人と動物の共通感染症

 動物と人との距離が縮まってきています。「人と動物の共通感染症」のうち、伴侶動物に関するものをご紹介します。

「人と動物の共通感染症」については私たち人を守るために、伴侶動物を飼育する方に知っておいて欲しい病気です。濃厚な接触はときに人を危険に陥れます。

特に今日ご紹介する病気3つは人が動物に噛まれたり、爪で引っ掻かれたり、密な接触をしたりして感染する病気です。

 

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<猫ひっかき病>

猫ひっかき病の病原体は「Bartonella henselae : バルトネラヘンセラ」という細菌です。猫の赤血球のなかに存在している菌です。

ノミが媒介して感染する病気です。名前は「ひっかき病」となっていますが、猫にひっかかれなくても接触するだけでも感染しますし、猫に噛まれることもそうですが、猫ノミに噛まれて感染することもあります。猫にいるノミはこの病気に関してたいへん重要な位置にいます。この夏、そして今でも、猫ノミが住居の中で大繁殖をおこし、人にも被害があったご家庭が数件ありました。ぜひ知っていただいてしっかり予防していただきたいと思います。

 

猫から人への感染は次のように起こります。

①感染猫の血を吸ったノミは体内に菌を持ち、次の猫に移動します。

②ノミ糞の中に前の猫から感染した菌が入っています。猫は身繕いしながら菌を口にします。次の猫への感染の成立です。

③この猫が人に接触します。人の身体を舐めたりひっかいたりしたときに菌は猫から人に感染します。

④この猫に付いていた猫ノミが人の足を刺し、そこから細菌が侵入します。これでも人は感染します。

 pet_nomiyoke_kubiwa.png

噛まれて⇒感染

という単純な感染経路に比べると、途中に媒介者のある感染は少しだけ複雑になります。

そこで、へたくそですが、図にしました。

 ヘモバルトネラ

感染した猫は無症状のまま過ごします。

それに比べ、人の方は症状を発現します。免疫学的に健康な人が感染した場合、初めは受けた傷のところが小さく赤く腫れる程度ですが、1~2週間もするとリンパ節が腫れてきます。手や腕が感染場所であった場合(ここが一番多いのですが)、脇の下のリンパ節がげんこつのように腫れます。そのほか発熱し、身体がだるくなったりもします。免疫の弱い人が感染すると細菌性血管腫が現れます。皮膚がんのようなかんじです。

感染猫を特定するのは難しいです。感染猫の血中に菌は存在(1年以上続きます)しますが、猫に症状が現れないことに加え、菌そのものが血液中に出現したり消えたりを繰り返すから採血のタイミングもあるのです。さらに、検査そのものにも、培養させるときに赤血球を溶血させる必要があるとか、培養に時間がかかる(培地では発育が遅い)とか、一般の細菌を検出するのに比べ困難な点が多いからです。

 

<ヘモバルトネラの予防>

飼い猫に寄生するノミをしっかり予防し、運悪くノミにたかってしまった場合でも、速やかに駆除薬を使い、ノミを落としましょう。ノミの成虫はたった5%にすぎず、のこり95%は卵や幼虫、さなぎの形で飼育環境に存在すると言われています。大量に感染してしまった場合は、屋内環境も合わせて掃除したり殺虫したりしないといけません。夏ひどい感染にあった場合は、冬期のオフシーズン中も継続して予防薬を投与することをおすすめします。

のみ取り櫛ですくのが楽しいなんて言ってないでくださいね。

それからノミに感染しているかもしれない地域猫に接触し、うっかり感染しないよう注意してください。

 

 illustrain10-neko16.png

<パスツレラ症>

パスツレラは「Pasteurella multocida : パスツレラ・ムルトシダ」という細菌です。猫の100%近く、犬では15~75%の割合で口腔内にこの菌を持っています。常在菌です。

猫や犬に噛まれて感染することが最も多いわけですが、そのほかにも非外傷性感染というのがあり、犬猫の口腔内の細菌が人の気道に入ってしまい、気管支炎や肺炎などを発症することがあります。

人は噛まれてすぐに痛みと腫れのある炎症を起こします。発熱することもあります。

 

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<カプノサイトファーガ感染症>

カプノサイトファーガは「Capnocytophaga canimorsus : カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌です。これも犬猫の口腔内に常在している菌です。犬で74%、猫で57%という保菌率です。

犬や猫に噛まれたり、引っかかれたり、濃厚に接触することで感染します。

犬や猫は無症状ですが、人は感染すると発熱し、だるかったりおなかが痛くなったり、吐き気が出たりします。菌が全身に回ることもあります。だるい、熱っぽい、節々が痛い、頭痛がする、発熱が繰り返されるなどは風邪のせいかしらとも思われる症状になるわけですが、有効な抗菌薬と効果の無い抗菌薬があるため、「ひょっとして!」と動物との接触歴が頭をかすめた場合は、病院でもその旨伝え、治療してもらってください。

 

<パスツレラやカプノサイトファーガの予防>

噛まれたり引っかかれたりして感染する病気の場合、動物との接触に注意が必要です。

噛まれないようにするのが最も賢明なのですが、運悪く「噛まれた!」という場合は、以前も書きましたが、
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-772.html
何があってもすぐに治療に走ってください。有効な抗菌薬が存在します。


それから

「動物とキスをするのはいけない、

 顔を舐めさせてはいけない、

 口移しで食べ物を与えてはいけない、

 同じ箸を使って食べ物を与えてはいけない」

など、昔から言われていることですが、おばあちゃんの教えは間違ったことを言っていません。こうした濃厚感染は犬猫の口腔内常在細菌からの感染をおこしやすくします。おばあちゃんの教えの通り、素直に従いましょう。

