猫の糖尿病・2

 今日は猫の糖尿病についてのおはなし。

11月は糖尿病について知ってもらう月、とくに14日から20日は糖尿病週間です。

 

<猫の糖尿病>

糖尿病ではインスリンが足りなくなります。そのため高血糖の状態が続いて、それによって尿から糖が排泄されます。糖と一緒に水も出るので身体は乾き、水を欲します。体内は栄養素の代謝異常からさまざまな症状が出ます。

インスリンは膵臓の中にある膵島(ランゲルハンス島)で作られます。膵臓は腺組織が大半で(95%です)、ここで消化酵素が作られて、十二指腸に消化酵素を出しています。そのほかの部分が内分泌機能の(インスリンなどのホルモンをつくる)部分になります。

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猫専用のインスリンできました。

<二つのタイプ>

猫は膵炎のために膵臓を痛めることが多く、消化酵素に関わる部分だけでなく、内分泌に関わる場所にもトラブルがおこります。膵炎に併発した糖尿病はわりと発生しやすいです。それから重症化しているのもこちらのタイプです。インスリン注射をしていても効きが悪いとか、調子いいなと思ってるとまた悪くなったりすることもあります。

肥満の猫で、食べるのにやせてきて、水をたくさん飲み、尿も多い、というのは膵炎に関係なく発生した糖尿病かもしれません。血液検査や尿検査でもグルコースが高いこと以外は極めて普通。ほかに病気を持たないシンプルタイプがこちらです。

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オーナーさま向けの冊子があります。

<飲み薬で治せますか>

人の糖尿病の罹患率は今、11人に1人の割合で、糖尿病の患者さんは増加傾向にあるのだそうです。人では摂取エネルギー過多から来る糖尿病は「2型糖尿病」に分類され、このタイプはぜんぶの糖尿病患者さんの90%に相当するのだそうです。で、「猫が糖尿病」と聞くと「自分(または家族)と同じだよ~」という反応をしてくださる患者さんがいらっしゃいます。猫の糖尿病も膵炎の関与がないものは2型に相当しますから、病名だけでなく、分類型も同じになりますね。人の2型はインスリン非依存型のため、食事管理や運動療法で治療され、はじめからインスリン注射を行うのではないと伺いました。

さて、人での周知度の高い病気の場合、確定診断がつくと、ご理解が早いです。でも治療法も同じだと思われて「食事療法でいいですか」「飲み薬でお願いします」「インスリン注射はしたくないです」というご希望が出されます。猫の糖尿病は、膵炎に併発したやっかいなタイプでなくても、食事や運動(猫で運動療法は難しいのはご理解いただけるようです)、そして内服薬ではコントロールできません。インスリン注射が絶対必要です。

これは糖尿病だと判明したときに残っている膵島細胞の数や機能に人と猫とでは違いがあるからで猫は残りの細胞がわずかすぎて仕事をしていません。

猫では今インスリン注射をしていると、時間経過とともに残る細胞が再び機能しはじめて注射不要になる日が来るかもしれません。がんばってください。

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注射の方法など丁寧に解説されています。

<糖尿病のときの検査>

糖尿病の診断に必要な検査は血中のグルコース(GLU)と尿検査(GLUの検出)だけですが、猫はストレスに反応して血糖値がびゅん!っと上昇し、ある一定の濃度を超えるとたくさんのブドウ糖を腎臓が処理しきれなくて再吸収されないまま尿に排泄(尿糖が出る)されるので、複数回この2つが持続していることを確認して診断します。いつも緊張しストレスを抱えているときに検査をすると高血糖で尿糖陽性になります。確実にするためには「糖タンパク」を調べます。

それから、身体の状態を知るためにそのほかの検査も必須です。血球検査や肝臓や腎臓、膵臓、血中の脂肪や電解質などを確認する検査です。膵炎があるときや肝臓に問題があるときは肝酵素(ALTAST)が上昇します。高脂血症(TG上昇)がみられることもあります。食事がうまくできず脱水などを起こしているときには高窒素血症(BUNCRE高値)があります。電解質(NaKCl)に異常値がみられるのはケトアシドーシスを予感させます。

これらの検査は定期のフォローアップ検診で来院していただいた折にも実施します。病気が安定しているかどうかによって、検診の頻度や細かな検査を実施する頻度も変わります。

