストレス因子が加わると予備力がないため、水和などの循環バランスを崩す結果になるのだろうと思います。

ですからこれらを避けるだけでも意味があるかもしれません。かかりつけの病院以外で受診するときには必ず病歴のことは伝えてください。医療介入によるストレス因子を防ぐ、または慎重に行うことが出来ます。

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<投薬する!>

なんとか薬も飲ませられる、この程度なら薬の負担は乗り越えられる、という場合はやはり投薬をお願いしたいと思います。

それはこの病気が症状を出したときには非常に重症で、治療がないわけではないけれど、経過からの時間によって治療成績が極端に悪くなるから、エビデンスがあろうがなかろうが、予防する薬があるのなら予防しておいた方が臨床的には有意義だろうと思うからです。処方するのは心臓を護る薬、血栓形成を予防する薬などです。

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<投与する薬>

心筋に与えるストレスを軽くする目的で

    βブロッカー(アテノロール)

    カルシウムチャネル拮抗薬(ジルチアゼム)

    ACE阻害薬(エナラプリル)などを処方することが多いです。

それから血栓形成を予防する目的で

    抗血小板薬(クロピドグレル)を処方します。

サプリメント処方することもあります。

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<おうちの人が注意することがある?>

肥大型心筋症の心イベントから脱出、安定後にお薬をのむことになった場合も、無症状だけれど薬をのませますという場合も、心配だけれど薬はなしで見守るよという場合でも、えっ、こんな怖い病気があったのね知らなかったという場合でも気をつけていただきたいことです。

    不特定の初期症状を確実につかむこと。

元気がない、食欲がないなどのどんな病気にでも見られそうな症状を見逃さない、わかっていてスルーしない、忙しいことを理由に来院までの日数を伸ばさないというのが最初の注意点です。

呼吸が荒いという症状ですが、これは日頃の観察をしっかりしていないと異常なのか普通なのかもわからないです。テレビやPCやスマホから目を離してじっと猫を見つめる時間を作ってもらうといいかな、と思います。

おもちゃでじゃらして遊ぶときにへたばりやすいとか、そもそも遊ぶ雰囲気じゃないとかは「運動不耐」の症状なのかもしれない、という意識を持って観察してもらうとじっくり見るかもしれません。

    肥大型心筋症と診断されてからは安静に、です。

興奮させないこと、運動負荷をかけないことが重要です。勝手に自由にお外を走り回らせるなんてやめてください。それはいつ突然死が起こっても受け入れます、ということです。

屋内環境を整えてください。ことに空調管理が重要なわけですが、身体の酸素要求量を減らすようにすれば心臓の負担は軽減されます。暑いときは涼しく、です。

    勝手な判断で投薬を中止しないこと

薬が3日分しか残りがないけど7日後まで病院に行けないかな、というときに半分量で与えて再診日までもたせるとか、きっちりの量で3日与えて最後4日は薬なしで過ごさせるとかは絶対に「してはいけないこと」です。ほかの病気も含めて、案外こういうことがあるのですが、心臓に限ってこれはだめ。病気をナメてはいけません、なのです。大切なことです。

    情報を手に入れる

病院に来たときは猫についての新しい情報を何か一つ仕入れて帰ってもらえると嬉しいです。掲示板や病院配信テレビやハートニュース、待合室にぶら下がっている猫のためのおすすめ読み物などありますので、その日の気分でちらっと見たりじっくり読み込んだりしてください。気軽にスタッフに聞いてみるのも良いです。スタッフと仲良くなるとそれだけたくさん、ざっくばらんな話が聞けると思います。猫に関する今どきのこと、知らなかったこと、とにかく猫に関心を持ってもらい、いろんなことをしてもらえるとうれしいです。

 

 

次々お話しが出てきてしまいました。これで猫の心筋症のお話しを終わりにします。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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ありがとうございました

心筋症の連載、ありがとうございました。
うちの猫を亡くしてしまったことには悲しみと共にいろいろな後悔の念は絶えませんが、気持ちに一区切り打とうと思いました。
また猫を飼うことは(失うことが怖いので)無いと思いますが、
万が一、そういうことがあれば、心筋症に対しての基礎的な知識を持った飼い主として対処できると思います。
発症からわずか3日で飼い猫を失ってしまったことを
看病させなかった最後の飼い主孝行と思うことにして
猫の冥福をずっと祈り続けたいと思います。

Re: ありがとうございました

ご清読ありがとうございました。
今なお深い悲しみと喪失の中にいらっしゃるご様子、
おかけする言葉が見つかりません。
でも、こんなにも愛されていた猫さんはとても幸せだったと思います。
それから、こんな飼い主さんこそが多くの猫たちの救世主です。
いまは優良飼い主さんを休憩していてください。
でも、なにか機会がありましたら、
これに懲りず、猫さんをレスキューしてください。
あなたを必要としている猫さんがいっぱい居ます。
よろしくお願いします。ヾ(=゚・゚=)ノ

ハート動物病院 すぎた
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〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
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オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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