そして動物を触ったらしっかり手洗いしてください。

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<このほかにも>

人と動物に共通する感染症はあります。有名なところでは、

<ブルセラ症>
流産などを起こす病気です。

<エキノコックス症>
おなかの虫由来の病気です。

<皮膚真菌症>
人と動物に共通の皮膚病もあります。

機会があったら次の折りにお話しすることにします。

今日のお話はここまでです。

 

寒くなると、動物との密度が深まるように思います。年末年始のお休みで遠く離れていたご家族が戻ってきて、動物も大喜びかもしれません。水を差すようで申し訳ありませんが、怖い病気もあります。節度ある飼育をお願いします。

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ジャンル : ペット

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はじめまして
突然申し訳ありません‼
2011年の反応性肝障害のブログをみてコメントを利用させていただきました。
実は、今家の犬のGPTが上昇し続けています。
もともと自己免疫性溶血性貧血が10月中旬に再発しました。
そこでシクロスポリン2錠とプレドニン30ミリ投与。
前回は、これでよくなっていってくれたのですが、
効かずシクロスポリン2錠、アラバ3錠、プレドニン60ミリ。
ウルソ、ガスター、パセトシンプラス。
これでどうにか下げとまってくれて、
11月2にプレドニンを30ミリにアラバを1錠カット。
11/8 GPT 794。
次の週にアラバを2錠カット。
すると次週溶血が始まり
アラバ3錠、シクロスポリン1錠追加になりました。
次の週は、溶血が止まりホッとしていたら、黒い血便が。
腸内出血の恐れありということで
アラバ、シクロスポリンカットしました。
プレドニンを15ミリ、
ウルソ、ガスター、パセトシン、サイトテック、デルクリア、スクラルファート
この時点で免疫抑制剤をやめたからなのかGPT435。
どんどん貧血が進み、Ht12%までになってしまい、11/28に輸血しました。
さらにとまらず12/2にもう一度輸血。
まだ出血しているようですが、どうにか
造る量が追い付いてきたようで落ち着いてきました。Ht30%です。
12/6になぜかGPTが1000以上…
ここでリバフィットMをプラスしました。
9日には1855、12日には2271、16日には2659。
先生たちもちょっと困っているようで今外の機関にお願いして肝臓の数値をさらに詳しく調べてもらっているところです。
エコーでも予想されるくらいの腫れはあるようですが、腫瘍のような影もないようです。この数値はなんだろう。と。
明日増えていたら、針で肝臓の組織をとるとか…

食欲もありとても元気です。
ちなみに3歳オスコーギーです。

反応性肝障害のブログを読むと
・低酸素状態で壊死を起こしている。
・消化器系疾患
・副腎皮質機能亢進症
(プレドニンを現在も飲んでいるので)
どれも当てはまりそうで…
素人なのでうまく説明出来ていないと思うのですが、今のGPTの上がりかたで考えられるのは何かありますか?
どうぞわかることたげでもいいので教えて下さい。
もし壊死していたら、どうしたらいいのですか…
よろしくお願いします。

Re: タイトルなし

はじめまして、こんにちは。

ほんとによく治療に耐えて、ここまで頑張ってきてくれましたね。
すごいと思います。
臨床症状は改善されていますね。
肝酵素一つからは肝臓の様子はよく分かりませんが、
肝臓機能の悪化サインはアルブミン(ALB)や血糖値(GLU)の減少。
さらに壊れる肝細胞も無くなるため肝酵素さえも減少してきてしまうのです。
今はまだ高いので、まだ肝臓の力はあると思われます。
肝酵素が高いと天井まで上り詰めて、果てはどうなるのだろうと
ご心配になりますよね。
今の値は薬の効果と薬の副反応の狭間にあるようにも思われます。
プレドニゾロンもまだ使われていますよね。
肝臓に対する効果が少ない他の免疫抑制剤に反応すると良いですね。
主治医の先生も頑張ってくださっているご様子。
免疫のアタックから逃れられたのですから、あともう一息のところまで来ています。
頑張ってくださいね。

杉田

PS
期待通りのお返事が出来なくてごめんなさい。

お返事ありがとうございました。
本当に頑張ってくれています。
おかげさまで、20日に数値が1500まで下がりました。
今日は、1400。
しかし、外の機関に出した結果が異常ありと返ってきたそうです…
この検査は、なかなか異常ありで返ってくることがないそうで…
調子の悪いときにとった血だったからなのか。
なんとも言えないそうです。
まずは、このまま少しずつ下がってくれるといいのですが。

すみません。
最後に一つ質問させてください。
肝臓に負担のかからない免疫抑制剤とは、何があるのでしょうか?
先生からは、
シクロスポリンが肝臓に負担が少ないです。
と言われていたのですが
もし何かあるのなら教えていただきたいです。
何度もすみません‼
よろしくお願いいたします。

Re: タイトルなし

こんにちは。

心配な毎日が続いているご様子、伝わってきます。
免疫系のアタックを免れるための薬としては
シクロスポリンが最初の選択薬です。
このほかに、アザチオプリンや
ミコフェノール酸モフェチルなどあります。
また赤血球を一生懸命からだが作り出しているときに
鉄材を補給すると手助けになります。
現在の肝臓保護作戦が成功しますよう、
遠方からお祈りいたします。
 ハート動物病院 杉田

薬のこと先生たちと相談してみます。

本当にありがとうございました‼
プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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