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薬の取り扱いについても解説しています。

<糖たんぱくというのは?>

検査に用いられる糖タンパクには「糖化ヘモグロビン」(HbA1c)と「糖化アルブミン」(GA)があります。以前は「フルクトサミン」というのもありました。

糖に結合するタンパク質に寿命があり、ヘモグロビンは半減期がおよそ120日、アルブミンはおよそ20日です。この違いから、糖化ヘモグロビンは最近1ヶ月くらいの、糖化アルブミンは最近23週間の高血糖状態を知ることができます。高血糖になっている時間帯が長いと高くなります。

現在の糖尿病マーカーの主流になっている2つの検査項目のうち、猫で主に利用されるのは糖化アルブミン(グリコアルブミン:GA)です。全部のアルブミンのうち、糖と結合したアルブミンが占める割合を示しています。糖化アルブミンの猫の基準値は6.716.1%ですが、糖尿病では30%まで行かないことを目指しています。院外の検査ですので、当日結果をお知らせすることはできません。

糖とタンパクが結合したものが糖化たんぱくです。お料理の得意な方だと、お肉のタンパクに砂糖やみりんなどを表面で結合させ、おいしそうな焼き色をつける「メイラード反応」をご存じかと思います。それから病気で入院しているときに、上下の部屋に分かれた大きな点滴バッグを開通させて点滴を受けたことがある方がいらっしゃるかもしれません。糖とアミノ酸が別々の袋に入っています。はじめから合わさっていると褐色になってしまい、効果が得られません。それで別々の袋に入れ、点滴を開始するときに合わせます。こうした色のついたのが糖化たんぱくです。余談でした。

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困ったときの対処方法も分かりますよ。

<合併症は白内障?>

猫は犬ほど白内障を発生させることは無いようです。むしろ神経症のために後ろの足を引きずりながら歩くようなことがおこります。

人のように糖尿病性腎症をおこすことはないようですが、糖尿病を発生している猫は比較的高齢であることが多く、いわゆる高齢猫の慢性腎臓病を発症することはあります。長期の観察の中で、ある程度の高血糖があると「多飲多尿」の状態に慣れすぎていて、腎臓が悪くなっていることに気づかれにくいことがあります。定期検診で腎臓の検査を含めたいのはこのような理由からでもあります。

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さらに毎日の健康日誌もできています。

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健康観察日誌の中はこんなかんじです。

前回はうまくコントロールができない猫の糖尿病のことをお話ししましたけれど、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-823.html 

7月にお話ししたように、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-923.html 

猫のための専用のインスリンが開発されて、たいへん具合が良いです。


こちらのインスリンは結晶になっています。白く混濁しています。インスリン同士をつなぎ合わせている鎖が時間で少しずつほぐれ、バラバラになったときに仕事をする仕組みです。だから作用時間が長持ちなのです。薬を乱暴に扱うと、注射をする前に瓶の中でつなぎ合わせている鎖が切れてしまうことになります。注射前に勢いよくシャカシャカ振ったりしないように、やさしく転倒混和してください。また、小さいお薬なのでつい冷蔵庫のドアポケットに入れてしまいがちですが、ここに入れると冷蔵庫の開け閉めのたびに薬が揺すられてしまいます。保存するときは冷蔵室の方に平らのままで、頻繁に出し入れする物の前には置かないようにお願いします。

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針付き注射筒、専用のシリンジがあります。
目盛りが細かくなっているので微量のインスリンを吸いやすいです。
また正確に計りとれます。
医療廃棄物として処分しやすい専用の廃棄物容器も
付いています。
手前がインスリンです。


高齢猫の体重減少のお話

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-category-104.html 

でもお伝えしましたけれど、高齢猫の病気というと、腎臓病は認知度が高いのですが、糖尿病や甲状腺機能亢進症もコントロールが可能な病気ですし、関節症も気づいてケアしてあげると生活の質が向上します。また腫瘍も小さいうちの発見を目指し早期に対処したい病気です。

糖尿病では内科的なエマージェンシー事態が起こることがあります。糖尿病性ケトアシドーシスといいます。これについては後日お話しします。 

 

今日のお話はここでおしまいです。

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